一時休戦 甘

 
「今日も良い天気だ」

星隠れの執務室。
愛しの鳴門に今日も想いを寄せている昴は、ダンっと机を叩いた。

「よし、鳴門に会いに行…」

「お待ちなさい」

冷たく響いたのは北斗の声。

「え…?」

恐る恐る北斗を見てみると、恐怖に似た様な笑みを零していた…。

「ほ…北斗?」

「今日と言う今日はちゃんと仕事して頂きますよ。逃がしはしません」

ガッシリと掴まれた肩が、微かに痛いのは気の所為だろうか…。
掴まれた肩に目をやりながら昴は引き吊らせた笑みを漏らす。

「否…俺は今から鳴門に会…」

「問答無用!貴方が火影様に会いに行ってる間、一週間びっちり溜まりに溜まった大量の書類を片付けてから行って下さい!…いいですね?」

昴は悟った…。
今、北斗に逆らうと、鳴門との大事な時間がなくなってしまう…。

「此が片付いたら、木の葉に行ってもいいです。一日位楢宿泊して来ても構いません。ですから、今日中に片付けて下さいね!」

其の言葉を聞いた昴は…

「仕方ないな♪」

やる気になっていた。

そんな言葉を聞いたら、一日くらい位我慢出来る筈。
待っててくれ鳴門!と意気込み、昴は溜まった書類と向き合う為に椅子へと腰掛けた。













「はぁ…はぁ…着いた」

一週間溜まりに溜まった書類を一日で済ませ、昴は木の葉へとやって来た。

「しまった…急いで来たから何も持って来てない…だが!」

此は絶好のチャンス!!
何時も邪魔な狸は砂へ帰って…其の後は鳴門と二人きりの甘い夜の世界で愛を囁き合う…





『昴…俺の何処が好き?//』

『ん〜、何処だろ…』

『はぐらかすなってば!//』

『御免…鳴門v』





なんてよからぬ事を一人、考えながら、

「ふふふ…待ってろ鳴門!直ぐ行くぞ!!」

怪し気な笑いと共に、

「星影様!!お待ち下さいっ」

門番に捕まった…。

「何だ見張りA」

折角の気合いが台無し…そう物語る様な冷たい視線を門番へと向けた。

「見張りAって…私の名前は…」

「名前等知らんし覚える気も更々ない。何故鳴門以外の名前を覚えなきゃいけないんだ…面倒臭い…」

そんな昴に、ひ…酷い…っ毎日毎日顔を合わせてると言うのにィ!!と叫びながら、ズーンと地に両手 両膝を付け、名前も覚えて貰っていない門番は悲しみに浸る。
覚える気も更々ないと言われた時の悲しみは半端ないだろう。

