「セルフィさま、メノスの準備が整いました。
其れと義骸の方も出来上がったとの報告です」

「有り難う、ウル」

玉座に座っていた俺は立ち上がり、ネルを抱き上げる。

「さぁネル、まずはメノスたちを尸魂界にプレゼントしに行こうか?」

モニター室に足を運ぶ。

「一護さま?」

「ん?」

「スパイって、何っスか?」

「簡単に言うと、敵に正体隠して仲間のフリしながら情報集める役かな」

「一護さまとは少し違うっスね!
死神の情報なんて集めてないっスもんっ」

モニター室に到着した俺はネルを膝に乗せ、特等席での鑑賞会。

「ウル」

「…は、お呼びで?」

「メノスたちを尸魂界に送っていいよ」

「御意」

見つめる先は尸魂界が映るモニター数個。

「楽しみっスね!」

「そうだね」

もうそろそろ、尸魂界にメノスがやって来る。

此の数をどう対処する?

あ、そう言えばウルキオラは何体メノスを集めたんだろう…。
つーか俺、数の指示って適当だったけど…。

「セルフィさま!メノスっスよ!」

モニターを見てみると、ガルガンタから現れたメノスの姿が…。

「あらぁ…ウルったら結構集めたんだね…」

100体以上いそうだけど…。

「尸魂界を壊すんスか?」

「少しね。全部は無理じゃないかな?たかがメノスだからさ」

メノスが瀞霊廷内に降り立ち、一斉に虚閃を放つ。
土煙を上げて建物が崩壊していく様を見て、口端を持ち上げた。

「惣右介たちもいるし」

「メノスたちがどんどんやられていくっスよ!?」

「大丈夫だよ。分かってたから」

「…一護さま?」

「此れは前座」

此の後、メインが待ってるんだから。

「さ、行こうか?ネル」

「もう見ないんスか…?」

「うん。つまんなくなったし、俺の本当の目的は違うから」

玉座の間に戻ってきた俺とネル。

ザエルアポロが作った義骸のチェック。

「中々よく出来てるじゃん」

「有り難うございます」

「じゃあ、ウルとグリ此れに入って?一緒に尸魂界に行くよ」

ちゃんと霊圧を抑えるアクセサリーも渡して。

「もう、行っちゃうんスか…?」

ネルが眉を下げて俺の裾を握っていた。
そんなネルの頭を撫でてにっこりと笑ってあげた。

「また帰ってくるから、な?」

「待ってるっス…」




















尸魂界に降り立った俺たち。
ウルとグリに渡したアクセサリーは霊圧を10分の一に抑えるようになっている。

抑えて、まぁ平って所だけど其の分腕はあるからね。

「ウルとグリは此の侭俺と一緒に惣右介の所に向かうよ」

俺たちは惣右介の元へと急いだ。

ブレスレットをしているからか、瀞霊廷に貼ってある結界にも楽々と侵入出来て、5番隊執務室に入る。

「煤cおかえり」

「ただ今」

サッと鏡花水月と入れ替わり、惣右介の頬にキスを贈る。

「随分と早いお帰りだね?
まだ何かやってくれると思ってたんだけど?」

「もう手は打ってあるよ」

俺がそう言ったら惣右介はクスリと笑って頬に手を添えてきた。
其れを自分ので触れる。

「流石と言うべきかな?」

「其れでね?惣右介にやってもらいたい事があるんだ」

「僕に出来る事ならなんなりと」

「…有り難う」

段々と近付いてくる惣右介の顔に俺は瞳を閉じた。





























「あ、ウルキオラさんにグリムジョーさんお早うございます」

「嗚呼」

「おぅ」

入ってきた2人に笑顔で迎えた雛森。

黒い死覇装を身に纏うウルキオラとグリムジョー。

2人にはスパイとしてと言うよりかは、まぁより一層楽しむ為に傍に置いて置きたかったんだよね。
で、惣右介に頼んでちょっと記録と皆の頭を弄ってもらって、元からいた事にしてもらった。
5番隊の三席と四席として。

「おはよ、2人とも!」

「お早うございます」

「よぉ一護」

惣右介はこうゆうの得意だからね。
本当はネルを連れて来たかったんだけど、断念。

此処、危険だから。

死神とかじゃなくて、俺のサブで危険地帯になるかもしれないし。
そんな所にネルを連れてこれる筈ないからね。

「どうだったかい?現世は」

「つまんねぇ所だ」

「隊長に何て言葉使いをしているんだ屑が」

「俺には言ってんじゃねぇか!」

「お前だからな」

「どうゆう意味だテメェ…」

「2人とも帰ってきた早々喧嘩しない!」

虚夜宮とあんまり変わらない2人で安心。
死神を見下すような態度は少しあるけど…。
まぁ其れは仕方ないかな。
だって、死神だし。

「申し訳ございません」

「…っち」

俺が過去に飛んできてからだいぶ経つ。

此の2人はまわりにいい具合に溶け込んでるような気がする。
虚退治も難なくこなしてるし、死神を殺す事もなく順調に計画は進んでいた。

此の侭惣右介の仲間として虚圏に行くって手もあるけど、其れじゃ面白くないしね。
あと2年と少ししたら旅禍としてやってくる訳だし、其れまでに考えればいいか。

破面側、死神側。
どっちを選んでも楽しめそうだけどね!

