藍染破一護2

 
あまりに強烈な蹴りを食らって、其の反動で飛ばされたノイトラは蹴られた部分を手で押さえ、一護を睨む。

「狽チ何するんだテメェっ!」

「言っただろ。ネルは俺のお気に入りだって…」

倒れた奴を見下ろす一護は其奴に向かって手をかざした。

「「虚閃だとっ?!」」

周りからの声も、表情も、一護が虚閃を使えるなんて此れっぽっちも思っていたからか、目の前で起こる一方的な戦いを目を見開いて見ていた。

「お前、いらない。消えろよ」

そして一護が掌から虚閃を放つと、赤黒い丸い塊はノイトラへ一直線に向かい…

―ズトォーンッ

物凄い音と共に煙が立ち上がった。
煙がなくなった後、ノイトラの姿は何処にもなく其の場にいた破面たちの視線は一護に注がれた。

肉体をもなくなってしまう程の威力のある虚閃を放った此の一護は、一体何者なのだと。

「んー、スッキリしたv」

伸びをし、一護は元の場所へ戻りまたもネルを抱え、此処に集まる破面たちを見下ろした。

「ネルに手を出したら、彼奴と同じ目に合うと思うんだな…」

見下ろされながらに放たれた言葉に背筋が凍った。
藍染は玉座から立ち上がり、一護の隣に立つ。

「皆に紹介するよ…」

ネルを抱えた侭一護は白い死覇装の姿に変わった。

首筋にある零と言う文字に目の所にある破れた面。

「「狽チ?!」」

「破面w、そして、虚夜宮の王である黒崎 一護君だよ」

「宜しくな?」














其の後、死神4人の死を知らせに行く話を持ち出したのは一護だった。

死神たちに軽く挨拶をしなくちゃね?、とニヤリと笑う一護がいた…。















一護が虚圏の王と藍染から紹介を受けたのは昨日の事。
今までいた家の家族やつるんできた友人の記憶は消去した。

黒崎 一護と言う人物の記憶を。

そして、一護は此の先どうなるか楽しそうに笑っていた。
今日から始まる新しい幕開けに…。

「じゃあ、惣右介行ってくるよ」

「あまり無茶をしてはイケナイよ?」

「分かってるって」

4人の死神の死を、他にいる愚かな死神どもに知らせに…。

―ズズズズッ

ウルキオラとグリムジョーも供に連れ、現世への扉の中へと入って行った。













空座町の空に亀裂が入った。
そして、丁度其処に居合わせたのは浦原 喜助だった。

「狽チ…黒、崎さん…?」
ウルキオラとグリムジョーの中心にいる一護の姿を確認した浦原は、顔を強ばらせた。

「浦原さん、久しぶりだね」

「黒崎さん…何かの冗談っスか?」

目の前にいる一護は白い死覇装に、目の部分には破面の特徴である仮面に、首には布を巻いていた。

「冗談?何の事?」

「黒崎さん、アタシたちを裏切ってそっちの仲間に…」

「何言ってんの浦原さん。俺は元々こっち側だよ?」

「…え、?」

大きく目を見開き、浦原は一護を見つめた。

「俺はとっくの昔に死んでるんだよ。
そんで、其の時から破面の仲間だったし?」

「そんな…今まで一緒に戦ってきたのは、一体…」

何だったんですか、と言おうとした浦原だったがあまりにショックが大き過ぎて言う事が出来なかった。

そんな浦原に一護はニヤリ、と笑みを雫した。

「そんなの。俺が楽しむ為に決まってんだろ?

