故郷と父親の存在

 
船に揺られ、俺たちはクジラ島へ降り立った。

「懐かしいなぁ此の感じ!」

「…?そうゆうもんなのか?」

コンコン、と地面を足で確かめるゴンに釣られキルアも真似していた。

「此の匂いも懐かしい…」

「…??」

深呼吸して、同じくキルアも。
息を止めて互いに顔を合わせた瞬間、笑い出す。

「坊主たち、餞別だ!受け取りな」

今まで乗って来た船の船長が顔を覗かせて4人に林檎をくれた。

「ありがとうございます!」

「サンキュー」

「ありがとう」

「どうも」

そして、キルアがキョロキョロと周りを見渡していた。

「バスって何時来んの?」

「クジラ島は観光地じゃないからバスなんて通ってないよ?」

「え…?じゃあどうやって行くんだよ…」

「此れ」

ゴンは自分の足を指指した。

「明日の昼までには着くよ」

林檎1つで?

「アホ。そんなゆっくりしてたら腹減るだろ…」

そして、俺はゴン、鹿丸はキルアを抱えた。

「飛ばすぜ?」





「本当に鳴門たちが人間かどうか分からなくなってきた…」

「半日以上かかるのに…」

10分もかかる事なく、ゴンの家の前まで辿り着いた事に呆然とする2人。

「忍は大体こんなもんだ」

「俺らだけだと思うけど…」

…其れもそうか。

「…此処が、ゴンの家?」

大自然に囲まれ、長閑な場所。
家の屋根に木が生えてる、ボソリと呟いたキルアがいた。

「ミトさーーーん!ミトさーーーん!」 

偶々、洗濯物を取り込んでいた所。

「ゴン!鳴門くん!鹿丸くん!
お母さーん、ゴンが帰ってきたわよ!鳴門くんたちも一緒に!」

余程嬉しかったんだろう。
ミトさんの顔は嬉しさに包まれていた。

下に下りて、久々の再会を喜ぶようにミトさんはゴンに抱き着いていた。

「お帰りなさい…ゴン…鳴門くんと鹿丸くんも、お帰りなさい…」

「ただ今、ミトさん…」

「「ただ今」」

そして、ミトさんはキルアの存在に気付いて、ゴンが紹介した。
友だちのキルア、そう言った。

「帰ってくるなら帰ってくるって連絡してくれたらよかったのに!
何も用意してないわよ!?
あ、先にお風呂入って来なさい。どうせ入ってないんでしょ?」

船が風呂着きなんて、有り得ないからな。

「じゃあ4人で入ろう!」

本格的な檜風呂にテンション上がってるキルア。
普通は素っ裸なんて男同士だから恥ずかしくないんだろうけど、俺は違う!←

ちゃんとタオル巻いて入るから。
もちろん、鹿丸も。

「極楽極楽ー」

「親父くさっ」

「レオリオみてぇだから止めろよ…」

「…ガーン…」

久々の風呂はやっぱり気持ちがよかった。
風呂から上がれば、料理も出来上がっていてテーブルに並べられていた。

「わー!」

「うまそー!」

「こんなに一杯…」

「よかったんですか?」

「いいの。家族が増えたみたいで、使命感が溢れてきちゃって」

子供たちに美味しいご飯食べさせなくっちゃ!的な?

「「いっただきまーす!」」
「「いただきます」」

「おかわりあるから沢山食べてね!」





美味しく頂き、俺たちは森へ向かった。

「此処だろ?狐熊のコン太とか言うのと遊んでたの。
顔出したりしねーの?」

「多分、姿は見せないよ。
狐熊のメスが人間の匂いを極端に嫌うんだ。だから、コン太と会ったら奥さんと喧嘩になっちゃうよ。
其れにコン太は森の長だから、人間と遊んでたら他の動物に示しがつかないし」