「…時間が勿体ない…」

そう言って鳴門の元に行こうとするが…

「狽っ!?星影様ー!!ちょっとお待ち下さい!」

門番の叫び声により、昴はまた、捕まった。

「俺は急いでるんだ…」

明らかに不機嫌な昴。
先程よりも冷たい視線(微殺気混じり)を向けた。

「(秤ホ影様に怒られるってー!!)あ…あの〜、つ…通行き…」

ウルウルと目に溜まった涙を浮かべ、其の体勢の侭 片手を昴へ向けた。

「そんな物は必要ないだろ?第一、俺は星隠れの長だぞ?」

俺と鳴門の愛に通行許可書なんて物は必要ないだろう!と。

とんだ勘違いをしている昴だ。
昴と鳴門の間に、仮に愛が在ったとしても通行許可書が必要ないなんて里は何処にもない。

「と…取り敢えずは…」

「俺に指図するのか…見張りA」

孔雀妙法の餌にしてやろうか?なんて脅しに掛かる昴は何とも大人気ないと言うか、子供気ないと言うか…。

「否っ…そうゆう訳じゃ…って見張りAは止めて下さい…」

「何だ?」

「いえ!星影様に見張りAと言われ光栄です!!どうぞお通り下さい!!(号泣」

頭を地に付け、門番はどけ座をした。

「…そうか」














執務室の通りの廊下。
鳴門に会えるvと昴の足取りは軽やかであった。

「…また来てるのか」

「火影様も大変ね…」

なんて声が聞こえても無視。
鳴門の事で頭が一杯な昴は、ドアを開けた。

「鳴門ー!」

先程まで軽やかなステップは何処へやら。
視野に入って来た我愛羅を見ると、笑顔だった顔は瞬く間に眉間に紫波が寄った。

「あ、昴!よく来たな」

「風影…」

我愛羅が鳴門と一緒にいた事に段々と腹が立って来る…。
先を越された事に普段よりか眉間の紫波の数も増えている。

「何だまた貴様か…」

目を合わせた瞬間に此だ。
仲が良いのか悪いのかさっぱり分からない。
鳴門は二人の間に立ち、気持ちを落ち着かせる様に言葉を発する。

「落ち着けって…で、昴は何しに来たんだ?」

「そんなの鳴門に会いに来たに決まってるだろ!」

「仕事は?」

「昨日の内に済ませて来たぞ?」

「北斗はなんて言ってた?」

「失礼のないように、と言っていたぞ。北斗も北斗だ…鳴門に対して失礼な事を此の俺がする訳がないと言うのに!」

早口の会話の後、鳴門は昴を物珍しそうに見つめていた。

「嘘、じゃないだろうな…?」

「今日は本当」

今日は…?と言う疑問点があるが、まぁ其れはよしとしよう。

あの、昴がだ。
サボり魔で有名な昴が。
鳴門しか眼中になく、しょっちゅう里を抜け出すあの昴が。

昨日の内に仕事を片付けて来たと言うのだから。

「熱があるんじゃないのか…?」

「酷いぞ鳴門…」

「御免…でも、お前が仕事して来るなんて…」

未だに信じられないと言うかの如く、鳴門はパチパチと瞬きを繰り返していた。

「何を言ってる。愛があればこんな物屁でもない」

「ヲイ、愛って何だよ……。つか、トコトンお前等って似てるよな?我愛羅も仕事片付けて来たって言って休み貰って来たんだってよ」

鳴門の言葉と共に、昴の鳴門と二人伐りの甘い夜の世界で愛を囁く…妄想は妄想に過ぎず、大きな音を立て崩れ去った…。

俺の完璧な計画がーっ!!
鳴門との甘い夜の世界がーっ!!

「…何でお前も休みを貰って来るんだ!」

「も、だと?其れじゃ…貴様もか…」

又しても、二人は睨み合う…。

「今日は鳴門の家に泊まらせて貰う!!」

「貴様は来なくていい」

「お前も来るのか!?止めてくれ!鳴門の家に泊まるのは俺だからな!!」

「俺だ」

「俺と鳴門の邪魔をするな!」

「邪魔してるのはどっちだ」

「お前だろ」
「貴様だ」

「そんな事で喧嘩すんなって。二人共泊まっていいからさ?」

今一 鳴門は二人の気持ちを把握しきれなかったようだ。
鈍い鳴門だからこそ、そんな言葉が出て来るのだとは思うが…。

どんなに鳴門と二人きりになりたいか…。
どんなに鳴門と甘い夜を過ごしたいか…。

そんな事を此の二人が思っているなんて知らない鳴門に、二人は揃って溜息を付いた。
そう鳴門に言われたら、返す言葉もなくて…頷くしかなかった。

「…仕方ないか」

「…一時休戦だ」

小さく呟くと二人はまた大きな溜息を付いた…。














其の後、鳴門の仕事が終わる迄暇だからと言って手を貸してくれた。

が、二人は在る意味 迷惑だった…(鳴門談)

取り敢えずは手伝いをしたり…(全然してねーじゃん?

サボらないかなと邪魔をしたり…(此じゃ終わらねーって!

構って欲しくて鳴門に抱き着いたり…(抱き着くなっ!!

二人同時にほっぺにキスをしたり…(狽チ!?//



ほっぺにキスをされるとは予想外な展開。
されると思っていなかったからこそ、された時は吃驚してほんのりと頬を染める鳴門であった…。














「何か疲れた…。まぁ上がれよ」

家に着いた時にはヘトヘトな鳴門。
二人のお陰で中々仕事も捗(はかど)らなかった。

何時もならば夕方までには終わる仕事も、今は夜の七時を回っていたのだから…。

「「邪魔する」」

と声を揃えて鳴門の家に上がり込む二人。

綺麗に整理整頓された部屋は埃一つもなく、完璧だった。

「仲良しゴッコは今日だけだからな!」

「ふんっ。貴様に言われなくても分かっている」

協力して、とはいかないが可愛い鳴門を拝めるチャンスかも知れない。
そんな美味しい状況で喧嘩等していたら(一緒にいる事自体ムカツクけど)、見逃してしれぬかも…と考えた二人は一時休戦。
取り敢えず、平等に…。