まぁそんな事はどうでもいいんだよ今は。
虚圏に乗り込んできた、ルキアと恋次とチャドと雨竜の4人は『死んだ』って事を伝えに来たんだ」

4人の遺品とも言える斬魄刀と身に付けていた物を浦原の前に投げやった。

当人のモノか定かではないが、其の遺品にはたっぷりと血が染み込んでいた。

「狽チ?!」

「其れから、浦原さん…
尸魂界にいる死神たちに伝えててくれる?
『地獄の底に叩き落としてやるから、楽しみに待ってろよ』ってさv」

そう言う一護は楽しそうに笑っていた。

「…じゃあ、黒崎さん…アナタはアタシたちの敵になるって事ですか…?」

「そうだよ」

「そうですか…」

浦原はゆっくりと斬魄刀を抜いて、其れを一護に向けた。

「今此処で、殺しても…いいんですね?」

「いいけど…浦原さんじゃあ、俺は殺せないよ?」

クスクス笑っている一護に向かって、浦原が斬りかかる。

―キィイン

―ギギギッ…

「俺たちの事、忘れてちゃいねぇか?死神…」

一護に向かってきた斬魄刀を受け止めたのは、グリムジョーだった。
一護を庇うように…。

「すいませんねぇ…黒崎さんの事しか目に入ってなかったみたいっス」

「何だと…?」

眉間に紫波を寄せるグリムジョーの後ろから、何の感情もない声が発せられた。

「グリムジョー、退いて」

刀を交えていたグリムジョーが一護の前から退いた瞬間、一護の掌の上から赤黒い丸い塊が浦原めがけて放たれた…。

「狽チ?!」

其れを紙一重で避わし、浦原は一護たちと距離を取った。

―ズザザザザァ…

「浦原さん、アンタや死神どもががどんなに足掻こうとも俺には勝てないよ…」

だが浦原は思った。

―今の、わざと…

「やってみなきゃ分からないっスよ?」

「其れはどうかな…v」

ニヤリ、と笑みを雫しながら一護は首に巻いていた布を、外した。
其の首筋が露になった時に姿を表した零と言う文字に、浦原は目を見開いた。

「狽ネっ…ゼロ…?!」

「死神、一護さまは我らが王であるお方だ…此の方に敵う者は全世界探しても、見つかりはしない」

「…?!」

「そうゆう事だよ、浦原さん。
さっきの虚閃だって、わざと避けられるようにしてあげたんだよ?
アレ食らってたら一欠片の肉も残らなかっただろうし…」

やはりか、と浦原は心の中で呟いた。

わざとタイミングをずらして避けられるようにした一護を睨んだ。

「其れに俺は、破面たちに苦戦してる死神なんか、目じゃないしね」

「凄い自信ですね…黒崎さん」

「当たり前だろ?俺は王だぜ?」

「一護さま、高い霊圧が4体、こちらに向かってきていますが…」

「多分、冬獅郎たちだろ。浦原さんだけじゃアレだし、挨拶くらいしとかないとな?」

其れから直ぐ、こちらに駆け寄る姿が見え始めた。

「浦原!!」
「テメェはっ…」
「一護…?」
「…何の冗談よ、此れ」

日番谷 冬獅郎と松本 乱菊、斑目 一角と綾瀬川 弓親の4人の死神が息を切らせて一護たちの所へとやってきた。

「浦原さんと同じリアクションかよ…」

間近で見た一護の姿に、4人とも目を見開き、驚愕した。

「黒崎!どうゆうつもりだっ!」

其の声の主は日番谷 冬獅郎だった。
必死になって叫んでいる日番谷を見て一護は急に笑い始めた。

「ぷっ…クックックッ…あはっはっはっ!」

「何が可笑しい…!」

「悪い悪い。
どうゆうつもりって、こうゆうつもりだけど?」

そう言って一護は自分の首筋を指指して日番谷たちに見えるように、番号を晒した。

「「狽チ零だと?!」」
「狽チ零ですって?!」

4人同時に放たれた言葉にまたも笑いが雫れた一護。

「本当、面白いよお前ら!」

「一護さま、時間です戻りましょう」

何時の間にやら空間に亀裂を入れて虚圏へと続く道を出していた。

「殺らねぇのか?」
「グリムジョー、今日は知らせに行くだけって言っただろ?」

