此の花に込めた想い 昴鳴
「花言葉か…」
切っ掛けは一札の本…。
「へぇ…」
其の本に魅入ってしまって、気付けばもう閉店の時間になっていた…。
「また、明日も来よう…」
「鳴門!」
聞き慣れた声…。
振り向くと其処には想像していた人物が大きく手を振って走って来る。
其れに気付いた鳴門はやんわりと瞳を細めた。
「…昴」
星隠れの里の一件を終え、鳴門達は木の葉へ帰還した。
昴、北斗、水羅(みずら)と一緒に。
木の葉に連れて来た理由。
其れは、水羅の病に関わる事。
星の修行で病に蝕ばわれた体を治す為にだ。
五代目火影の綱手にじかに鳴門が頼むと綱手は、喜んでやらせてもらうと言ってくれて、昴達三人は木の葉に滞在する事となったのだ。
「此処にいたのか…っ…探したぞ?」
「今から水羅の見舞いに行こうと思ってよ。ほら」
そう言って鳴門は先程山中家の花家で買って来た花を見せた。
『あら鳴門じゃないー?どうしたの アンタが花屋に来るなんて、珍しいわね?』
『否、今から水羅の見舞いに行くから花でも持って行こうと思ったんだってばよ』
『あ〜、お見舞い?其れなら此れを持ってあげたら喜ぶわよー?』
『此れ、何て言うんだってばよ?』
『アスターって言うの。綺麗でしょ?此れは紫だけど 他に白とか、赤もあるわ!』
『じゃあ、此の紫を三本もらうってばv』
『毎度あり!』
鳴門の持って居た花に目を向けると昴は優しく微笑んだ。
「其れ、アスターだよな」
「何。昴知ってんだ此の花の事…」
「嗚呼。星隠れでは其の花の事を『星の花』と言うんだ。本当の名前はアスターだけど、星隠れにしか咲いてない事から『星の花』って俺達は言ってた」
「そうだったんだ…へぇ。『星の花』ねぇ…何か星隠れにピッタリだな」
くすり、と鳴門は笑った。
其の後、フルーツも買い、鳴門は水羅のいる病院へと足を運んだ。
コンコンっ…
「はい」
声を聞くと、鳴門はドアを開けた。
「水羅!」
「探して来た」
目に飛び込んで来る水羅と北斗、其れと綱手。
「鳴門、任務はどうした?」
「堅い事言うなって。今日は水羅の見舞いしに来たんだぞ?ずっと忙しかったから全然来れなかったしな」
言いながら水羅達に近付くと、買って来た花とフルーツを差し出した。
「はい、此れ。見舞い品」
「あ…此れって星の花。有り難う鳴門君v」
「私其れ花瓶に入れて来る」
アスターを手に北斗は部屋から出て行った。
「わざわざ御免ね?」
「良いんだよ。水羅も早く治すんだぞ?」
昴と一緒にベッドの傍にパイプ椅子を置き、腰を掛けた。
「分かってるよ?火影様のお陰で段々気分もよくなって来てるし、杖なしで歩ける横にもなったんだv」
綱手の医療治療のお陰で水羅も元気になって来た。
「此れも鳴門のお陰だ」
「治療してるのは私だが?」
静かに睨み合う二人。
「鳴門が言わなかったら此の結果になってない」
「私がOK出してなかったかも知れないんだぞ?」
「死にそうな患者を目の前で見捨てるのか?」
「誰もそんな事言ってないだろ…」
「俺にはそう聞こえたが?」
「生意気な餓鬼だね…」
「誉め言葉を有り難う」
そんな二人を横目に鳴門と水羅は溜息を付いた…。
「…ばぁちゃん」
「…昴」
螺子が白眼で水羅の体を見た時、体中に広がっていた星の影響…。
其れは此の侭放っておくと、命に関わる問題でもあった。
「綱手様。血液検査の時間です」
其れも今や少しずつではあるがなくなって来ている。
「嗚呼。水羅、もう少しの辛抱だからな?頑張れよ」
「はい」
星を使った修行で何時命を落とすやも知れない。
現に今まで、何人もの命を落として来たのは事実であって、昴や北斗にも予防注射とはいかないが、水羅の体内から検出した影響を及ぼしたサンプルを元に、星の力の病対策に作られた薬を綱手が開発したのだった。
「じゃあ、俺そろそろ帰るな?また来るから」
鳴門の持って来たアスターは綺麗に花瓶に移し、ベッドの横の机の上で綺麗に咲いていた。
「有り難う鳴門君」
そう言って鳴門は昴と一緒に部屋を後にした。
