危機と借り

 
キルアと別れた俺たちは、すぐゴンの所へ向かった。

「…完全に隠れてんな」

「嗚呼」

やっぱりすげーのな彼奴。
あんな手足れに対して気配を感じさせないなんて。

気配を悟られないよう慎重になるゴンはピエロモドキにはまだバレてない。

「だが、まだ詰めが甘い」

ゴンの背後にいる奴に気付いてない。

彼奴、確か猟師だったか…?
大きな吹き矢をもった色黒の男。

「目の前の敵に拘りすぎてんのも関心しねぇな…」

其れから数日、ゴンはターゲットであるピエロモドキのプレートを取る練習をし始めた。

動かない敵はいない。
動く相手となれば、先読みや判断などが試される。

其の為の練習だ。

ゴンを追う彼奴も、まだ動く気配はない。

「…」

「やっちまうか?」

「いや、まだだ」

ゴンに危険が迫った訳じゃない。
其れに、あまりゴンの邪魔をしたくもないって言うのが強い。

人に頼らず自分なりに力を磨く。

嫌いじゃないよ、そうゆうの。

「ゴンに手を出したら、其れは分からないけど」

ミトさんの為にもね。

きっと悲しむだろうから。







自信をつけたゴンがピエロモドキを見つけたのは日が暮れる直前だった。

ピエロモドキからプレートを奪う此の瞬間にゾクゾクしてるのか、ゴンはやけに楽しそうだった。

「今だ!」

釣り竿を力いっぱい振った。
針がピエロモドキに近付き、胸にあるプレートを引っ掛けた。

「…!」

ピエロモドキの表情が一瞬、変化した。
やっと自分が狙われていたのだと気付いた。

パシ、とピエロモドキのプレートを手にしたゴン。

「はぁ、はぁ…はぁ…」

ピエロモドキがゆっくりとゴンの姿を目で捉え、薄く笑う。

そして、ゴンは軸を返して一直線に駆け出した。

日も落ち、暗闇の中駆けるゴンの背後に影が2つ。

ーヒュン…

「Σ…うっ」

猟師が動いたんだ。
逃げるゴンの背後から、吹き矢を放った。
命中した其れはゴンの首に刺さっていて、どうやら即効性のようですぐに動けなくなっていた。

「心配するな、3日もすれば動けるようになる。
お前の気配の消し方は誉めてやる。
だが、自分を狙う敵もいるって事を理解し行動すべきだったな」

「…ぁ…」

男はゴンとピエロモドキのプレートを手にし、去っていった。




「(クソ、クソクソ!
甘かった…ヒソカのプレーを取った喜びで周りが見えてなかった…!)」

即効性な筈なのに、ゴンの意識はまだあった。

そして…

「驚いたよ☆
ずっと気配を絶って伺ってたのか…僕が攻撃する一瞬の隙を。
僕の殺気に自分の殺気を紛れ込ませるなんてね☆」

ピエロモドキがゴンに接触したかと思えば、ピエロモドキとゴンのプレートを傍らに投げやる。

「取り返し、に…きたんじゃ、ない…のか?」

「誉めに来たんだよ」

あの帽子は確か猟師の…。

「此の帽子の彼、僕のターゲットでね」

ニヤリと笑う顔が最早カオス。←

「君のモノだよ」

「いら、な…い!」

動けない筈なのに、ゴンはピエロモドキのプレートを持ち立ち上がった。

「借りなんて、まっぴらごめんだ…!」

「強情だね…」

「ガハッ!!」

頬へ重い一発。
ノーガードなゴンは其れを食らい、数m吹っ飛んだ。

「僕の顔に一発でも入れられたらもらってあげるよ☆
其れまで君が預かってておくれよ」

ゴンの意識が飛んだ…。

此れはそっとしておくべきだろうな。
此処で俺が手を差し伸べたら、意味をなさない。

折角味わった敗北からの屈辱。
こんなの乗り切れないなら、其処まで。

「鹿、行こう…」

「鳴?いいのか…?」

「ゴンなら大丈夫。自分でちゃんと解決出来るさ」

ゴンを元から離れた。

其れからと言うもの、接触しないよう心がけ、ゴンの近くに待機はしていた。

這いつくばって見つけた木の幹の中で眠りに落ちた。

木の幹から出てきたのは、最終日。
プレートは木の幹の中に置いてゴンは出ていった。

「まだ、乗り越えらんないか…」

クラピカとレオリオに遭遇した後、レオリオのターゲットが大きく開いた洞窟の中に入ったっきり出てこないとか。
痺れを切らしレオリオは、俺が出てくるまで待ってろと言い洞窟の中に入っていったのはよかったが、暫くしてレオリオの悲鳴にも似た声が聞こえた。

「「レオリオ!?」」

バ、と立ち上がり中へ入ってく2人。
何度となくレオリオが声をかけても2人は聞く耳を持たなかった。

「…」

「鳴、どうする?」

「スタート地点に戻るぞ」






















『此れを持ちまして、四次試験終了とさせて頂きます。
受験生の皆さんは速やかにスタート地点までお戻り下さい』

アナウンスの後、スタート地点に飛行船が降り立った。

其処に集まる受験生の中にゴンはいなかった。

「何か悩んでいたらしいが、其れももう吹っ切れたようだ」

「そっか…」

「…(何だかんだ言って心配してたんだな、鳴の奴)」

暫くしてゴンが戻ってきた。

「…遅い」

「えへへ、ごめん。忘れ物取ってきてたんだ」

ゴンの手にはピエロモドキのプレートが握られていた。
うん、吹っ切れたな。

ゴンに近付いて、俺はゴンの頭にポンと手を置いた。

「ゴン、其れを叩き返せるくらい強くなれ」

「え…?」

「…」

………………………………あ。

「見てたでしょ!」

「…さぁ」

「鳴門のバカー!!」

「見てた?」

「何かあったのか?」

「…さぁ」

そそくさと飛行船へ乗り込む俺。

「待ってよ鳴門!」

「説明しろ!鳴門!」

「ゴンに何があったんだ!」

「鳴門!」

説明するのメンドクサイ。←
 

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