藍染破一護

 
今まで色んな事があったと、思い返すと一護はよく遊んでいた…。

人間の振りをして学校に行ったり
こっそり霊力高い人間の魂食べたり
毎日喧嘩売られてうっかり殺しかけたり
朽木 ルキアに死神の力をもらったり
ルキアを助けに行く振りをして思いきり遊んだり
平子たちと遊んだり
破面とも遊んだり

其の間も、藍染の斬魄刀の能力を借りて一護は藍染に会いに虚圏へも行っていた。














野望を果たす為、虚側に付いた藍染は瀞霊挺や現世の動きを拝見しながら実に楽しそうに過ごしていた。

其れと、一護も。

「…何時まであんな茶番劇を続けているつもりだい?」

「俺が飽きるまで…v」

藍染の腕の中にいる小柄な橙色した髪の少年は、ニヤリ、と妖艶な笑みを雫し、藍染に軽く口付けた。

「其れに、惣右介も楽しめるでしょ?」

「全く…こっちはヒヤヒヤものなんだよ?」

そう言う藍染の顔は実に楽しそうに笑っていて、其れに釣られて一護もクスクスと笑い出す。

「ふふ。じゃあ、行ってくるよ、惣右介…」

「嗚呼、気を付けて行ってくるんだよ…一護」

藍染の腕から離れ、其の一護と呼ばれた少年はすぅ、と姿を消した。














霊圧を完全に消して、現世に降り立った。
そして、口元を緩ませた一護。

「…v」

今から起こる事態を楽しみに、一護は目を細めて笑っていた。




死神なんて、くそくらえだ。
悲しみ、憎しみ、怒り、恨み…。
死神に対して、其の感情しか浮かばない。

死神なんて大嫌いだ―。

絶望を味わってもらわないとな…

死神たちと一緒にいるのは、自分が楽しむ為。
其れじゃなかったら誰が大嫌いな死神と一緒にいるかよ、と。

「さて…行きますか…v」

ウルキオラが織姫と接触し、有無なしで虚圏に強制連行すると言う任務が終わった後、其れを言い訳にして井上 織姫を助けに行く振りをしてちょっとしたお遊戯をしに行けるから、其れは其れは楽しみに…。














虚圏に乗り込んでから、虚の仮面を頭に付けたネルたちに出会った時、ネルが一護の顔を見て、驚いていた。

「狽。…い…一g…!?」

しぃ…v

そんなネルの口に人差し指指を押し付ける一護。
何かどうなっているのか全然分からないネル。

「お前、名前は?」

「ネ…ネル…っス…」

「そっかぁ、俺は一護。宜しくなv」

そして、其々違う道に足を踏み入れた。

「一護さま…」

「ん?どーした?」

楽しそうに笑う一護を前にネルは頭を悩ませた。

「知らないっスよ…?」

「黙って見てろってv」

「はぁ…」

一護は虚圏での王。
其れと、十刃零番。

此れを知るのは、藍染 惣右介と市丸 ギン、東仙 要とウルキオラ、そして、此のネルだけ。

他の同志とも言える破面が生まれ始めた頃、一護は死神の仲間の振りをしながら高校生をやっていたし、瀞霊挺にも顔を出していたから、他の破面たちは一護が破面と言う事や虚圏の王と言う事は知らない侭だった。

藍染さまが心配するでねぇか…其れ以前にウルキオラだって…

「何か言ったか?」

「イヤ、何でもないっス…」

一護が虚圏の王と知らない十刃や十刃落ちの破面たちは本気で向かってくるだろう――侵入者とみなして。

其れを楽しみにしているのが此の一護本人だ。

「今まで俺が皆の前に出なかったのは、此れの為だぜ?」

一番最初の相手は十刃落ちしたドルドーニ。
実力の3割りも出してない一護相手によく戦った方だ。
ドルドーニがネルに虚閃を放ったのはちょっと頭にきて殺しそうになったのは言うまでもなく…。

