偶にはね…我鳴

 
晴れ晴れとした穏やかないい天気の日。

もう直ぐ秋を迎える時期になると言うにも関わらず、今日は燦々と照り付ける日差しが窓から差し込んでいた。

「…暑い」

蒸し暑い部屋の中、クーラーを付けていてると言うに、後ろから照り付ける日差しで全然意味をなさなかった…。


暑い…暑過ぎる…。


額に汗を掻き、髪の毛がへばり付いていた。

「無理っ…暑い…」

我慢出来ず、鳴門は椅子から腰を上げて日陰になっていたソファに雪崩混む様に座り込んだ。

「…ふぅ…」

今まで日に当たって暑くて仕方なかった背中が、日陰に在ったクーラーのよく効いた中に置かれた革張りのソファが段々体の熱を冷ましてくれた。
今まで暑くて仕方しかった背中も、ひんやり冷たくて此の侭瞳を閉じると直ぐにでも夢の中に行けそうな気がして…

「ちょっと休憩…」

そっと瞳を閉じる…。
が其れも束の間…

「…?」

猛スピードで近付いて来る参謀の気配…。



― ダダダダ… ―

案の定。
部屋の前で止まり、勢いよくドアが開かれると其処には

「火影様大変です!!」

「どうした桜」

息を切らした参謀の桜が入って来たのだった…。

「大変です!!」

「分かったから。何が大変なんだ」

同じ事を二度も言うな、と言う様な表情をした鳴門。

「砂から文が届いていてっ…!!」

差し出された一通の文。
其れを受け取り、中身を確認し出した鳴門は

「……………」

其の内容に段々と眉間に紫波を寄せ、手紙を静かに折り畳む。

「ついに…来た、か…」

「…火影様、どうなさるおつもりですか…?」

「行くしかないだろ?…相手に失礼だし…其の相手も相手だ…」

大きく溜息を付いた鳴門。

「返事書いて飛ばそ…」

やっと涼しくなった背中をまた暑い日差しに向けた…。














其れから数日後の事…。

木の葉の門前では、荷物を抱えた鳴門と、補佐、参謀等がズラリと勢揃いしていた。

「じゃあ行って来る」

「「お気を付けて下さい」」

一斉に頭を下げる見送る者の中に一人だけ…

「さ…行こうか鳴門」

「…って何してんだよお前」

そう鳴門が言葉を向けた相手は佐助。

「何って、一緒に行くに決まってるだろ?」

よく見たら、佐助の手には荷物が…。

「何でお前も一し…」

「あの変態の所に鳴門一人で行かせてたまるか!!」

「否、お前が其れを言うか…?」

呆れて溜息を零し、鳴門は鹿丸に視線を合わせた。

「…ヤレ…」

小さく呟き、其の言葉に頷いた鹿丸が手を上に掲げた。

すると………



― シュッ… ―

― ガシッ! ―



「秤スするんだ!?」

何処からともなく現れた暗部が2名。

「「佐助さんお願いですから大人しくして下さい!」」

其の2人が佐助の腕をガッシリと掴んで離さなかった。

「火影様が出発して、帰って来るまで…頼んだぞ」

「「御意っ」」

「離せって…あああーー!鳴門ぉぉぉぉぉーー(AДA)」

佐助の悲鳴に似た叫び声は、段々と遠ざかって行った…。

「…ふぅ…」

「では、仕切り直して。お気を付け下さい」

「嗚呼、行って来る」

「…火影様っ…」

眉を下げ、悲しそうな表情で声を出したのは参謀の桜だった。

「桜…分かってるって『土産』はちゃんと買って帰るから…(汗)」

「♪楽しみに待ってますv」

先程の表情とはコロッと変わり、にっこりと笑っている桜…に対して鳴門はまたも溜息を零した。

「俺がいない間、頼んだぞ」

「「行ってらっしゃい!」」

「あ、後…執務室の窓にカーテン付けておいて」

そして 鳴門は木の葉を後にした。














鳴門が向かう先。
其れは 砂隠れの里…。

何故かと言うと、其れは鳴門宛ての手紙に全てが…










前略、元気にしてるか?
手毬も勘九郎も鳴門に会いに行く俺を怒鳴って来るのだ。

『仕事して!』と毎日言われ鳴門に会いに行けない俺を許してくれ…。

毎日机を前にして…

鳴門に会ってもないのに仕事の精が出る訳がない…

はぁ………鳴門に会いたい…










此の文を受け取ってから、全ては始まった…。
中々 鳴門に会いに行けない我愛羅が鳴門へと文を出し、鳴門が文を返す。
其の繰り返しで、


寂しい…

鳴門に会いたい!

会いたい!

会いに来て!!!!


