黒幕一護

 
薄暗い玉座の間に2つの声。

クスクスと笑いながら弾む会話が其処にはあった。

「じゃあ、頼んだよ?」

「嗚呼、任せなさい」

橙色の髪の男と茶色の髪の男は白い死覇装を身に纏い、腰には刀が納めてある。

「くれぐれも、サブシナリオから外れた行動はしないように、ね?」

「努力はしてみるよ」

「努力なんだ…まぁいいや」





















「一護!一護!」

「何だよルキア」

黒崎 一護は用事で瀞霊廷へと駆り出されていた。

「虚が現れた!」

「マジかよっ」

「すぐに向かうぞ!」

今回、流魂街の外れにある小さな村が虚に襲われたらしく、わざわざ現世から一護が呼ばれたのだ。

他の死神たちは何かと忙しく、人手が足りないのだと。
だから仕方なく。

「尸魂界にも虚なんて出るんだな」

「たわけ!
此処は死者の魂の集まる場所なのだぞ?
流魂街に住む人々が虚になるのはそう珍しい事ではない。
其れと、違う方法で虚が発見される場合もある」

「違う方法?何だ其れ」
「誰かが意図的に、と言う意味だ」

「…」

ルキアの言う意図的の意味を理解した一護は顔をしかめた。

「取り敢えず急ぐぞ一護」

「嗚呼」





















現場へ急行し、虚退治を難なくこなした。

「尸魂界も大変だな…」

「何故そう思う?」

「だってさ?
現世にも尸魂界にも虚退治で、人手不足ってのは嘘じゃなかったんだなって」

「現世でも国や大陸が幾つあると思っているのだ!
本当に何も知らないんだな貴様は…」

「へぃへぃ、どうせ俺は何も知らないですよぉ…」

「全く。拗ねる暇があるならとっとと帰るぞバカ者」

はぁ、と溜息を付きルキアが背中を向けた瞬間、一護は斬月を握っていた。

「…まだだ」

「一護?」

姿が見えなくなったと思った次の瞬間、大木の影から虚が1体。

「此奴がまだ残ってたみてぇだ」

「煤cっ!?」

クスリと笑って虚の頭に斬魄刀を刺す一護を見て、ルキアは目を見開いていた。
其れと、ゾクリ、と体が震えた。

見間違いかと思い、目を擦りもう一度一護を見る。

「取り逃しがなくてよかったぜ…」

「……」

普通の一護だった…。

「(今のは…一体何だったのだ…?
いや、考え過ぎだな…)」

「帰るか」

「あ、嗚呼…」




















瀞霊廷へ戻って来ると、何だか慌ただしい様子だった。

死神たちは急ぐように何人も走っていて、一護は1人の死神に口を開いた。

「そんなに慌ててどうしたんだよ!」

「奴らが現れたんだ!」

「奴ら…?」

「瀞霊廷内に虚でも現れたのか!?」

「違う…虚よりタチの悪い連中だよ!」

其れを聞いた一護とルキアは訳が分からない侭、走り出していた。

「一護…此の霊圧はっ」

「嗚呼っ…藍染の!」

大罪を犯した犯罪者、死神を裏切り虚側に付いた男たち。
藍染 惣右介と市丸 ギンと東山 要。

「奴らと言っていたな…藍染だけではなさそうだぞっ」

「嗚呼…」

ルキアの後ろから追う一護は、何故か不適に笑っていた…。

















瀞霊廷内、双極の丘。
其処には護挺十三隊の隊長副隊長たちが駆け付けており、先に駆け付けていた死神たちは既に地面へ倒れていた。
中には副隊長の姿も…。

其の先に死神とは異なった白い死覇装を着た人物が2人いた。

「藍染 惣右介!」

「おや君は…」

「僕の名前は覚えてへんの?」

人物の名前を叫ぶと、藍染とギンの瞳が一護に向いた。

「久しぶりだね、黒崎 一護くん」

「…v」

「何しにきやがった!」

斬魄刀を握り、一護が前に出る。

「恋次も一角も…やられたのか…!」

「一護!」

前に出た一護の隣にルキアが立つ。

「ルキア…」

「1人で戦う奴が何処にいる」

「そうだったな」

「藍染はん、何や騒ぎになってきたんとちゃう?」

「其れは始めからだろう?」

「ま、其らそうや」

斬魄刀を持つ死神たちが藍染たちに立ち向かっていくが、いとも簡単に倒されてしまう。

「其れよりギン」

「分かってますよて。
あの子が邪魔なんでっしゃろ?」

にっこりと笑って、刀をルキアに向けた。

「悪ぅ思わんでや」

「何がい…いた…」

ルキアは既にギンの斬魄刀の餌食となっていた。

横腹に刺さった斬魄刀。
刀と体の結合部分からは真っ赤な血が服を染め、体を貫通してる先端部分からはルキアの血が流れ、ポタポタと地面に落ちていた。

「ルキア!!」

「藍染貴様!」

藍染を見てみると、他の死神たちの相手をしていた。