「…やっぱりまだ物足りないなぁ…」

「一護さま…そんな事言ってたらグリムジョーが来るっスよ?」

あの人、一護さまに対して凄い執着してるっスから、とネルが言った途端、一護は口元を緩ませた。

「あー、彼奴?いいじゃん…v」

そう話していたら、早速織姫を連れたグリムジョーと出会った。

「また会ったな、死神…」

「グリムジョー・ジャガージャック…v」

―さぁ、俺を楽しませてよ…。

「黒崎くんっ!!」

「女…其奴の怪我を直せ」

―全力でかかってこいよ…グリムジョー…。
―じゃないと面白くもなんともないからさ…。

「そんなモンいらねぇよ…」

「ぇ…黒崎くん…?」

織姫は目を疑った。
目の前にいる、自分の知ってる黒崎 一護が別人のように、恐怖さえ感じる笑顔を浮かべているのだから…。

「グリムジョー…さぁ始めようぜ、殺し合いをさ…v」

「望む所だっ!」

―ズズズズ…

今から楽しいと言う時に、違う霊圧が其れを阻止するように現れた。

「…ウルキオラ!!」

「止めろ、屑。
お前の敵う相手ではない…」

「何だと…?」

グリムジョーの眉間に紫波が寄った。
ウルキオラは一護の前に瞬時に移動して、膝を付いた。

「何してんだよウルキオラ…」

「屑が……此処におられる方は我らが王、一護さまだぞ」

「…何だと…?」

ウルキオラがそう言った瞬間、一護から深い溜息が漏れた。

「ウル…折角楽しもうとしてたのに、其れはないんじゃない?何の為に好きでもないこんな格好してると思ってんの?」

「いえ、なりません。何時も言うようにお体に傷を付けてはなりませんと、言ってる筈ですよ?
其れにネル、お前がついていながら何をしているのだ」

「最初から聞いてくれなかったっス!
やる気満々だったっスから…」

「一護さま、お遊びも程々にして下さい。藍染さまが心配なされます」

頑としてグリムジョーと戦わせてくれないウルキオラに、一護は「分かったよ」とちょっと拗ねたように応えた。

そして、其れをずっと見ていた織姫は目を見開いた侭一護を見つめていた。

「黒崎くん…?」

「何だよ井上」

「王、って、何…?」

「其りゃお前、虚夜宮の王に決まってるだろ」

表情が消えた冷たい視線が織姫を捉えた。
射ぬような冷たい目にゾクリ、と体を震わせた。

「王って……黒崎くん、人間でしょ…?」

「何言ってんだよ。俺はもうとっくの昔に死んでんだぜ?母さんと一緒にな」

そう言って一護本来の姿に戻った。
目の部分には破れた面、首筋には零と言う数字に白い死覇装を着た一護を見て、織姫は信じられないかのように目を見開いた。

「狽チ?!」

「何っつー顔してんだよ…
何、俺の事人間だと思ってたのか?

      馬っ鹿じゃねぇの」

今まで一緒に戦ってきたのに、仲間として見ていたのではなかったのか…?
今の今まで積み上げた物、其れが今、音を立てて崩れた。

今の今まで見てきた、黒崎 一護と言う人物が…。

「俺は死神なんて大嫌いなんだよ…
死神に手を貸してるお前らも、のうのうと生きてる人間も、皆死ねばいいんだ…
この世から消えてなくなればいいんだよ」

一護が言い終わると同時に織姫は、座り込んでいた。

「今まで殺されずにすんだ事を有り難く思うんだな、女」

目には涙を溜めて、今の話を受け入れられないかのように…。

「そんな…」

「座ってるヒマはないぞ、一護さまの傷をお直ししろ。
お前の能力は其の為にあるのだからな」

ウルキオラに逆らう事なく、織姫は一護に近付き織姫の修復能力で、今まで戦った体の傷がなくなっていく。

「屑、そうゆう事だ。他に侵入した死神どもを消してこい。
他の破面たちには一護さまの事はまだ言うな」

「っち…分かったよ」














虚夜宮の奥の奥、ウルキオラとネルと一緒に一護は藍染の所に。其処にはギンと東仙も。

「あれ、どないしはったん?」

「ウルキオラもネルも一緒に…」

「楽しむんじゃなかったのかい?一護…」

「其れが…」

玉座に座る藍染の所に飛び上がり、何時ものように膝の上に座り体を預けた。
其の一護はと言うと、口を尖らせて少し不機嫌で。

「ウルが邪魔した…」

「おやおや、いけないよウルキオラ。
折角の一護の楽しみを奪ったらダメじゃないか」

藍染はそんな不機嫌な一護の頭を撫でてやる。

「我らが王である一護さまのお体は傷付けるモノではありません…」

「ホンマに一護ちゃんは皆から愛されてますなぁ。
でも、次からは邪魔せん方がえぇと思うで?ウルちゃん」

「一護さまが本気で戦うなら…」

「一護が本気を出したら誰も敵わないよ。
さぁ、一護の機嫌は私が直しておくから、ウルキオラは入ってきた死神たちを排除しに行っておいで」

「御意」

ウルキオラは其の場から姿を消した。

「おいでネル」

ギンの横に立っていたネルを呼び、腕を広げる。
何の躊躇もなくネルは一護の腕の中に飛び込んだ。

「何も聞いてなくて、一護さまが死神たちと一緒にきた時は本当に吃驚したっス…」

「だから面白いんだろ!其れなのに、ウルときたら…」

余程ウルキオラに邪魔された事が一護の機嫌を悪くさせているのだろう。
前々回、前回のグリムジョーとの戦いで負けた振りをした事、其れを今回でリベンジして勝つ、そんなシナリオだった筈が思わぬ展開になってしまった。

