復讐と願い 分身side

 
オークション会場で出会ったクラピカに、本体は俺(分身)を作り出した。

俺は本体にこう言われてる。

クラピカの邪魔はしないように。
クラピカの事を最優先して行動しろ。
クラピカの仲間は取り敢えず助ける方向で。

面倒臭い時は助けなくてもいいって事?←

「何かしら役に立つと思うから」

本体が消えた後、俺はクラピカと同行し幻影旅団を追った。
車と呼ばれる自動走行の機械。

こんなハイテクな乗り物があるんだなとちょっと驚いた。
あっちの世界はこんなモノないからな。

ま、あっとしても走った方が早いけど。

「連れてきてよかったの?」

クラピカの仲間でセンリツと言う女だそうだ。
眉がなく、前歯が栗鼠みたいに突き出し、髪は抜け落ちたのか上半分生えてなかった。
何でも、魔王何とかと言う曲を聞いて呪いであんな姿になったらしい。
此の世界ではザラらしいが。

其のセンリツは俺をチラリと見る。

「俺の事?」

「此れは私たちの…」

「本体はクラピカの事気に入ってるんだ。危険が及べばクラピカの仲間であるお前たちは守ってやる。
他は知らないけど」

何より、ゴンの友だちだからかな。
ゴンの事気に入ってるから、悲しませたくないと思ってる。
クラピカが死んだら、きっと悲しむから。

「(本体とはどうゆう意味だ…?確かハンター試験の時も私とレオリオを担いだ奴と似ている気がする…)
お前は人間か?」

「いえ、よく出来ているけど人間ではないわ。心臓の音が聞こえないもの」

「正解。俺は悪までも分身だよ。本体が忍者だって知ってるだろ?俺たちがいた世界では忍術は戦いの基本だ」

「(分身?俺たちがいた世界…?どうゆう事だ…)」

「ま、何れまた本体から言うと思うからそんなに深く考えないで今は彼奴らだろ?」

あまりベラベラとお喋りが過ぎるのもよくないだろうからな。

世界も違えば使う能力も違うってくるのは当たり前だから驚きはしない。
初めてみるモノは興味をそそられるけど。

「(分身だと言うが、ちゃんと動いてるし話してる。オーラは全く感じられないが…違う何かは感じ取れるし…
一体鳴門と鹿丸は何者だろうか…)」

車が止まると、其処は荒野だった。
マフィアのオッサンどもが刀や何やら武器を抱え、喚いてる。

念能力者でもないアホが何したって勝てる訳ないのにね。

車の光で荒野が照らされ、其の先に上半身裸の男がいた。

…毛濃いな…。←

男目掛け向かっていくマフィアども。
男は楽しそうに暴れていた。

「彼奴?あれ、崖の上にも数人いるけど…全員殺せばいいの?」

「「Σっ!?」」

何をそんなに驚いてるのか俺には理解出来なかった。

殺すの駄目なのかな?

「あの幻影旅団だぞ!?」

「…だから?」

「鳴門…いや、君は何もしなくていい」

「えーつまんないってば。どうせ殺したいくらい憎んでんならサッサと殺した方がよくない?生死問わず彼奴ら1人20億も価値がついてんだよ?
金にした方が得じゃん」

「サラッと言うなよ!俺たちじゃ敵わねーよ!」

「だから俺がサッサと殺してきてやるって言ってるんだけど」

「ダメだ!相手が悪すぎる!」

「君はまだ子供でしょ?」

「子供だから?其れが戦わない理由になるとでも?」

「幻影旅団の恐ろしさを分かってないからそう言えるんだ!
彼奴らは人を殺すのに何も感じない奴らなんだぞ!?」

クラピカの仲間とは言え、さっきからグダグダ煩い奴らだ。

人を殺すのに何も感じない?
其れは本体も俺も同じだけど?

「止めろ、此処で口論しても何も始まらないだろう。
其れより彼奴をどう捕らえるかが問題だ」

「そ、そうだな…」

自分より強いと分かってて何でこんな場所にやってきたか疑問だね。
腰抜けどもが。

「クラピカ、どうすんの?
殺すの殺さないのどっち?決定権はアンタにあるんだけど」

本体は俺作って正解だったかな。
こんな腰抜けどもでやってたら全員あの世行き決定だったろうし。

「(…鳴門が言ってた意味が漸く分かった気がするな。
ゾルディック家と同じような仕事をしていると言ってたのは本当の事か。
其れもゾルディック家よりも遥かに場数を踏んでそうな物言いだ…)
殺すのはまだ惜しい。1人捉えて色々情報を聞き出したい」

