次の日、また次の日と続けたら彼奴は段々と壊れてきた。

「も…やめて、くれ…」

「………つまんない」

毎日毎日泣きながら哀願してくるんだ。

殺し損ねた死神が横たわっていながらも、此奴はトドメを刺さない。

「ウル、つまんなくなったから死にかけの始末よろしくね」

「此の者は如何致しますか?」

「殺さなくていいよ」

「グリも後頼むね」

「嗚呼」
























つまんないなぁ。
折角遊んでたのに。

たった2週間で根を上げてさ。

其の2週間ずっと死神や魂を殺し続けていると、こんな噂も上がってくる訳で。

「一護、此処最近の神隠しの噂知ってる?」

「乱菊さん、神隠しって何…」

「え、アンタ知らないの〜?
死神や流魂街の人たちが次々といなくなってるんですって!
もう15人目よ?」

「誰がいなくなったとか知ってんの?」

「そらそうよ!十番隊や他の隊の死神が消えてるんですもんっ」

犯人俺だけどね。
実行犯は殆ど彼奴だけど。そう言えば俺、1人しか殺してないや…。

「其れでね、何か其の神隠しに関わったって言ってどっかの隊の死神が今日、呼び出されるって話よ?」

「そうなんだ。其れってやっぱり隊長や副隊長も参加しなきゃダメなのか?」

「そうねぇ…総隊長の判断次第かしら。
何、もしかして面倒だとか思ってる訳?」

「アハハ、思ってる」

なんて事ないんだよ。
つか、是非出席したい。
乱菊さんの話だと、きっと彼奴だ。
俺の壊れた元玩具。

折角火が付いたってのに、2週間で壊れるとかマジ有り得ないし。

そんな彼奴が、

何て言うか
俺の事をどう言うか
ウルやグリの事
消えた死神たち

どんな風に言うか、本当楽しみだ…v

「もうアンタって真面目なんだか不真面目なんだかよく分かんない男…。
ま、でもきっと副隊長も同席で開かれるでしょうね」

「仕方ないか…」





其の後、五番隊執務室に戻って今の話を惣右介に話す。

「いよいよ此の時がきたって感じ」

「此の為に遊んでいたのだからね」

「壊れて初めて、精神的にも肉体的にも限界値に達した時、彼奴がどうなるか…」

惣右介には鏡花水月を使って手伝ってもらってるんだから、つまんない終わり方は止めて欲しいな。

「彼奴にはちょっと期待してたんだけど、意外と早く壊れたからちょっと納得いかなかったけど」

「でも少しは楽しめただろう?」

「まぁね」

壊れた元俺の玩具、最後はちゃんと〆てくれるよね?

「一護、そろそろ時間だ」

「うん」

壊れた彼奴が待つ場所へ。

総隊長からの伝えは隊長は副隊長を連れてくるよう、先程連絡が入ってきたんだ。

さぁて、彼奴は最後にどれだけ楽しませてくれるのかな…。























隊長、副隊長が隊ごとにならんでいた。
俺も惣右介の後ろに佇む。

「お主らに集まってもらった訳じゃが、最近次々と起こっておる神隠しの噂は聞いておろう。
其の関係者だと申し出た者がおってな」

「山じぃ、関係者って…」

「神隠しについて、って事ですよね?先生…」

彼奴しかいないよね。

「そうじゃ。入ってまいれ」

山本のじいさんがそう言えば、扉が開き、思った通りに元玩具が入ってきた。

目は虚ろでフラフラと俺たちの前に。

「お主、何処の隊じゃ」

「…五番、隊…です」

さぁ、俺を楽しませて?
低脳なテメェの頭で、俺をどう伝える?

「では申してみよ」

「…はい…。2週間前、私の同僚が死神5人を殺し自害した件。
私は自害した死神をよく知っていました…」

つらつらと前菜にもならない話が続いた。

「彼奴が仲間を殺す筈がないっ
そう思った私は、ある人物に目を向けたのです。
最初は呼び出して本音を聞き出そうとしたのですが、全く手応えなしで否定した言葉しか出てこなかった…。
其の日から、彼奴は…」

其の話を此処にいる奴らは黙って聞いていた。
俺の元玩具の話を。

「彼奴は俺の前で坂上を殺した…何の躊躇もなく…
今を楽しみたい、そう笑って…
虚みたいな奴らを2人引き連れて、其れから毎日毎日俺の前で…黒崎 一護!!
皆を返せっ…お前が殺した皆を返せっ」

泣き叫ぶ其奴は、クタリと床に座り込んだ。
そして、皆の目が俺に向いた。

「何言ってるんだよ!」

「五番隊、副隊長黒崎 一護、どうじゃ?
此の話は誠か偽りか?」

「其れは花見に出席した皆がしてくれる」

「総隊長、2週間前の13日は女性死神協会開催の花見に黒崎副隊長は開始の7時から11時の間、ずっとおられました。
其の次の日の14日は藍染隊長と流魂街の居酒屋で目撃されております」

