偶にはね…2
「此の奥に何があるんだ…?」
「此れを抜けると…」
道を遮る大きな葉を手でこじ開けると、映ってきた光景に鳴門は目を輝かせた。
「スッゲェー!俗に言うオアシスってヤツ?!」
初めて見たー!とキャッキャ、と騒ぐ鳴門の気持ちも分かる。
こんな砂漠に、オアシスがひっそりと息を潜めているなんて…。
周りは木や草で覆い尽くされていて、其の中心には、池や沼よりも広く深い場所に湧水が溜まり塩分を含んでいない淡水は、葉と葉の間から降り注ぐ太陽の光でキラキラと輝いていた。
「此処に来るには難しくてな、今の所、俺と鳴門しか知らない場所だ」
「スッゲェ綺麗だな…此処に連れて来てくれて有り難な我愛羅!」
にっこり笑う鳴門の顔に釣られ、我愛羅の顔にも笑みが零れた。
「涼しい場所は此処しか知らないから」
此処が砂漠の中にあるなんて信じられないくらいに涼しくて、安らげる。
「あ〜ぁ、木の葉にもこうゆう場所があればいいのに…」
「木の葉にはいらない」
「何でだよ…」
「其れじゃ鳴門と2人なりになれはせんし、あのインチキが空気を悪くして安らげる訳がない」
我愛羅がそう言うと、鳴門は深い溜息を付いた。
何でそう仲が悪いんだろうか?
協力する時は息ピッタリなのに…と頭の中で我愛羅と昴のいがみ合う映像を再生させた。
「仲のいい2人も見てみたいんだけど…」
「見ても面白くないぞ。気持ち悪いだけだ」
「そう?」
偶にはそんな2人の姿も悪くないんじゃないか?なんて思って、クスリ、と鳴門は笑う。
「鳴門も鳴門だ。2人きりの時ぐらい奴の名前を出すな…
気分が悪くなる」
あちゃぁ拗ねちゃった…と頭の中で呟いて苦笑した。
「悪りぃ悪りぃ」
静かな其のオアシスを眺めながら、我愛羅と2人でのんびりと過ごした。
砂の里に帰ってきたのは日が暮れていた。
夕方ぐらいになると昼間に感じた暑さも少しは和らいでいた。
「へぇ、此処が我愛羅ん家かぁ」
木の葉とは違う変わった造りに興味を示し、キョロキョロと家の中を見渡しながら、我愛羅の後を追う鳴門。
「広くて適わん…」
「まぁ、俺も其れには同感だよ…」
「あ、鳴門は俺の部屋ともう決定してある」
我愛羅の言葉に、鳴門は一瞬止まった。
「…へ、何で…」
「埃まみれの部屋に鳴門を寝かせる訳には行かないだろう」
「…そうなんだ。悪いな我愛羅…(誰も掃除してくれないのか…?うちは隈なく綺麗だけど…)」
折角鳴門が自分に会いに来たのだ。
しかも、あの忌まわしい星影もいない。
存分に鳴門を堪能出来るではないか、と少々疚しい事を考える我愛羅がいた…。
あの後、皆で夕食を済ませ、今は我愛羅の部屋に来ていた。
「鳴門は何時までいられるのか?」
「木の葉も心配だし、明日になったら帰るよ…(其れに昴も来るだろうし…一番の問題点だよな此れが…)」
鳴門がそう言うと、我愛羅は表情を暗くし、落ち込んだように口を開いた。
「明日、か…そうか。仕方ないな…」
「あははっ!そんなに落ち込むなって!また、我愛羅が遊びに来ればいいだろ?
うちは何より佐助とか(昴とか)鹿丸とか(昴とか)ばぁちゃんとか(昴はかなり)煩いからな…仕方ないって(汗)」
早く戻らないと昴が木の葉に来てしまう。
そんな考えが頭の中に根強く残る。
忘れろ、そんな事出来る訳がないっ!相手はあの昴だ。
我愛羅の所に会いに行ったと言う事が知れれば、昴は間違いなく我愛羅に喧嘩を売るに違いない。
其れは是非とも避けたい。
「さて、もう遅いし寝ようか?」
もちろん、同じベッドで。
並んで寝転ぶ2人。
そして、鳴門を抱き締める我愛羅…。
「…(アハハ…やっぱり…)」
「おやすみ、鳴門…」
「おやすみ…我愛羅…」
目が覚めた時、我愛羅はまだ鳴門を抱き締めた侭だった。
そして、我愛羅を起こし、朝食を済ませ、
「門まで送る」
「否、此処でいいよ。土産買って帰らないといけないし」
そんな鳴門の申し出もあっさり却下され、2人で土産を買って、門まで見送ってもらった。
「ふぅ…」
木の葉に到着し、門を潜ろうとした時…
「なぁ〜るぅ〜とぉ〜?」
「狽チ(ギクッ)…」
其の声は正しく…
「あ、昴…」
「今まで何処行ってたんだ…?」
昴の後ろにいた参謀の桜が申し訳なさそうにゴメンと、手を合わせていた。
「はぁ…」
やはり、こうなるのか…そう思った鳴門は溜息を付いた。
折角帰ってきたばっかりなのに…。
「昴…今日は?」
「もちろん、泊まるぞ」
あれから数日後、またも木の葉の門には火影を見送る参謀たちの姿があった…。
「行ってくる、鹿丸」
「御意」
我愛羅と同じように荷物を持った佐助を暗部に、押さえ付けさせ連行させた。
「鳴門ぉーーーーー(AДA)」
「…火影様」
「土産もちゃんと買ってくる」
そして、鳴門は旅立った。
星の里へ…。
「…偶にはね、こうゆうのもいいか…」
クスリ、と笑みを零した。
End...
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