ノマ一護←藍染
必ず手に入れてみせる。
彼に初めて出会った時に、そう決心した。
一目惚れだったのかな?
だから、尸魂界を去る時に唾を付けていたんだよ。
私と言う存在を彼の中にインプットするように…。
「彼、ええ感じに育ってますやん?」
「そうだね」
初めて出会った時は私の足元にも及ばない実力だった彼が、今では十刃さえも…。
「もうそろそろかな…」
「拐いに行きますか?」
「いや、まだだよ」
「焦らすのホンマ好きやね(笑)
拐うんならさっさと拐ったらええんとちゃいますの?」
「焦らしてはいないさ。
まだ時期じゃないのだよ」
だが、確実に彼を私のモノにする時はもう其処まで来ているのだから。
焦る必要はない。
井上 織姫を人質にすれば、彼は必ず虚圏に乗り込んでくると読んでいた。
仲間想いな彼の事だから浦原にでも頼んで乗り込んでくる、と。
案の定、彼はたった5人で虚圏に乗り込んできたのだ。
無謀とも言える。
彼は別として、人間がクインシーが破面に勝てるとでも思っているのだろうか?
ましてや副隊長が2人。
私が作った破面も甘く見られたものだよ。
「ウルキオラ」
「は」
「彼を此処まで誘き寄せるんだ。
あまり傷を付けない程度にしておいてくれたまえ」
「御意」
綺麗な彼に傷は似合わない。
彼は綺麗な侭が一番だ。
彼を汚すのは、此の私…。
「空座町は後回しやね」
「もちろんだよ」
玉座に座って彼を待つ。
「…黒崎くんに、何をするつもり…」
「……」
「答えて!」
井上 織姫が声を上げる。
私と同じように君は彼に好意を寄せているのだろう?
だが、其の想いはもうムダだ。
「私は彼が欲しいのだよ」
「欲しい…?」
何の為に君を拐ったと思っているのだろうか。
此の為の君だとは理解していないなんて…。
「黒崎 一護を私のモノにする為の君なのだから」
「…モノ…?どうゆう…」
「まぁ見ときや。
何れ一護ちゃんが此処に来るさかい、其の目で見とったらえぇねん」
「其れでは可哀想だよギン。
説明しないと理解してもらえないみたいだから」
「話しても?」
「嗚呼、構わない」
話した所で彼が私のモノになる事はもう確定してあるのだから。
「せやったら…
君は一護ちゃんを虚圏に誘き寄せる為に連れてきた餌や。
一護ちゃんは必ず君を助けに此処まで来る。
ホンマは現世でも尸魂界でも連れ去る事も出来んねんけど、普通に連れ去ってもつまらへんやろ?
其れに普通に連れ去っても一護ちゃんは抵抗するやろうし、っちゅう事で考えたんが誰かを拐って乗り込んで来た所に餌を、要は一護ちゃんを大人しくさせる為に君を使った訳や」
井上 織姫の顔が段々と青ざめていく。
「…そんなっ」
「私は黒崎 一護を愛しているのだよ。
だから、彼は私が頂く。
残念だが其れはもう決定事項だ」
必ず彼は私のモノになる。
「貴方たちは男同士でしょ…」
此の少女はまだ何も知らない子供だな。
「男同士だから何だと言うんだ?」
「…」
「愛してしまった人の性別を問うとは、愚問だな。
男が男を好きと思う気持ちの何処が不思議かい?
世の中何万と同じような人間がいるんだ。
愛を語るのに性別は不要だよ、井上 織姫」
「…」
顔が蒼白した井上 織姫。
そんな彼女に目をやる必要もない。
私は彼が来る事が何より楽しみなのだから…。
泣き崩れようが、私には関係ないのだよ。
君の役目はもう既に終わりを迎えているのだから。
「来たかな」
玉座の間に、ウルキオラと私が求めていた人物がやってきた。
「ようこそ、虚夜宮へ。
歓迎するよ黒崎 一護くん」
「迫武……!井上!!」
「黒崎くん来ちゃダメ!
早く此処から逃…ン゛ン!?」
ギンは素早く井上 織姫の口を手で塞ぐ。
「邪魔したらあきまへんよ?
此れは藍染はんと一護ちゃんの駆け引きなんやから」
そう。此れは駆け引き。
逃げられる事のない駆け引き。
「さて、黒崎 一護くん。
1つ先に聞いておくが…君は此処へ何しに来たのかな?」
「井上を助けに来たに決まってんだろ!」
そう。
君は其れでいいんだ。
「なら…
私は君が欲しいのだよ」
「欲しい…?」
「嗚呼、そうだよ。
もし此の話を受け入れてくれるならば井上 織姫も君の仲間にも…」
「…手出しはしねぇってか?」
話が早くて助かるよ。
仲間の為なら何だってする、そうゆう君だからこそ逃げられない駆け引きなんだ。
「嗚呼」
「狽ン゛ンーーー!!」
彼の目が決意を見せる。
「分かった…」
「君ならそう言ってくれると信じていたよ、黒崎 一護くん。
ギン、彼女を…」
「はいな」
さぁおいで。
私の愛しい子。
ずっと待ち兼ねた時が今…。
「井上やルキアたちを現世に戻ってやってくれ」
「分かっているさ」
でもまだやり残しがある。
井上 織姫を野放しにしておくつもりは更々ない。
念には念を…。
「井上 織姫1つ言い忘れた事があったよ。
君同様、彼を助けに来るのは構わない。
だが、彼の気持ちを裏切るような真似だけはしないでくれたまえ」
こちらとしては、助けに来ても来なくてもどちらでも構わない。
助けに来た所で一番の戦力である彼なしでどう戦う?
隊長格を連れて来るかい?
其れもいいとは思うが、きっと無駄な足掻きだろう。
あの山本総隊長が其れを許すとでも?
彼を助けになら許可を出しても可笑しくはないか…。
「井上」
「…」
「そうゆう事だ。
俺が大人しくしてれば、お前たちには手出しをしねぇって言葉は信用してもいいだろう。
だから、絶対来るんじゃねぇ」
「狽チ!?」
本当、いい子だ。
さて私も最後の仕事に取りかかるとするか。
「ギン、頼んだよ」
「任せといて下さいな」
井上 織姫の記憶はギンに任せるよ。
私は手に入れた彼を、少しずつ汚さなくてはね…。
―一護Side―
藍染 惣右介。
此の男は一体何を考えているんだろう…。
井上を助けたいなら…そんな事を言われるなんて思ってなかった。
俺が大人しくしていれば…
「…約束はちゃんと守るんだろうな?」
「君や死神次第だよ」
皆が傷付かなくて済む…。
「さぁおいで、一護」
「…」
俺だけ、我慢すればいい事なんだ…。
end...
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