七緒さんがそう言えば、花見に出席した奴らはうんうんと頷いた。

「居酒屋では俺も藍染隊長に呼ばれて、日番谷隊長と雛森三席と同席してました!」

恋次の言葉を聞いて、冬獅郎は1つ頷いた。

「15日、黒崎副隊長は我が屋敷に呼んでいる」

「僕も一緒でしたよ」

白哉と惣右介。

「16日から3日間、黒崎副隊長は現世に行ってます。
帰ってきた時に傷の手当てをしていますから覚えていますよ」

卯ノ花さん。

「20日は技術開発局で手伝ってもらったがネ」

「21日は流魂街の…」

「22日は…」
「23日は…」
「24日は…」

うんうん、皆よく覚えててくれたね。

流石は鏡花水月だよ。

「そんな…嘘だ!!あれは確かに黒崎 一護だった!
虚みたいな奴連れて、俺の目の前で彼奴を殺したんだっ…
小さな子供から死神まで…
死神じゃない子供も、笑って…」

さぁ、壊れて。
どうせなら醜い壊れ方がいいな。

「全部…全部お前の所為…
そうだ、全部…全部お前が悪いんだぁぁぁああっ!!!!!!」

其奴は刀を抜いた。

「そやつを取り押さえよ」

静かに山本のじいさんが呟き、其奴は取り押さえられた。

あぁ、つまんない。

つまんない壊れ方。

「一護くん、大丈夫かい?」

「あ、嗚呼…其れにしても、皆が覚えててくれてよかった…」

まぁ、そう仕向けたのは俺だけどね。

其れにしても、つまんないなぁ。
こんなの壊れたうちに入んないよ…。




























解散した後、惣右介と一緒に五番隊の執務室へ戻った。

まだ色々とやらなきゃいけない仕事があるからだ。

「求めていたモノとは違ったみたいだね」

「…全然違うよ、あんなの」

俺はもっと醜い彼奴を見たかったんだ。
泣き叫ぶなんて論外。
キャハハハ笑って暴れてた方がまだ面白かったのに…。

「一護」

「ん?」

「虚夜宮に戻ってみるかい?」

其れは突然だった。
惣右介の鏡花水月の能力を使うのはもちろんの事。

「寂しくない?」

「当たり前な事を聞いては駄目だよ。
引き留めたくなるじゃないか」

「だよね…」

くすりと笑って頷いた。

そう言えば、ウルもグリもまだ瀞霊廷にいるんだったね。
本当は別件で遊ぼうとしてたんだけど、後でも出来るか…。

一緒に連れて帰るかな。

「じゃあ、今夜発つよ」

もう発つ夜までは惣右介にベッタベタでいいよね?






















そして、夜。
腕に銀色の腕輪を付けて。

「じゃあ、行ってくるね」

「気を付けて」

ガルガンタを開き見送る惣右介の頬にキスを送り、手を振りながら中へ入った。





行き着いた場所は3年前の虚夜宮。
今と変わらない外装に内装。

「お帰りなさいませ、セルフィさま」

虚夜宮に着いた瞬間ウルキオラが頭を下げた。

「ただ今、って過去だけどね」

クスクスと笑って、玉座に向かう。

俺は虚夜宮の王として君臨し、100年以上なる。

虚夜宮では王は絶対。

普段の俺に戻ってない事で、王である俺に刃向かえばどうなるか、今其れが分かる。

「ウルキオラさまっ」

「其の男は誰だ!」

下っぱの破面が…。

「貴様、今な…」

喋っていたウルキオラを止め、俺は前へ出た。

「俺が誰だって…?そんなの分かんないで聞いてくるなんて、余程低脳なの?」

そう言ってやれば、逆ギレで此の、此の俺に対して口答えをしてくるんだ。

「な、何だと!?」

王である俺に、口答えって。
許される訳ないでしょ?

「グリ」

「何だよ」

「此奴ら殺していいよ。
俺には必要なくなったから」

後ろを振り返りにっこり笑うとグリムジョーはニヤリと笑った。

「じゃあ、始末頼んだよ」

「任せておけ、セルフィさま」

「「買Z、セルフィさまっ」」

もう遅いっての。

ウルキオラと歩き出し、後ろからは悲鳴と血の匂いがした。





玉座がある場所に着くと、皆が俺を迎えてくれた。

「セルフィさまーっ」

走り寄る小さな体。
其の姿を見て、頬を緩ませた。

「ただ今、ネル」

「しっ心配したっス!!」

「そっかそっか、ごめんな?」

「でも、セルフィさまが無事なら其れで…」

安心されたように溜息を付かれた。
他の破面も、ネルと同様俺を迎えてくれた。

3年後の俺。
3年前の虚夜宮。

「皆、心配かけたね。
過去の俺も未来に飛んだみたいだから少しは安心してもいいよ」

其れに、違う場所に行ったって生きていけるよ。
ってもう死んでるけど。

「でもセルフィさま、虚夜宮にお帰りなされた事は嬉しいのですが…何かご用でも…」

「一番は皆の顔見に帰ってきたの。
其れと、尸魂界にちょっとイタズラでもしようかと思ってね…v」

「イタズラ、ですか…?」

「そうイタズラ。
瀞霊廷にメノス送り込むとか、スパイとか?」

面白そうだよね(笑)

メノスなんかはざっと100くらい送り込んで瀞霊廷めちゃめちゃにやってもらうとか。

スパイは2人くらい?
ザエルアポロに義骸作ってもらって、霊圧とか抑えるアクセサリーも付けて。

「スパイもいいけど、やっぱメノス先に送り込むか。
ウル、取り敢えず虚圏にいるメノス集めてきて」

「御意」

「ザエルアポロいる?」

「は、セルフィさま」

「義骸作ってくれる?入れ物は人間っぽく、骨付きはNGだよ。
其れと霊圧抑えられる小物もね」

「御意」

さて、何時実行しようかな。

「セルフィさま楽しそうっスね!」

「そう見える?」

「物凄く!」

顔が緩んで仕方ないのかな?
でも楽しみではあるね(笑)

「あ…そう言えば…」

「セルフィさま?」

「3年前の俺、何処に飛んだんだろう…」

「…虚夜宮、じゃないっスか?」

だったらいいんだけど…。
もし、瀞霊廷の中に飛んだら?

ヤバい事になってるかも…v←
ま、でも本来の姿だしバレる確率は低いかな。

























 

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