04
友人(影山夢主)ちゃんと知り合ってからわたしは憑き物が落ちたかのように穏やかになって、若利くんのことは依然大好きだけど前のように他のオタクを威嚇したりSNSでマウントを取ったり出待ちの場所取りで揉めることも無くなった。
それほどまでに友人(影山夢主)ちゃんの影山くんに対する無償の愛?が凄くてわたしは自分が今まで相当恥ずかしいことをしていたことに気づく。それでも、友人(影山夢主)ちゃんのように見返りを求めなかったりただ試合を見てるだけで幸せにはなれそうになかった。
「やっぱり若利くんと結婚したいよ〜!」
「ふふ、結婚出来るといいねぇ」
「絶対する!」
周りも若利くんですら最近はもうネタだと思ってるけど、わたしは真剣だった。
「若利くんの好きなタイプは?」
「好きになった人だ」
「うーん。じゃあどうやったら好きになってくれる?」
「それはわからない」
「もういいじゃん、付き合おうよ〜!」
「今はバレーで忙しいからな。書けたぞ」
そう言って返されることも悲しいかな、慣れてきてしまった。サインしてもらった色紙をぎゅっと握りながら「あ、リオ行ってもいい?」と切り出す。
「構わないが...」
「喜んでくれないんだ」
「いや、喜ばしいことだとは思っているが...」
「何?若利くんが煮え切らないの珍しい」
「リオは治安が悪いから、なまえのことが心配だ」
「えー!何それ嬉しい」
「誰か付き添える男性はいるか?」
「はぁ?!いないし!」
(ほんと、そういうとこ!)
若利くんのバーカバーカ!と心の中で悪態をつきながら、話を続ける。
「友人(影山夢主)ちゃんと行こうかなぁって話してるんだけど」
「女性2人は危険だぞ」
「うーん。そうだよねぇ。また友人(影山夢主)ちゃんと相談するね〜!」
「なまえの来ようと思ってくれた気持ちだけで俺は嬉しく思う」
「そーーーーーやってすぐ!好きになるようなこと言うじゃん!ずるい!」
「いや、そういうつもりではなく思ったことを言っただけだ」
「もーー!若利くんのこと好きで困ってる」
「それは、すまない」
「今日も大好きだからね!」
「ああ、知ってる」
友人(影山夢主)ちゃんに相談しようと連絡を取るが、いつも早い返事が今日は返って来ずおかしいなと思いながらも普段の生活を送る。
結局リオに行くことは叶わず、2人でスポーツバーで観戦することに決めた。
「今日も若利くんが世界で1番かっこよかった〜〜〜!!好き!!結婚して〜〜!!」
「飛雄くんだって世界で1番かっこよかったもん〜〜〜!!!」
「お姉さん達一緒に飲まない?」
「「飲まなーーーい!!」」
この楽しい気持ちに水刺してくるナンパ男なんて放っておいてもっと飲もう!と2人でテンション上がったまま酒を飲み続ける。
「友人(影山夢主)ちゃんスマホなってる」
「あ、ほんとだちょっと電話出てくる」
「だいじょぶ?」
「うーん」
フラフラとした足取りの友人(影山夢主)ちゃんが心配でこっそり覗きに行くと彼氏と電話だったようで友人(影山夢主)ちゃんに彼氏がいたことに驚く。
「...みんな、普段は普通に生活してるんだ」
わたしは私生活と若利くんのことをごちゃまぜにしてるし、今日だってすぐ若利くんにかっこよかった!大好き!ってDMしちゃったし。たまにしか返事来ないけど。テンション上がり切っていたはずが氷点下まで冷めてしまう。スマホが震えて画面を見ると若利くんから「ありがとう、早く寝るように」と返事が来ていてまたテンションが上がる。
やっぱり、この人以上好きになれる人なんていない。