牛島選手の追っかけを辞めたい。 | ナノ

03



「やだ」
「なまえ」
「やだやだやだ!なんで?わたしの方が先に話してたじゃん!」
「わかっているが...」
「わたしはまだ若利くんと話したいもん」
「あ、じゃあ大丈夫です〜...」

その日はある日突然来た。若利くんを追っかけ初めて1年が経ち、少しずつファンも増えたので若利くんとの時間はどんどん少なくなっていった。あの頃はよかった、なんて思うこともたくさん増えて。今日だって他のファンみんな先に話してもらって最後は時間いっぱいまでわたしが話せると思ってたのに。他の選手にサインもらってから、後から来たくせにずっとわたしの後ろで「まだ?早く終わんないかな」ってぶつくさぶつくさ文句言ってさ。若利くんじゃなきゃダメ、じゃないんだったらどっか行ってよ!!!そう思っていると若利くんに「後ろが待っているから」と終わりを切り出されてわたしはブチギレた。

「若利くんはいつもいるわたしなんかどうでもいいんだよね?!別に今日話さなくたってどうせ明日も来るもんね?それなら今日しか来ない人の方が大事だよね?もういい。もう来ない」

自分でも子供っぽい癇癪ってことはわかってるし、若利くんがアイドルでもなんでもないってこともちゃんとわかってるけど。それ以上にもう好きになっていて、そんなこと冷静に考える頭は残っていなかった。

「なまえ、待て」
「うるさい」
「泣かれると、困る」
「若利くんが泣かしたんだよ。若利くんなんて嫌い!」
「俺はなまえに嫌われたくない」
「なんなの?そうやってご機嫌とっても無駄だから」
「いつも朝早くから俺より先に会場にいて、試合中も真剣に応援してくれて、帰りも俺が帰るまで帰らずに残っていて。贈り物もたくさんしてくれて、感謝しかない」
「...」
「俺はまだなまえに感謝を全てプレーで返せていないから、来なくなったら困る。俺のことを見ていてくれ」
「なにそれプロポーズ?結婚する?」
「結婚はしない」
「...若利くんがそこまで言うなら明日も来る」
「ああ」
「暴走してごめんなさい」
「俺になら、構わない」
「若利くん...好き」
「ありがとう」

これくらいからわたしは若利くんにリアコを拗らせ、更にはもともとだったけど同担拒否になりネット上でも現場でもバチバチにやり合うようになってしまった。掲示板でわたしの悪口書かれるのは日常茶飯事だし、プレゼントであげた服のセンスがないとか若利くんが可哀想だとか散々言われてたけどむかつくだけでそれ以上は何も気にならなかった。ただ、若利くんが好きそれだけで幸せだったから。

友人(影山夢主)ちゃんと出会ったのは若利くんを追っかけてから1年半くらい経った頃で、会場で初めて見る人で美人だったので若利くんのファンだったらどうしようと思わず声をかけてしまったのがはじめましてだった。

「どうしました?」
「あ、あの!影山選手とお話ししたかったらここで待っていたらいいんでしょうか?」
「あー、うん。多分ここで大丈夫だと思いますよ〜」
「ありがとうございます!」

あ、この人はちゃんと好きな人だ。すぐにそう思った。わたしなんかとは違って真剣に選手を応援出来る人。この頃のわたしはかなり尖っていたし、若利くんも困ってたんだろうなと今思えば申し訳ない気持ちでいっぱいだ。でも本気で若利くんと付き合いし結婚したかった。それだけは本当の気持ち。


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