世界中の誰よりも 昴鳴
今日こそ…
今日こそは、ちゃんと真面目に伝えようと決心したんだ。
何時も情けないくらいに弛んだ顔して好き、って言ってたし。
そう決心したから…。
ずっとずっと、考えた末に出た答え。
「ちょっと出て来る」
決心をした日ってのは、人間誰でも真面目になれるんだな…――、そう思った。
此の俺がちゃんと仕事してるし、笑っちまうよ。
「何処へ、って言うまでもないですよね」
「嗚呼。明日には戻る」
執務室を後にした星隠れの星影である俺は、木の葉へと大急ぎで向かった。
木の葉、砂、星。
トライアングルの名の元に結成した同盟。
五大国の仲間入りした星隠れの里は六つ目の里として、今や誰もが知っている事だ。
不思議な奴だ…と思うようになってから気になりだして、初めは任務として星隠れに来てた鳴門と言う人物に好意を持っただけだった。
星の力の副作用で、水羅の体の治療の為に鳴門たちと一緒に木の葉へ行ってから、鳴門と触れ合う程に気持ちは膨れ上がるばっかりで…何時の間にか好きになってた。
其れからは鳴門に会いたくて里をちょくちょく抜け出すようになった。
『昴…任務は?』
『抜けて来た』
『ちゃんと任務しろよな』
『俺は任務より鳴門に会いたい!』
『昴ってば何っ時もそう言うよな…』
木の葉に来る俺を鳴門は怒るけど、最後には会いに来てくれて有り難う、なんて言われるからまた会いに行きたくなるんだ。
『誰だ貴様…』
『お前こそ誰だよ…』
『余所者が気安く鳴門に触るんじゃない』
『お前も余所もんじゃねぇか』
其れから、何やら鳴門に会いに来てるのは俺だけじゃないと、砂隠れの忍を見て実感。
其奴とは恋敵と言うかライバルだと言うか。
10代の頃からの良き、友とでも言うかな。
鳴門が好きで好きで、大好きで…。
俺と風影も其れは互いに知ってるからこそ、此奴にだけは負けたくない!って意地になって目を合わせたら喧嘩して、最後には鳴門に怒られて…。
『どうするんだ!』
『…すまん』
『…ごめん』
『木の葉の半分が壊れたんだけど…?ま、怪我人や死人が出なかっただけでも よ か っ た が !』
『『う゛…』』
我愛羅とは犬猿の仲、そんな俺たちだけど、鳴門となるとやっぱり信用出来る奴なんだ。
『貴様…生きて帰れると思うなよ…』
『我愛羅、俺もう我慢出来ねぇ』
『嗚呼。鳴門に手を出した罪がどんなに重いか、其の身で思い知るが良い』
『死んで償えよ』
どんなにいがみ合ってても、やっぱり鳴門の事は大事。
手を出そうとか、そんな考え持つ奴らには成敗してやらないとな。
こうゆう時にだけ、風影とは友となる。
ただの恋敵ではなく、戦友。
我愛羅が風影になって、俺が星影になって、鳴門が火影になって直ぐ、トライアングル同盟を組んだ。
三つの国が同盟を結んだ事によってより一層、俺たちの絆は深まった。
鳴門に対する想いも段々と深まって行った…。
「俺ももう、20になるし…」
子供だった自分へのケジメと言うんだろうか。
只、鳴門が可愛くて好きだからと、浮かれて突っ走って曖昧に好きだと言うばかりじゃ、鈍い鳴門は気付いてはくれない、と分かっていてもハッキリと伝えてない所が子供だったと言うべきか。
此れから大人になる俺が、子供の侭じゃ駄目なんだって自分なりに考えた結果が此れ。
ハッキリと伝えたい…
世界中の誰よりも一番、渦巻 鳴門を愛している…と。
「星影さまではないですか!お久しぶりです」
「嗚呼、久しぶりだな」
「火影さまは執務室におられます」
「嗚呼」
俺が木の葉へ来るのも、久方ぶりだ。
ずっとずっと考えてたから木の葉へ来るのはもう、1ヶ月振りな訳であって。
昔は1日も早く会いたくて、一秒でも長く傍に居たい、とか思ってた俺が…。
「1ヶ月も鳴門に会えなくて我慢出来たよな…」
なんて、ちょっぴり大人になったような自分に苦笑した。
此れで執務室に行ったって、何時もと同じだ。
だから、鳴門の仕事が終わるまで木の葉の街をぷらぷらしようと、賑わう繁華街に足を踏み入れた。
笑顔が溢れる木の葉も平和だ、なんて思いつつもゆったりとした足取りで人の群れに紛れ込む。
「あ…」
ふと目にした茶屋で、見慣れた顔に気付く。
――アレは確か…
「久しぶりだな」
そう声を掛けると、振り返って俺を見た瞬間に目を丸くしたのは鳴門の部下である、えっと…猪?とか言う花屋の娘だ。
「久しぶりねー」
「ちょっと忙しくて中々来れなかったから」
「そう…」
珍しい物を見るような視線に俺もついつい苦笑いしてしまう。
其れもそうだな、1日置きで木の葉に来てた俺が1ヶ月も顔を出さなかった訳だし。
「鳴門にはもう会ったんでしょ?」
「否、まだだ」
「…狽ヲ?」
「仕事の邪魔しちゃ悪いしな」
「…」