「っち…」

そして、其の空間の中に入っていく一護たち。

「ま、此れから敵として宜しくな?」

「待て黒崎っ!!」

日番谷の声を聞いて、一護は振り返る。

「…バイバイ、死神さんたちv」

ニヤリ、と笑みを雫して、一護たちが入って行った空間はなくなった…。

「…浦原、どうゆう事だ!説明しろ!」

「そうだ!敵って何なんだよっ!」

「何で一護があっちについてるんですか?!」

「浦原さん!」

浦原に掴みかかる日番谷たちに、浦原は冷静に答えた。

「黒崎さんは、アタシたちの敵だったんスよ…最初から。
仲間のフリをしていたんです」

「…フリ、だと…?」

「初めからって、どうゆう意味よ!」

「黒崎さん、人間じゃないんです…もう死んでるんっスよ、破面なんですよ初めから」

「死んでる、って…義骸に入ってたって事か?」

「いえ、藍染さんが作った何かを身に付けてたと思うんです…」

「嘘だろ…初めから敵だったって…」

大きな戦力を失った。
黒崎 一護と言う大きな戦力を…。

「其れから…朽木さん、阿散井さん、茶渡さん、石田さんの4人が、死にました…」

「「狽チ?!」」

「尸魂界に早く知らせましょう…朽木さんたちの事と…黒崎さんの事を」














「お帰り一護。どうだったかい?」

「楽しかったよ」

ふふ、と笑いながら、玉座に座る藍染の膝の上に座った。

「其れはよかった」

「ネルは?」

「呼びましたか一護さま」

東仙の影からひょっこりと顔を出したネル。

「おいでネル」

ネルは一護の腕の中に飛び込んだ。

「あれ、一護ちゃん物すご笑顔やね、何や楽しい事でもあったん?」

「あ、ギン。死神たちにね、宣戦布告してきたんだよ」

「あ〜其れで。ほな、次に会う時が楽しみやなぁ」

「だろ??どんな顔するか、凄く楽しみ…v」

玉座のある部屋には一護の楽しそうな笑い声が響いていた。














藍染の自室にて。
其の部屋にあるベッドの上に登った藍染に一護は甘えるように抱き着いていた。

「ねぇ惣右介…」

「何だい?」

「まだ死神たち殺らないの?」

「まぁそう焦る事はないよ一護。物事には順序って言うモノがあるからね」

「でも…俺は惣右介だけ傍にいてくれたら、其れだけでいい…其れ以外、何もいらないから」

逞しい胸板に顔を埋めた。

「邪魔者はいらない」

藍染はそんな一護の頭を優しく撫でて、クスリと笑った。

胸板に顔を埋めた一護の両脇に手を入れて、一護の体を軽々と持ち上げて藍染はキスをした。

「随分と今日の一護は可愛い事を言うんだね…」

「惣右介…」

其の言葉と共に、一護は藍染の首に腕を巻き付けて、今度は自らキスをした。

「ねぇ…もっと、キスして…?」

藍染の顔が近付くと一護は、目を閉じた。
そして重ねられた唇を割ってヌルリ、と舌が入ってくるのを一護はすんなりと受け入れる。

絡め取られる舌と、密着した体…。

「ん、ん…ふっ…ぅ…ぁ…ん…」

唇を離すと、一護は頬をほんのりと染めて、潤んだ瞳を藍染に向けた。

「キスだけでいいのかい?」
「もっと…惣右介を、感じさせて…」

ギュウ、と首にしがみついた一護にクスリ、と笑い、藍染は一護をゆっくりと押し倒した。

「王の仰せの侭に…v」














日番谷によって、尸魂界に告げられた。

朽木 ルキア、阿散井 恋次、茶渡 泰虎、石田 雨竜の4名が殉職した事。

そして…一護の事も。

「破面…だっただと…?」

「日番谷隊長…黒崎のナンバー、は?」

張り詰めた空気の中、

「ナンバーは、零だ…」

日番谷の放った言葉は、尸魂界の全死神たちを震えあがらせた―――。







end...

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