追跡とミケ

 
キルアはイルミとの対戦後、姿を消した。
ハンター試験合格者の説明会で、目を覚ましたゴンが部屋に入ってきたと思えば、一直線にイルミの元へ。

キルアに謝れ、そう言った。
もちろんイルミが其の言葉を理解する筈がない。
だって、暗殺一家としての当然の義務を果たしたのだから。

「其れも分からないなら兄貴の資格なんてない!」

「兄弟に資格なんているのかな」

「だったら友達に資格もいらないだろ!」

折れてないほうの手で、ゴンはイルミの腕を掴み、力任せに放り投げる。

しかし、イルミは態勢を持ち直し綺麗に着地した。

「ゴン、落ち着け」

「鳴門たちは何とも思わないの!?」

「そうじゃなくて、ゴンも目の前の事しか見えなくなる其の癖を治せ。
今がどんな状況か理解してから行動しろ」

本当は何も思わない。
兄貴に限らず、ゾルディックの家族の掟ってゆーか家訓ってゆーの?
キルアは足掻いてるのは足掻いてるけど、まだ実際の所まだ考えが甘いと俺は思う。

所謂家出程度にしかならなかった今回のキルアのハンター試験は、兄貴に見つかった…いや、兄貴と気付かなかったキルアの負けだ。

「今キルアの事でクラピカとレオリオからの申し立てがあっての。
審議している所じゃ」

クラピカとレオリオがキルアの不合格を取り消せと。
然し、ネテロ会長は決定して事を覆す事は出来ないと。

聞き入れた意味ってあったのか?