病院を後にした二人は今、ある丘へと足を運んでいた。
「あの花、喜んでたな水羅の奴」
肩を並べて地に座り、ふんわりと優しい風を全身で感じていた。
「其れは多分、アスターの花言葉を知ってるからだと思う」
言いながら笑みを零す昴に鳴門は首を傾げた。
「花言葉?」
聞いた事はある。
花には其れぞれ意味があり、色に寄って花言葉も変わるのも在ると…。
だが、そんなに花について詳しい訳でもない鳴門にはちょっと難しい話でもある。
「鳴門が水羅に贈ったアスターの花言葉は、祈る想い。もう一つは信ずる恋。此の場合、見舞いの花だから早く治って欲しい事を祈っている、と水羅は解釈したんだろ」
「あ…そうか。其れで見舞いにはアスターがいいって猪が言ってたんだな…」
此処に来て漸く猪の気遣いに気が付いた鳴門。
見舞いに行くと言ったら直ぐに此れがいい、とアスターを渡して来たから猪は前々からアスターの花言葉を知っていたんだ、と。
「他には?どんな花言葉があるんだ?」
「他にか?他には、赤い薔薇には『情熱』、ピンクの薔薇は『感銘』。タンポポは『思わせぶり』、後…デンドロビウムって言う蘭の花には『我儘な美人』、此れは鳴門にピッタリの花言葉だな」
くすくすと笑う昴を、鳴門は口を尖らせて睨む。
「我儘なんかじゃねーよ俺!」
「どうかな?」
「いいよもう…。あ、桜とかは?」
「桜は精神美とか優美な女性と意味が付いてる」
「昴は花の事詳しいんだな?」
「興味が湧いてな…木の葉に来て、図書館とかで偶然花言葉が載ってる本を見つけたんだ」
其れから昴と鳴門は花言葉に付いて、陽が暮れるまで話していた。
「あれ…昴は?」
「此処二日来てないわ」
病院に足をはこんだが、昴は姿を見せてなかった。
「どうしたんだ昴の奴…」
次の日、任務が終わった鳴門の目の前に昴が現れた。
「此れから、用事は…?」
「ないけど…どうしたんだよ?」
「…鳴門に見せたい物があって、付いて来てくれるか?」
躊躇いがちに言った其の言葉に鳴門は、嗚呼と言いながら頷いた。
昴の後を追う鳴門。
だんだんと木の葉の里から離れて行くが気には止めない。
「目ぇ閉じて」
「…うん」
きっと驚かせたいのだろう。
鳴門は其の言葉通りに瞳を閉じると、急にふわりと体が浮いた。
「何抱えてんだよ!!//」
「目隠ししてたら危ないだろ?」
そんな理由で…ボソリと呟いた鳴門の頬はほんのりと恥ずかしさにより染まっていた…。
其れから物の五分と掛からない間、目的の場所とやらに着いたようだ。
急に立ち止まった昴に地面へと下ろされた。
「開けていい?」
「いいよ」
ゆっくりと目を開くと、鳴門の目の前に飛び込んで来たモノは…
「う…わぁ…」
目の前に広がるモノと言うのは、『藤の花』だった。
紫色や白色の小さな花をいっぱい付けている其の花穂は地面へ垂れ、風にユラユラと靡いている藤の花は何とも優雅だった…。
「綺麗…」
「だろ?鳴門に見せたくて…探したんだ。此の場所を」
後ろから鳴門を優しく抱き締める昴。
こんなに綺麗に咲いている藤の花は珍しい。
数も一つ二つではなく、ずらはと並んだ藤に囲まれて…不思議な世界へ来た感じのようだった…。
「有り難う、昴…」
こんな綺麗な藤を見せてくれて有り難う…。
そう思いながら鳴門は後ろから回された腕にそっと触れた。
「…此れ、俺の気持ちだから…」
「へ…?」
「藤の花言葉は…
【 】」
ボソリと耳元で呟かれた其の言葉に鳴門は頬を染めた。
「〜〜〜っ!////」
End...
今回は凄く甘い感じに仕上げてみました!
ほら、昴たんって普通だと弄られてばっかで可哀想かと思って… 汗
アスターの別名 星の花とは。
インドでそう言われているそうです。本当!
星隠れの里に因んで、此れを使わせて頂きました〜v
藤の花の花言葉は、貴方に夢中、恋に酔う。
鳴門に向けている昴の気持ちですね!貴方に夢中と昴の気持ちが籠って、藤を探してたんだと思います。
キャー☆
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