「さて、一護くん」

「?」

「僕の用事に付き合ってくれないかい?」

「用事?」

「そう、用事だよ」

首を傾げながら惣右介の後を追った。

「雛森くん、後は任せたよ」

「はい。お気をつけて」

あれ、雛森は知ってるみたい…。

そんな事を考えつつも執務室を後にした。
















「…なる程ね」

「あの場所で言うと笑ってしまうんじゃないかと思ってね」

尸魂界にある、刑務所って言ったら早いかな?
俺たちは今、其処に来ていた。

「其れと、前の事もあるから余計にね」

神隠しの件で俺に文句言ってきた奴、あの騒動の後、此処に入れられたって聞いた。

「彼奴に会いに行くの?」

「嗚呼、彼は元は5番隊の死神だから定期的に様子を見る役は必然的に其の隊の中からって決められているんだ」

「雛森は…?」

「知っているよ。
君を行かせる事を反対したんだがね、言葉を並べてみたら納得してくれたよ」

「こんな面白そうな事に俺が行かないって言う訳ないもんな!」

其れでこそ惣右介だよ!

くすり、と笑みをこぼしながら中へと足を踏み入れた。


















「…」

中に入ったのはいい。
其処に入ってる奴らの視線が物凄く気になった。

ジロジロと…。

「何なの?此奴ら…」

「気にするだけ無駄、と言いたい所だが問答無用で襲いかかってくるから気をつけて…」

「…」

「買Kハッ…!」

「って君には必要なかったかな?」

「そうでもないかな。話してくれてありがとう」

惣右介が話してる間に1人、早くも襲いかかってきた奴を地面とお友だちにさせてあげた。
尸魂界だから、殺せないのが残念だけど…。

其の場面を目撃したからか、其奴以外、襲いかかってくる奴はいなかった。

「さぁ急ごうか。彼がいるのはまだまだ先だから」

「…v」

彼奴、どんな顔するんだろう…。
すっごく楽しみ…。

彼奴には感謝してるんだよ?
此処に飛ばされて間もない俺の遊び相手になってくれたんだから。
其処だけは感謝してるんだ。

最後の〆にはちょっとガッカリしたけど。

歩く事数分、入り組んだ道を進むと段々と人の気配がなくなった。

「此処だよ」

「随分と寂しい場所だね…」

周りには他の牢もなく、此奴が入ってる此の牢しかなかった。

「まぁ神隠しの件で大罪を犯したとなってるからね。
四十六室も此れが打倒と思ったんじゃないのかい?」

「死罪じゃなくてよかったよ…」

あの顔がまた見れるんだから。

さぁ、其の醜い顔を俺に見せてよ。

「久しぶりだね?元気?」

「…」

牢の中にいた其奴は、中に設置された椅子に手足をだらんとさせ座っていた。

俺の問いかけにも反応なし。

「おや、無反応だね…」

「んー…」

此れなら反応あるんじゃ…そう思った俺は口端を緩め、口を開いた。

「…人殺し」

「…!」

「反応あり、か…そんな言葉で動揺するとはね…」

「仕方ないんじゃないのかな?人殺しだし」

「ひっ!?」

続けて言うと、其奴は両手で頭を抱えるようにして体を縮ませた。
俺の隣では惣右介がクスクスと笑っていた。

「ち、が…!」

「何が違うのかい?君は人を殺しただろう?」

「違う…!お、俺じゃ…!」

「そうだよ。だから此処にいるんじゃん?お前が何人も…」

「やめ…ろ…」

「死神、大人や子供…何人も、其の手で」

「やめてくれ…っ」

「お前が、殺したんだ」

「…ギャァアアアア!!!!!!!」

「プッ…!」

ギャァアアアア、だって!
今時そんな叫び方する奴いたんだ!
今のはちょっと面白かったから、あの時の最後の〆はチャラチャラにしてあげるよ。

「あー面白いなぁ…」

偶に思いだした時に聞くのもいいかもね!
未だにブツブツとバカみたいに呟いてる其奴に背を向けて、其の場を後にした。


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