nearly equal

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相思花の裏 2

腕を縛られ目を塞がれ、下肢には未だにリンの楔が打ち込まれている。
エドワードの姿は蹂躙された憐れな人形の風情を漂わせていた。堪らなくなって何度もその唇を啄むと、いちいち熱心に応えてくる。

やっぱりオカシイとリンが首を傾げると、エドワードは小さく笑った。

「なぁリン、嫌な話をしてやろう」

唇を震わせながらエドワードが呟く。

「こんな時に、嫌な話ってアンタ」
「まぁ聞けよ、オレの秘密だ。アルにだって話した事はない、オレの穢れた話」

弟の名前を出されてリンの肩が揺れた。

リンの動揺は目隠しをされたエドワードにも雰囲気で伝わった様子で、二人分の唾液で濡れた珊瑚色の唇を歪ませる。

「オレはな、血の匂いにすげぇ興奮すんだ」
「そりゃまた、野性的だナ」
「しかも他人のじゃ駄目。自分の血が一番興奮する。やべぇくらいガチガチになる」

血の匂いに違いなんてあるのかと思ったが、エドワードなら自分の血の色香味まで記憶して他としっかり見分けそうだ。

だから、なぁとエドワードが媚びるようにリンの腕に顔を寄せ、赤い小さな舌を艶かしく這わせた。

「傷付けてくれ、よ」











それはリンにも随分と魅力的な誘惑だった。


生い茂る野草の葉は夜露に濡れ光り、まるで小刀の様。若々しく鋭く青いその葉をひとつ毟り、エドワードの肌にひた、と押しあてる。

「いくヨ?」
「いいから、早く」

荒い息がエドワードの熱で燃えるように熱く感じる。
目隠しはもう外してしまった。エドワードが血の溢れる所が見たいと言ったから。

旅をしていた時に作ったらしい古傷はエドワードの体中に残っていて、見た目歴戦の勇者といったところ。しかし肌はきめ細かく滑らかな手触りで、旅を終えた後は傷跡もだいぶ薄くなってきていた。

新しい傷は増やしたくないので、リンは野草の葉を滑らせてエドワードの腹に浅い切傷を付けていく。

「あ…っ」

ぴく、とエドワードが震えた。
頬を朱に染めて、浅ましく期待した顔を晒す。野草を滑らせた跡に赤い線が残り、やがてその線からじんわりと血が滲み出した。

「あ、ふぁ…」

恍惚とした表情で、ぷっくりと溢れ出た血に見いる。
鮮血の赤さとエドワードの表情を交互に眺め、腹に付けた切傷の下、エドワードの欲情を素直に現す部分がすっかり勃ち上がっているのに直ぐに気付く。

「本当に興奮するんダ。じゃあさっきお尻がちょっと切れたので興奮しちゃったノ、エドワードさん」
「いちいちうっさい…いいから、もっと…」

ご要望通り、今度は浅い切傷を数ヶ所、まとめて付けてやった。

「あ、あ……やべ……」

うっすらと漂う血の匂いに反応したのか、エドワードは自身の秘肉を両手でぎゅっと握り締めている。
恍惚とした表情。そんな物をみせつけられてはリンの方も堪らない。

「…もう一回、いいよネ」
「は…いい、いい…っあ!」

リンの欲を捩じ込んでも、しとどに濡れそぼった肉壁は柔らかく受け入れた。
急いて、最初からがつがつと腰を動かす。エドワードの体内は熱くて狭くて、突き上げるリンは堪らずその体を掻き抱く。


…エドワードがいつになく乱れた理由が漸く解った。
鼻を掠めるエドワードの血は、不思議と彼岸花の香りに似ている。

「……もしかして、この匂いで発情してたノ?」

エドワードは切傷に指を這わせ、子削げ取った血をぺろりと舐めていた。
甘く蕩けた瞳は月の光を映し、同時に夜の闇の碧を滲ませて妖しく揺らめいて、笑う。

「……持ち帰って群生させよウ」
「止めとけよ、オレの躯が傷だらけになる」

都合のいい媚薬が有った。量産実現の為、帰る時に彼岸花の根を持ち帰ろう。
含み笑いして止まっていた律動を再開すると、直ぐにエドワードの息が上がった。

「っふ、っ、ふぁ」
「あー…気持ちイー…」
「ぁあっ、い、すげ…」

エドワードが鼻から抜けるような甘い声を出して、リンの胸にすがってくる。

エドワードが畔から集めて来た彼岸花を、掌で握り潰してエドワードの上から降らせた。
はらはらと散る花弁にまみれて、エドワードが欲情しきった顔で笑う。

「どうだ…変、だろオレ…自分の血ぃ見て興奮すんなんて、さ」
「変じゃないヨ、俺も実際エドワードさんの血見て興奮してるシ…俺だけが知ってるってのモまた」
「あ…間違っても、アルには言うんじゃねぇぞ…言ったら、食い千切るからな」

何処を、と訊いたら怖い返事が返ってきそうだったから訊かないでおいた。

「綺麗だナ」
「あぁ、綺麗だな……気持ちいぃし…」

リンはエドワードに対して言ったのだが、多分エドワードは解っていないだろう。エドワードの視線は体中に撒き散らされた花弁に釘付けだった。
その淫蕩な眼差しに、リンは痺れに似た衝動に襲われる。

「もー…本当、アンタは…」
「あ…?っ、あっ!な、ひゃ…!」

不意に脚を掴み上げられてエドワードが一際高い声で鳴いた。
腰を捻りながら打ち付けると、口の端から唾液を溢れさせてエドワードが好がる。

「あひっ、ひぃ、ああっ!や…苦しっ…!」
「も、手加減できまセン…ちょっと我慢ネ、エドワード」

少々無茶な体位で突き上げているのに、エドワードの秘肉は今にもはち切れそうにガチガチに膨らんで震えている。その光景もまたリンの欲を煽った。

こうなってはもうリンに理性を求める方が無理な話だ。

ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を鳴らしてひくつく恥部がきつく収縮し、リンを食い千切らりそうに締め上げ、エドワードは全身を震わせて果てる。
艶かしく動く肉に根元から搾りあげられて、リンもまたエドワードの体内で達した。
射精の余韻でエドワードの内壁が蠢くたび、リンの淫茎を優しく甘く咬む。くちゅりと鳴る蕾は赤く腫れ上がり、この上なくいやらしい。

「…エドワード…」
「ひ…な、なに…?」

肩で息をしているエドワードの臀部を揉みながら、リンは目尻を下げて小さく笑った。

リンのその困ったような表情の理由が解らず、エドワードもまた困ったような顔になる。

「も一回…いいかナ?」
「……」



彼岸花の赤に、エドワードの血の色に。
百合の香りに、エドワードの血の匂いに。

リンもまた、酷く興奮してしまっていた。





目を見開くエドワードに殴られるとばかり思っていたので、首にそっと回された腕にリンもまた目を見開いた。

「馬鹿だなお前」

そんな事訊くんじゃない。

言いながらリンの首に腕を絡め、体重をかけてぐいっと引っ張る。
体勢を崩されたリンがのしかかってしまうと、エドワードは「ぐえ」と押しつぶされたような声を出して―――リンの唇を甘く、噛んだ。


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