「藍染はん、本来の目的を忘れてるんとちゃいますか?」

「そうだったね…」

そう言って藍染は一護に近付き、そっと何かを呟いた。

゛      ゛

一瞬の出来事だった。
藍染は一護に手刀をし、一護はゆっくりと倒れ藍染の手の中に納まっていた…。

「さぁ、欲しいモノが手に入ったから長居は無用だ」

「ほんなら帰りますか?」

「嗚呼」

意識を失った一護の手から滑り落ちた斬魄刀は地面に落ち、一護は藍染に抱えられギンが一護の斬魄刀を拾った。

「黒崎っ!」

「一護っ」

「藍染!黒崎を離せっ!」

「藍染っ!」

「黒崎ぃー!!」

緩んだ口元に、死神たちは顔を歪めた。
絶大な力の前に無力さを感じさせられ、屈辱を味わせられた。

呼びかけに一護は応じる事が出来ない。
其れも其の筈。
気を失った侭、抱えられているのだから。

そして藍染は気を失う一護に顔を近付ける。

゛     ゛

ゴニョゴニョと何かを囁いているようなのだが、距離があり何を言ったのか此処からでは内容まで聞き取れる事は出来なかった。

其の後、藍染は笑っていた。

「…では、彼はもらっていくよ」

「さいなら」

黒崎 一護が藍染 惣右介と市丸 ギンにより拐われた。

堂々と瀞霊廷に現れて…。

多くの目撃者の目の前で
多くの犠牲者を出し

一護を拐っていった。

ガルガンタが閉まるまで見えていた藍染 惣右介は不適に笑っていた。
一護を抱えながら…。

完全にガルガンタが閉まると、

「…」

「一護ちゃん、名演技ですな」

「完璧だからね」

クスクスと笑って会話する中、藍染の腕の中にいる一護が瞼をゆっくりと開ける。

「惣右介」

「ん?」

「僕もいてますよて」

「ギンもお疲れ様」

「はいな」

垂らしていた腕を藍染の首に巻き付けると、一護は頬にキスを送る。

「ただ今」

「お帰り、一護」

「お帰り一護ちゃん」

妖艶な笑みをこぼし、藍染は一護を下ろす。

そして、着ていた黒い死覇装の胸ぐらを掴むとマントさながらにバサリ、と脱いだ。
まるで早着替えのように、一護は一瞬で白い死覇装を身に纏っていた。

「さぁ、久しぶりに元の姿に戻ろうか」

そう言って一護は左の手首に嵌めていたブレスレットを外すと、段々と髪の毛が背中辺りまで伸び、目は黒く染まっていった…。

「やはり、本来の姿の方が美しいよ」

「ふふ…有り難う。
どうも死神の格好は地味で嫌いなんだよね。
此れみたいに白くなきゃ、紅い血は映えないし?
殺したって気にならなくて」

「其の言い方やと、あっちで何人か殺してきたん?」

「当たり前な事を言わないのギン。
死神なんて、死ねばいいんだから…」

目を細めて口元を緩める。

「其れにしても…」

「ん?」

「合わせるのはよかったんだけど…
あんな所であんな事言ったりするからマジで笑っちゃいそうだったよ」

゛助けを求めてみるかい?゛

「そっちの方が面白いかと思ったんだけどね」

「そんな事する訳ないでしょ。
此の俺が助けてって、死神に対して言うわけないじゃん」

其れこそ屈辱だよ、とクスクスと笑っていた。

「面白いと思ったのだがね」

「藍染はん、其ら一護ちゃんのキャラやありまへんわ」

「(隊長、副隊長たちが必死に叫ぶ声を聞いて、正直笑いを我慢するのが辛かったなぁ。
此の場で笑い転げたかったよ出来るなら)」

虚夜宮に到着すると、一護の帰りを待っていたかのように玉座の間には破面たちが集合していた。

「皆ただ今」

「「お帰りなさいませ一護さま」」

頭を下げて挨拶する中、タタタッと駆け寄り、飛び付いてきた破面がいた。

「お帰りなさいっス一護さま!」

「ただ今ネル」

一護お気に入りの小さな小さな破面。
ネリエル・トゥ・オーデルシュヴァンクだ。

「此れからずっと虚夜宮にいるっスか!?」

「嗚呼、いるよ」

そう一護が言うとネルは嬉しそうに笑っていた。

「なぁなぁ一護ちゃん。
今から何するん?
折角帰ってきたんやから、1つや2つあるんやろ?」

「今日のはまだ余興。
惣右介に連れ去られた俺は記憶を改造されて、死神たちの事を完全に忘れてしまうんだ。
そして、破面としての俺を惣右介たちと一緒にいる所を死神を殺す所を、見せてあげるのさ。
なるべく早くがいいな。
俺が今、惣右介に連れてかれて多少ショックを受けているだろうから、其処からまた絶望を与えてやるんだよ」

絶大な力を其処で見せ付けてやろいじゃないか…。

手を抜いていた分

思いきり暴れてあげる…。






end...

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