泉の方に足を向かわせてみると、

「ゴン、おかえりってさー」

キルアのいた高台に、ピチピチと跳ねる数匹の魚がいた。

「…コン太」
















其れからと言うもの、ゴンとキルアはハンター試験の話やら天空闘技場であった話をミトさんに楽しそうに話していた。

森にも入り浸り、もちろん念の鍛錬は毎日欠かさずやり続けた。

「ゴン、キルア、鳴門くん、鹿丸くんご飯よー」

「今行くから」

「もうちょっと待って」

「まだやってたの?そんなの繋げてどうするのよ」

「情報収集!」

ゴンの家にはネットが繋がるアイテムがあった。
其れをキルアが見つけ、電脳頁に繋げるようにしていた。

「親父の情報集めるのに必要なんだ!」

「俺は其の助手」

「…俺は観衆」

「同じく」

「出来ないだけだろ」

キルアが突っ込むけど、だって仕方ないじゃん。
木の葉にないんだぞ?そうゆうの。
使った事もないし、ましてや繋げるなんて論外だ。

「ほら!4人ともそんなの後でも出来るでしょ!早く下りてらっしゃい!」

半ば引き摺られるようにして下に下り、夕飯をご馳走になる。

食べ終わった後、ゴンは片付けの手伝いでリビングに残り俺たちは2階へ。

「俺、布団敷いてくる」

「俺も手伝う」

何もする事がなくなった俺は、下で片付けの手伝いをしてるゴンを手伝おうと階段を下りていく…。

「ジンから預かってたモノよ。
ゴンがハンターになったら渡してくれって」

足が止まる。
盗み聞きになるかもな、此れは。

「全て話すわ。ジンの事」

ミトさんは昔話を語り出した。

子供を置いてでも、やりたかった仕事か…。

「其の時に此れも置いていったの」

チラリと見てみれば、テーブルの上に何やら小さな箱が置いてあった。

「其れも何回捨てられたかね」

「…誰かが元の場所に戻すからでしょ?」

「分かり易い場所に捨てるからだろう」

ミトさんはゴンの親父に対して怒ってるんだな。
ゴンを置いて仕事であるハンターを選んだジンに。

「そんなモノなのよ。彼奴は此処には何も残しちゃいないの…アナタ以外はね」

「ジン…ジンか。そっちの方がいいや!
ねぇミトさん!もっとジンの話聞かせてよ!」

俺はゆっくり2階へ戻った。
此の話は聞くべきじゃないと、判断したから。
















翌日。
昨日の箱を床に置いて、俺たちは其れを囲んでいた。

「ふぅん、此れが親父から」

「蓋ってゆーか開ける場所なくねぇか?其れ…」

「本当だ…」

「ちょっと力入れていいか?」

キルアが其の箱を手に持ち、立ち上がる。
そして…

「…っ…んー!!!」

「力入ってんの?キルア」

「ゼェゼェゼェ…ビクともしねー…」

「ちょっと貸してみろ」

キルアから箱を受け取り、鹿丸は角度を変えながらマジマジと其れを見つめる。

「開く所が一切ないって事は、何かしらの動作をしねぇといけないんじゃないのか?
其れに、ゴンの親父さんがハンターになったら渡してくれって言ったのなら、ハンターになる前と後で持ってない何かで此の箱が開くとか?」

そうか…。

「念だな」

「そっか!」

鹿丸がゴンに箱を渡すと、ゴンは目を閉じて箱を持った侭念を込めた。

すると、ビクともしなかった箱は念を込めた瞬間眩い光が中から放ち、鉄の板がバラバラと床に落ちた。

「箱の中から、箱…?」

「ただの銑っきれだ…粘着の跡もない」

「念でしか開かない仕組みにしたんだな…」

「此れ!」

「此の模様…ウィングさんがくれた誓いの糸に書いてあったのと似てる…」

ハンターになったら、ね。
もしハンターにならなかったら、此の箱は一生聞けられない侭ミトさんの手元にあった訳か…。

「どうだ、開きそうか?」

「えっと…あ!スロットみっけ!」

ゴンは其のスロットにハンタ一証を差し込んだ。

「開いた!」

「指輪とテープと…カード?」

「ROMカード。ゲームのデータを記録するヤツな」

指輪の裏にも、誓いの糸同様、模様があった。

そして、其のテープとやらを聞く事にした。
キルアが念の為、ダビングしとくようゴンに指示を…。

ダビングって何?
つーか其の塊、聞くってどうやって?

ゴンは押し入れの中から何せら機械を取り出し、テープを中に入れた。

消えない為?
2人の会話は俺たちにとってはチンプンカンプンだった。

「行くよ?」

ラジカセのボタンを押す。

ゴンの父親だろう奴の声が中に入っていた。
お前もハンターになったんだな、的な台詞から始まった語りをゴンは真剣に聞いていた。

“俺に会いたいか?”

何とも父親らしい台詞。

“俺は会いたくない”

其れが聞こえた瞬間、ゴンの顔がムっとしていた。

“会いたかったら、捕まえてみろよ。
ハンターなんだろ?”

親に会いたいが為にゴンはハンターになったんだ。
其の言葉で、余計に火が付いたみたいだ。

「よし、此れで…って!」

「勝手に巻き戻しに!?」

今の声とダビング用のテープはただのゴンたちの声が入ってるモノに。
ゴンの親父も其処までしなくたっていいもんを…。

「残るは此れか…」

ROMカード。

「何のゲーム?」

「此のROMカードを見れば分かるよ。ジョイステ専用のROMだから」

「ジョイステ?ゲームの名前?」

此れはゴンも俺たち同様チンプンカンプンらしい。
其れで、ゲームの得意なキルアが町に下りて買ってくると言って出ていった。
歩きじゃ遅いだろうからと鹿丸を連れて。
面倒くさがってたけど…。
 

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