不機嫌な一護を見て藍染は優しく頭を撫でた。

「そうだね。今度、一護専用の破面を作ってあげるよ」

「本当?」

「嗚呼、約束するよ」

すると一護はにこりと笑っていた。
一護の機嫌が少し治った事にネルも嬉しさを隠しきれず、一護を見上げてにっこりと笑っていた。
そんなネルに…

「そう言えばネル、言いそびれたけど…見ない間に仮面と顔に傷が入ってるけど…?」

「こ、此れはっスね…えっと…其の…」

ネルは頭に付いてある仮面と眉間の傷を手で隠した。

「ま、其の事は死神たちを殺した後でいーや。理由はちゃんと話してもらうからな?」

「…はい…」

ネルの小さな体を抱いて、藍染と一緒に、目の前に映るスクリーンを見つめた。

「ルキアが死んだか…v
後はチャドと恋次と雨竜…何処までヤれるか楽しみだね、惣右介…」

「…直ぐ終わるよ。可愛い私の十刃たちが死神如きに殺られる筈がないからね」

虚圏に乗り込んできた愚かな死神たちの醜い姿を目に焼き付ける。

「まぁね。
死神どもに実力の差を存分に分からせてやるんだよ、十刃たち…v」

「一護さまもお人が悪い」

「ふふっ…何言ってんだよ要。
此れは惣右介の考えだよ?
全死神を絶望の淵に立たせて、地獄の底に突き落とすって言うシナリオのねv
俺はただ、其のシナリオの内容をちょっとだけ書き換えて遊んでるだけだよ」

クスクスと笑いながら言う一護に東仙は深い溜息を付いた。

「だから言っているのです」

「そない堅い事言わへんでもえぇやろ?」

「そうだよ要、少しくらい面白みがないと生きてても楽しくないだろう?」

「其れも、そうですが…」

死神たちが次々に倒れていくのを大きなスクリーンで観戦していた。

―やっぱり弱いなぁ…死神。
―虚夜宮の中層部にも来てないし…。

「あらま、全滅。
たった4人で俺たちに勝てるとでも思ってたのが間違いだったね…」

「さぁ、破面たちを此処に集結させようか。
王を紹介しなければいけないからね…」

「あ…そうだv」

「一護さま…?」

何かを思い付いたのか、一護はニヤリ、と笑みを雫した。
そして、次の瞬間、虚圏に乗り込んできた時の服装に変わっていた。

「一護さまの悪いクセっス…」

「藍染はんも何か言うたらどうですか?」

「私が言っても聞いてはくれないよ」

クスクスと笑って、藍染は一護の頭を撫でる。

「どんな反応するか楽しみ…v」














そして、集まった破面たちは一護の姿を確認した途端、

「「博神っ?!」」

「「藍染さまっ!」」

と声を上げた。

「普通なリアクション…。
さてネル、此の傷は?どうしてこうなったのかな?」

「其の…昔、付けられたっス…」

「誰に?」

「今の十刃の中に…」

「ふ〜ん…」

一護は無表情になり、集まった十刃たちの顔を眺めた。
其れは冷たく、突き刺さるような視線…。

藍染の膝の上から立ち上がり、一護は腕に抱いたネルの傷を指でなぞる。

「テメェらの中で、俺の可愛いネルの、此れ、付けたの誰…?」

広い空間の中、一護の声は重くそして冷たく響いた。

「俺だよ…其奴の頭割ってやったのは」

bTのノイトラとか言う破面。
声を上げたノイトラに、一護は静かに目を細めた。

…テメェか…

段々と一護が不機嫌になっていくのを、間近で見ているネルや藍染、ギンや東仙やウルキオラは其れを感じていた。

「ゴメン、ネル待ってて」

「一護さま…」

地面にネルを下ろして、一護は口を開く。

「ネル、お前は俺のお気に入りなんだから、怒るのは当然だろ?」

にっこり笑って、次の瞬間、姿が消えたと思ったら下の方で物凄い音が…

―ガツッ

―ズザザザザッ…

一護はノイトラの目の前に現れた瞬間、足を地面に付ける間もなくノイトラの顔面を蹴り付けて着地した。
 

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