「…分かった。本体からクラピカの言う事を聞けって言われてるから其れに従う。
あの露出狂でいい?」

「あ、嗚呼」

なるべく顔を晒すなと言われてるから、印を組みクラピカに変化した。

「わ、私…なのか!?」

「悪いアンタの顔使わせてもらう」

「どうなってんだ…」

「クラピカが2人…」

周りの反応をスルーして、俺はクラピカの能力を真似してみた。

「…こんなもんか」

「其れは!?」

「念じゃないから安心して」

何時も使うチャクラの糸を鎖に見せかける。
此のくらい変化を応用すれば容易いもんだし。

何時の間にか、マフィアのオッサンどもが全滅していた。
すると、陰獣とか言う奴らが現れる。
露出狂と一戦交えるらしい。

「…強そうには見えないけど」

キモ。←
かなりグロテスクな奴らだな。

体中毛だらけだし、口からヒル出すし、ウネウネだし。

「うわ、あの露出狂頭食いやがったよ…ちょーキモ。つーかよくあんなの食えんな」

「チョイスする所違うだろ!」

レオリオみたいに誰かしら突っ込み体質の奴っているんだな…。

「陰獣が、やられただと!?」

陰獣たちの最後は呆気なかった。
え、名前だけじゃん。
ちょー弱いし。

「じゃ、ちょっくら捕まえてくんね」

「Σえ!?ちょっ」

瞬身で崖の上まで行き、チャクラで作り出した鎖に見立てた糸で捕まえる。
そして、其の侭力任せに引っ張りながら

「Σなっ!?」

「「Σっ」」

クラピカたちの所へ戻った。

「早い…」

「グズグズするな、早く車に!」

「追っ手が来るぞ!」

車が走り出すと、露出狂の仲間も慌てて追ってくる。

「いいのか…?」

「何がだ?」

「拘束してねーだろ…」

「見えない糸だと思えばいい。此れは念じゃないから切れる事は絶対ない」

「お前ら、俺を捕まえてどーする?」

露出狂は静かにそう言った。
捉えられた事に微塵も動揺をしないなんてな…。

「黙れ、貴様は今我々の捕虜だと言う事を忘れるな」

「捕虜、なぁ…しかし、お前ら双子か?顔も服もソックリじゃねーか」

「黙れと言っている…」

クラピカの眼が朱く染まっている。
コンタクトをしてるが、俺には分かる。
怒の感情がクラピカを支配してる。

同胞を殺された恨みってヤツ?

「どっちが兄ちゃ…ガハッ!」

「黙れと言っただろ。お前は大人しく黙っていればいいんだ」

俺は露出狂の腹に拳をぶち込んだ。

あの戦い方を見てれば強化系だとすぐ分かる。
単純一途、ピエロの性格別オーラ診断、だっけ?
しかも色か赤だったし。

強化系は最も防御力を強化出来た筈だとウィングの兄さん言ってたから少し力を込めたんだ。

「(何だ此奴!?強化系の俺に此れだけのダメージを!?
まさか此奴、強化系を最大限まで引き出せるってのか!?)」

此れだけダメージが与えられたら、念を使わなくとも大抵は大丈夫だな。

「…ヤバいぞ!追い付かれた!」

「そんなに慌てるな」

運転してるクラピカの真後ろ、後部座席に座ってた俺は後ろのドアを開けた。

「おい!此奴どーすんだよ!?」

「心配はない。動けないから」

そして、車の上に立った俺。

「…どうするかな」

露出狂の仲間が乗ったと思しき車か猛スピードで迫ってくる。

「かなりの手足れだろうから死にはしないだろ」

そう思った俺は印を組んだ。

「火遁、流星群」

火の玉くらいの大きさが無数に空から降り注ぐ。

其れを避けようとバランスを崩して横転した車。
其れを見届けた俺は車の中へ戻った。

「…」

「今の、念なのか…!?」

「違うよ」

念は本体しか使えないみたいだし…。
ましてや、使えそうな能力考えてないからなぁ。














到着したのはとあるビルだった。
其の地下に露出狂を連れていった。

露出狂がいる部屋の外に、俺とクラピカはいた。
情報とやらは興味がない。
お宝がどうとか、聞こえてくるが本体や俺には関係もない話だからな。

「此れからは私たちの仕事だ」

「俺の役目終わり?」

「嗚呼、ありがとう。恩にきる」

「…復讐は、止めといた方がいいんじゃない?」

本体の知り合いの某澄まし顔が頭に過ぎる。
彼奴も復讐の道を選んだ。

復讐は何も生み出さない。
喜びもなく、得たモノは後悔と悲しみと虚しさだけ。

復讐を成し遂げても、其処に光があるのかさえ分からない。

「…此れは決めた事だ。もう後戻りはしない」

クラピカの眼は力強く、そして悲しみを帯びていた。
彼奴はこんな冷静ではなかったな。

彼奴の眼は、怒りだけだったから。

「…後悔しないなら、止めないけど」

此の後、露出狂をどうするかはクラピカが決める。

生かすも殺すもクラピカ次第。
きっと後者だろが…。

クラピカの未来に光があればいいけど…。

「ゴンとキルアとレオリオが心配してるから時間がとれたら電話してやって」

「…嗚呼」

今までの事は本体も俺の眼を通して見えてるから何ら問題はなさそうだ。

壊れてしまわない事を願いながら、俺は煙とともに消えた…。
 

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