其の後、鳴門が作ってくれた手料理を腹一杯に満喫した三人。

「お前等の食べっぷり気持ちいいな♪」

「折角鳴門が作ってくれた料理を残す訳がないだろ」

「そうだ。勿体ない」

「有り難う…」














「お風呂沸いたから、どっちか先に入れよ」

「鳴門が先に入れよ」

「俺達の事は気にするな」

「じゃあ…俺と一緒に入る?」

「「狽「いのかっ!?//」」

「冗談だって☆」

「「…冗談か…」」

「(そんなに落ち込む事ねーだろ…)…じゃあお先に」

二人の気遣いに鳴門は言葉に甘えて先にお風呂に入る事にした。

「あ、冷蔵庫の中にビール入ってっから好きに飲んでいいぞ?其れ以外は隣りの棚ん中にあっから」

「「分かった」」

バタン、と鳴門がバスルームに入るのを見送る我愛羅と昴。

「ビール飲むか?」

「貴様にしては気が利くな?」

「今日は一時休戦って言ったろ。で、飲むのか 飲まないのか?」

「飲む」

本当に今日の様な二人は珍しい…。
鳴門がいない席で喧嘩が始まらないなんて…。

今夜は嵐か…?





「――……ほら」

冷蔵庫から持って来た缶ビール二本。
差し出された缶ビールを我愛羅は受け取った。

「すまない」

プシュッ、と飲み口を開けると其の侭喉に流し込む。

「…あ〜あ。今日は鳴門と二人きりと思ってたのに」

「其れは俺も一緒だ」

我愛羅は一旦、ビールをテーブルに置いた。

「此の後だが、どっちが先に入るか…」

其れは在れ。
生の鳴門の間接お風呂をどちらが先に入るか、と言う順番決め。

「「………」」

沈黙が流れ二人は睨み合い…



一分後…バッ、と立上がり

「「最初はグー!じゃんけんポイっ!!」」

「…」
「…」

我愛羅が出したのはチョキで、昴が出したのはパー…。

「貴様の負けだな」

「…っくそ!」

鳴門の間接お風呂は我愛羅に決まった。

優雅にビールを飲む我愛羅…と真反対に少しブルー気味な昴。

「まぁいいさ。お前が出て来るまでイチャつかせて貰う」













鳴門がお風呂から出て来ると、昴は上機嫌。

「早く入って来いよ」

「…っく」

バタン、とドアが閉められた…。
首にタオルを掛け、昴の隣りへ座る鳴門。

「鳴門♪」

「昴…?」

「やっと二人きりになれたなv」

そう言って昴は鳴門を抱き締めた。
鳴門も其れを嫌がる事なく、大人しく腕の中に閉じ込められる。

「彼奴が出て来るまで、存分にイチャつける♪」

そっと顔を近付けて、チュ、と頬にキスをする。

「※ピー※は今度だな♪今日はひとまずオアズケだけど」

「あの…さ…//」

恥ずかしいのか、鳴門はほんのりと頬を染めていた。

「ん?」

どうした?と言いながら鳴門に沢山のキスを送る…。

「…髪の毛乾かしたいんだけど…//」

「どうぞ?俺は鳴門にキスしとくから」

そう言って昴は鳴門にまたキスをした…。

「……はぁ//」














我愛羅がお風呂から上がって来た事に昴は折角の鳴門との時間がなくなり、

「今度は貴様だろ。早く入って来い」

「…ったく」

不機嫌にバタン、とドアを閉めた。

「鳴門…」

「な、何…?//」

隣りに座り、我愛羅はそっと鳴門の頬に手を添えた。

「顔が赤いぞ…彼奴に何かされたんだな」

「…アハハ〜…え…っと…//」

「素直にな成った方が楽だぞ?」

此の侭、こんな場所で我愛羅に押し倒されてしまう勢いで、鳴門は我愛羅の言う通り、素直になってみる。

「キス…されまし…た…//」

「何処にだ」

「ぇ…口とほっぺに…//」

そう告げると、我愛羅は鳴門に顔を近付けた。

「消毒だ」

そして、我愛羅も昴同然…昴が出て来るまで、キスし続けたとか…。
 

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