そして、ゴンだけ講習を受けてないからと、ゴン1人教室へ残し俺たちは外へ。

「此れからどうするのだろうか…」

「ゴンの事だ、キルアを連れ戻しに行くぜ?きっと」

「で、其のキルアん家が何処にあるのか知ってるのか?」

「「……」」

ダメだこりゃ。

「ま、取り敢えずゴンの講習が終わるの待つか」

「そうだな」

そして、俺たちはあるヤツの気配を察知した。

「野暮用出来たから、ちょっと行ってくる」

「じゃ」

クラピカとレオリオから離れ、奴の気配を辿った。

そして、ホテルの一角にある噴水のある庭にやってきた。

「よぉ、イルミ」

「…やぁ鳴門」

相変わらずの無表情。

「キルの事で何か聞きたいの?」

「お前ん家何処にあんのか教えて。
つーか、キルアが何処に行ったか知ってる?」

「多分家じゃないかな?家の場所はククルーマウンテンだよ」

「軽っ…お前少しは焦らすなりしたらどう?」

「焦らすも何も、地元じゃ結構有名だから捲ったら直ぐ出てくると思うし」

あっさりと教えてくれたイルミに何か拍子抜け。
しかし、悪名高いゾルディック家が地元で有名とかいいんだろうか…。

「鳴門だから教えたんだよ?あのゴンって子にはきっと教えなかった」

「其の差は何…」

「鳴門なら、歓迎するけど…あの子たちじゃ家まで辿り着けないよ。
住む世界が違いすぎる」

其れは言える。

「鳴門の事は親父に言っておいてあげるよ。でも、ゴンの事は何があったって知らないよ?
何せ俺の家、暗殺一家だからさ」

「殺さん程度にな」

危うくなったり、ゴンが死ぬような事があったら俺は間違いなくお前らを…。

「そんなに殺気立つなって。一応考えておくから」

無表情ってのは読み難いったらありゃしねぇ。
クルリと軸を返してイルミは去って行った。
其の後、ネテロの爺さんの所に行き、例の褒美をもらいにいった。

ま、情報だけどね。
















イルミから家の場所を聞いたとゴンたちに言えば、直ぐに出発しようと言い出したゴン。
ま、言うと思ってたから驚かないけど。

ククルーマウンテンには3日もあれば着くらしい。
俺たち5人は優雅な空の旅をし、列車に揺られレントラ地区へやってきた。

ハンター証ってのは本当に便利だった。
航空チケットも予約なしに席が取れるし、お陰で窮屈な思いをしなくて済んだ。

ククルーマウンテンへ行く手段を見つけたのはいいが、バスツアーって…。

「左手に見えますのがあの悪名高いゾルディック家のあるククルーマウンテンです」

「…いいのか?ゾルディック家もこんなの許してて…」

「全くだ…」

物凄く不気味な山だった。

ククルーマウンテン全てがゾルディック家の敷地だって言うもんだからかなり驚いた。

普通の人間は絶対迷うな。

そして、漸くゾルディック家の入り口へやってきた。

「…すご…」

「デカい門だな」

其の門には数字が書いてあった。

「ねぇガイドさん」

「ココちゃんでいいわよ」

「…此の中に入るにはどうしたらいいの?」

「中の見学はプログラムに入っておりません」

簡単に入れる訳ねぇだろ…。

するとバスに乗ってた何処からどう見てもカタギじゃない男が2人。

誰も見た事ない顔写真で1億も値がつくとか…。
クソ、イルミとキルアの写真撮っとけばよかった…。←

男たちは門へと近付いた。

「待て!何もするつもりだ!」

大きいほうの男が振り返り手にしていたモノを見せてニヤリと笑う。

「ダイナマイトだと!?」

「アンタたち、そんな事やっても此の門は開かないよ」

守衛だろうか、門の傍にある小屋から出てきた少し小太りの男がそう言っても聞き入れる筈もなく、そして火を付け其れを空高く門へ投げつける。
バスの乗客も悲鳴を上げて逃げる。

大きな爆発音が辺りに響く。
立ち上る煙の中、見えてくる門には傷一つ付いてはいない。

「頑丈な門だな…」

「あの火薬の量でびくともしねぇなら、何下って無理だろ」

びくともしない門を見た男たちは守衛に近付いた。
胸倉を掴み持ち上げながら、鍵を開けろと。
すると、守衛の上着から鍵が地面に落ち、其れを拾って脇の扉から中へ入っていく。

「アンタたち止めときな!どうなったってしらないよ?」

あまりに冷静な守衛がいた。

「あ〜ぁ、またミケがエサ以外の肉食べちゃうよ…」

「ミケ…?」

「猫か何かか?」

「さぁ…?」

ーうわぁあああ!!!

「「Σ…!?」」

中から悲鳴が聞こえ、ゴンたちとは違って何の驚きもせず、小屋からバケツと鉄の挟むモノを持って脇の扉へ近付いた。
其の扉が開いたと思えば、猛獣のような鳴き声がして、扉の隙間から中に入ったと思われる男たちが服を着た侭の骸骨姿が顔をだす。
そして、其れを持っていたのは白い獣の手…。

「ミケー!太っても知らないよ!」

「そうゆう問題か?」

「前に太ったとか?」

「お前らやっぱどっか頭のネジ足んねーだろっ!?」

失礼だな。
普通の意見を述べただけだろ?

「お客様っ、バスが発進致します!」

「あ、いいです。俺たち此処に残るんで」

其の後、小屋に入って守衛と話をした。
守衛はゼブロと名乗り、20年此の仕事を勤めてるらしい。

ゴンがキルアの友達だと言えば、柔らかい表情になったゼブロ。

「先程見えてたのは、ゾルディック家の番犬です」

「番犬なのにミケ?」

「太朗とかポチでよくね?」

「お前らもう黙ってろ!!」

酷い。
普通の意見だってのに…。

「ミケは家族以外の命令も聞かないし絶対懐かない。
侵入者は噛み殺せと。忠実に其れを、いや食べ殺しちゃってるから忠実ではないですね。
キルア坊ちゃんの友だちなら尚更骸骨にする訳にはいかない」

クラピカの読みは、侵入者ではなく家に仕える者以外噛み殺せ。
其れは半分当たっていた。

「わざわざ門の隣に扉を設けたんですよ」

わざわざ、ね。
守衛はミケの食べた残骸の掃除をする人だった。
門には鍵がかかっていない。

そして、ミケには正門から入ってきた奴以外噛み殺せと命じられていた。

「押しても引いてもっ…ふんぬ〜っ」

一旦外へ出て、門を開こうとするレオリオだったけどびくともしなかった。

「単純に力が足りないんですよ」

「アホか!俺は全力でやってんだ…!」

「まぁまぁ。此の門は試しの門と言われましてね?開けられない者はゾルディック家に入る資格もない…まぁ見ていて下さい」

ゼブロは上着を脱ぎ、タンクトップだけになった。
そして、気合いを注入してるのかゼブロはちょームッキムキに変化していった…。

1の数字が書かれた扉がゆっくりと開いた。

「1の扉は片方2トンあります。扉の数字は1から7まであり、数字が1つ増える事に重さが倍になってます。
キルア坊ちゃんが帰られた時は3の扉まで開きましたよ。
年々私もしんどくなってきてね。開けられなくなったらクビですから、必死てすよ」

「…3って事は、12トン!?」

「16トンだよ、ゴン…」

「倍って言ったろ…」

「どんな計算してんの…」

阿呆としか言えない…。

真面目な顔して間違えてるとか…。
 

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