本当に吃驚してる。
今まで見て来た俺じゃないから、其りゃ当たり前か…。
「夕方くらいになったら会いに行くさ」
俺だって人の子だ。
フラれたりしたらどうしよう、とかもちろん考えてるよ。
鳴門も俺じゃなく我愛羅や他の奴を好きだって思ってる事も有り得ない訳でもないし。
「…はぁ」
大人になろう、なんて自分で思っていてもやはりと言うか、いざというときにはマイナスな部分を多く考えてしまって…。
情けないな、と小さく呟いた………。
夕陽が沈み掛ける時間になって、俺は鳴門が居る執務室へ向かった。
ゆっくりと歩く足が凄く重たい気がする…。
ちゃんと言えるかどうかが心配だ。
執務室を目の前にし、一度大きく深呼吸をして其の扉を開くと…
「…昴…」
愛しい鳴門の姿。
「久しぶり、鳴門」
「ん、久しぶり」
微笑みを浮かべる鳴門に俺も釣られて笑みを零した。
1ヶ月も会ってないのに異様なまでに冷静だな俺…。
「最近顔出さないから心配してたんだぜ?」
「ちょっと、自分なりに色々考えててな…」
「…?」
「今時間あるか?」
「嗚呼、今仕事終わったから大丈夫だよ」
其れから鳴門と一緒に部屋を出て、少し歩こうと俺が言って人気のない場所に移動した。
夕陽もあと少しで完全に沈む。
段々と暗くなる道を、肩を並べてゆったりとしたスピードで歩く。
「早いよな時間が経つのって。あっという間だよ」
「うん。早いよな…昴と出会ってもう6年、か」
鳴門と出会った頃よりも身長も伸びて声変わりもして筋肉も付いて、随分と見た目は大人になった。
鳴門も身長は伸びてるが、昔とちっとも変わらずに細くて小さくて、幼さを残してて可愛い。
「昔の俺はガキだったなぁって最近思うようになったんだ」
「昴が?」
「嗚呼…昔の俺は本当、ガキだった」
もう、大人なんだ。好きな奴に好きだって、面と向かって言えるようにならなきゃ…。
「…鳴門」
「ん?」
足を止めて、鳴門を見つめた。
足を止めた俺を振り返る鳴門も俺を見つめた。
「俺は…――」
「俺、は…――」
駄目だ…此の先が言えない……。
瞼を閉じて、自分がこんなにも情けないとは思ってなくて深く深く溜息を付いた。
しっかりしろよ、俺…と情けない自分に弱さを感じた。
「昴…?」
本当、何時になく弱気だな俺って…。
此れじゃ、我愛羅に…
我愛羅?
頭の中に我愛羅の顔が浮かんだ。
憎たらしい勝ち誇った笑みを浮かべる頭の中の映像、其の我愛羅に無性にムカついてきた…。
あー、やっぱり彼奴には負けたくないわ…。
「昴…?どうした?」
つーか、有り難う我愛羅。
お前のお陰で勇気持てたかも。
そう、砂にいる我愛羅に礼を言って俺は瞼を開けて、鳴門の顔を真っ直ぐ見つめた。
「俺は、鳴門が好きだから」
「うん…俺も好きだよ?」
「友達としてとかそうじゃなくて、恋愛感情の好きだよ」
そう言ってやると鳴門の顔は段々と赤く染まっていた。
「恋愛…感情?//」
やっぱり、友達として好きだって思ってたんだな…。
あんなに好きとか言ってたのに…友達として好きと勘違いしてたんだ、やっぱり。
鳴門の鈍さにも超が付くな…。
「恋愛感情で鳴門が好きなんだ」
「…え…?//」
耳まで真っ赤に染めてる鳴門が本当に可愛い。
初でピュアで、嗚呼…やっぱり好きだなって、鳴門を好きになって本当に良かったと思う。
俺を鳴門と出会わせてくれて、本当に有り難うと神に感謝したい。
「鳴門が誰を好きであろうと、俺は此れからもずっと、鳴門を好きだって言う想いは消せない…」
「す…ま、る…////」
「世界中の誰よりも一番、鳴門を愛してる…」
そして、ゆっくりと鳴門に近付いて…
優しく微笑んで顔を見つめて
顔を近付けて
そっと口付けた…――
End...
那月さまへ捧げる…。
お誕生日おめでとう御座います!
昴鳴、なんですが…
少年から青年になる一歩手前な時期の設定で…!
大人な考えで鳴門に告白!ってのが頭に浮かんだのです。
格好良い昴くん目指したのに…
大人な昴くん目指したのに…
やっぱり子供っぽい昴くんになってしまいました…。
文才なくてゴメンナサイ(涙)
本当、ヘボくてゴメンナサイ(泣)
微妙な昴たんになってしまって、ズイマゼン(号泣)
えっと、此れはアレです。
昴鳴とか言っても、鳴門からの返事はない侭終わらせたんですが、やっぱり鳴←我vs昴をイメージして敢えてない方を選んだ私は、本当に良かったんだろうか…?
なんて考え乍、こんなヘボいモノを押し付けてしまって本当後ろめたいと言うか土下座して謝りたいっス…(汗)
こんなモノですが、受け取って下さると本当嬉しいです!
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