って、言う内容が等々来てしまい…。

鳴門は木の葉を離れ、遠く離れた砂隠れの里へと出発したのだった。

無視なんて出来る訳がない。
だったら大人しく…そんな考えで昴には内緒で。
此れまた、昴が知ったら知ったで

『何で俺の所には来てくれないんだ!』

絶対拗ねるであろう…。

今度は星隠れの里へ、出発!とゆう様な事になるのかもしれない…。

「…でもまぁ、何時も来るからなあの2人…偶には俺が会いに行くのも、礼儀ってヤツか」

くす、と笑みを零し鳴門は砂隠れへと急いだ。














其れから数時間掛けて砂隠れへと到着した鳴門。

「久しぶりだな…」

砂隠れの里の大きな門を見上げる。
砂漠の中にある砂隠れは、かなりの暑さで…。

「でも…こんな時期に来るんじゃなかったかも…」

と小さく呟くと、門の前にいた門番が鳴門に気付き駆け寄って来た。
「此れは火影様っ!!」

「お一人で来られたんですか!?」

「まぁ…我愛羅と約束してるのに誰か連れて来るのは無理だろ…で…我愛羅いる?」

「はい。風影様は執務室に御座います」

「そっか、暑い中ご苦労様」

通行許可書を差し出し、鳴門はにっこりと笑う。

「「はい…//」」

横を通り過ぎてゆく鳴門にほんのりと頬を染め、其の小さな背中を見つめていた…。

「火影様って、可愛いよな…//」

「嗚呼…//でも其れ、あの2人の前で言ったら…」

「……死刑…だな」














あまりに暑く、ダラダラと歩くより走って涼しい部屋に一刻も早くっ!
そんな気持ちが強く鳴門は素早い動きで屋根の上を移り移りし、執務室へ急いだ…。

我愛羅に会いたいと言うよりも、早く此の暑さから逃れたい一心で……。






「我愛羅っ!」

執務室のドアを開け、名を叫ぶ。
其処にはもちろん 我愛羅と手毬と勘九郎の姿が在った。

「鳴門!」

椅子から立上がり、直ぐ様鳴門へ近付き…
「…ちょ…我愛羅?」

鳴門を抱き締めた…。

「やれやれ…」

「見せてくれるじゃん…」

我愛羅の大胆な行動に手毬も勘九郎も思わず苦笑い…。

「会いたかった…」

小さく呟やかれた其の台詞に、目を細めた。

「…分かったから。取り敢えず仕事終わらせろよ、な?」

我愛羅の背中をポンポンと優しく叩くと名残惜しそうに離れてゆく。





砂隠れの執務室も木の葉と同じ様に、我愛羅が座る机の後ろには窓。
其の窓から差し込む暑い日差し…。

其れなのに……

「手毬、判子を頼む」

我愛羅は汗一つ掻いてもなく涼しい顔をして仕事しているのは何故だ…?と鳴門は不思議で堪らなかった。

「我愛羅…暑くないか?」

木の葉と同じに我愛羅が座る後ろには大きな窓があり、其れは1つではない。
2こ3こ、と…。

「暑い?今日は涼しい方だぞ」

「…へ?……涼しい方…」

日陰でもこんなに暑いと感じてしまうのに、涼しいと言う我愛羅の気持ちが分からない…。

「今日は偶々涼しいだけだ。何時もは此れより暑いが」

砂の奴らは凄い、と思った瞬間だった。

こんなに暑い日を砂では涼しいと感じる体感温度を、鳴門は理解出来なかったのだ。

「木の葉より暑いのに…」

土地ガラとは凄いものだ、と思い知らされた。

「涼しいとか有り得ねぇ…」

「鳴門は暑がりなのか?」

冷たい茶を出してくれた手毬が鳴門に問う。

「暑がりではないけど、普通に此処は誰でも暑いって言うって」

茶を出してくれた手毬に礼を言って其の冷たい茶をゴクリと喉に通す。

「あー、美味しい」

生き返るぅ…なんて言いながら、汗でへばり付いた前髪を手で掻き揚げた。

「…」

「我愛羅」

「…」

「今日の所は此れで勘弁してやるよ。
何処でも行っておいで」

そう手毬が言うと我愛羅は直ぐ様椅子から立ち上がり、手毬と擦れ違いざまに小さく「すまない」と呟いた。

「行こう、鳴門」

「…何かよく分かんねぇけど。涼しい所がいい」

「分かった」

砂の執務室を後にした。











「今日はあのインチキがいないから安心する」

「インチキて…昴には今日我愛羅ん所行くって言ってないし」

行くと言ったら後が怖いが、とそう付け加えた。

「で、何処行くの?」

「砂の里特有の、涼しくなれる場所だ」

涼しくなれる場所…?と頭に疑問符を付け、鳴門は首を傾げた。
まぁ此の我愛羅が涼しくなれると言うから其の言葉を信じようと、鳴門は黙って我愛羅に付いて行った。














砂の里を離れ、暑い砂漠の中を走る2人。

此の暑さに体力は段々と消耗され、額には汗が。

「まだ〜?暑くて死にそうなんだけど…」

「もう直ぐだ…ホラ、見えて来たぞ?」

鳴門たちの先には砂漠の中に生える小さな森、と奇妙な光景。

「こんな砂漠に、よく木なんか生えてんな…」

「だから言っただろ、特有だと」

其の小さな森の中へと入って行くと、暑い日差しは木の葉で遮られ、意外と涼しかった。

「まぁ此処なら…」

「見せたかったのは此の森じゃないくて、此の奥だ」

日陰の涼しい道をゆっくりと歩いていると、森へ入った瞬間に感じた涼しさよりも、冷え冷えとした空気が漂ってきた。
 

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