nearly equal

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「じゃあしがみついてくださーイ」
「え?」
「いきますヨー」
「わ…うわ、ぁ、ぁ…!」

窓から引き剥がされたエドワードの腕が一瞬宙をかいた。もがくように踊った手がリンの肩を掴んだので、慌ててそれにしがみついて不安な体を支える。しかし完全に宙に浮いた体をリンにしがみついて支えるという事は、リンに触れている腕とリンが支える腰、そしてリンと繋がっている箇所にエドワードの全体重がかかるという事で――下肢は、エドワードの自重で嫌というほどに深くリンの楔に貫かれた。

「っ―――――!」

衝撃に仰け反った喉に、悲鳴が貼り付いたような掠れた声を出して、エドワードは体を強ばらせた。 エドワードを貫いた肉を根元まで飲み込んだ蕾は、リンの肉茎を噛み千切らんばかりに一瞬強く締め付けたが、すぐにとろけたように解れ、内壁全体が収縮してエドワードの悦楽を伝えてくる。

「ん、ぅあ、あ……!」
「こんな話もあル。昔、絶世の美女がいて時の権力者たちは挙って彼女に求婚しタ。でもその美女は数奇な生い立ちでこの世に生まれ、求婚者達と同じ世界の住人ではなかったので誰からの愛にも応えられなかっタ。それでも彼女を諦め切れない求婚者達に彼女は無理難題を押し付けて断ろうとしたけド、中には命を落としてまで彼女の望みに応えようとした男も居タ」
「あ、あ、なに……」
「結局最後、彼女は自分の住まうべき世界から迎えが来て、帰っちゃうんだけどネ」

打ち付けられる熱に逃げをうつ体を捕まえながら、幼い頃に聴いた御伽噺の概要を聞かせる。おそらく耳には入っていないだろう。エドワードは頻りに首を振り、抱え上げられたまま貫かれて衝撃から逃げられない窮状を涙ぐみながらリンに訴えた。

「い、やだ、お…ろせっ」
「どうしテ、今最高に気持ちイイとこなのニ」

間近から覗き込む金瞳は蜂蜜のように蕩けている。多少無茶をしてもすぐに悦くなってしまう因果な体を持つのが彼が悪い。そんなイヤラシイ体だから虐めたくなるんだと責任転嫁して、リンはいっそう激しく腰を振るった。

「手に入らないモノに命を張るなんて…と昔は思ったけド、それがホントに欲しいモノだったら意外と、簡単に命くらいは張れるもんだよナ」
「ゃ、しぬ、も、」
「君も、オムカエが来たら、帰っちゃうよねェ」

自分が望む答えが欲しかった訳ではないが、口に出したら思ったより恨みがましい声になった。

いつか、故郷の大事な誰かが迎えに来たならば――エドワードはリンの事など気にも留めずにアメストリスに帰ってしまうだろう。そんなこと、知っている。エドワードの中の優先順位では自分がだいぶ下位に位置している事くらい。

そうなったら泣いて縋ってしまいそうなので、それまでにはエドワードの為に命を張っておこうと思う。
御伽噺の美女はどうだったか知らないが、少なくともエドワードは自分の為に命を落とした哀れな男の事など一生忘れてはくれないだろう。縛りつけられなくても、何かにつけて思い出してはあの馬鹿、と詰ってくれるに違いない。

リンの戯言など聞こえない様子で首に噛り付く美人を抱いて、リンは窓の外を見上げた。すっかり元の満ちた形に戻った月が、蒼白い影を落として哀れな自分を照らしている。


今、どれだけの人間が、欠けてく月を見てるのかは知らないが、今エドワードを見てるのは、自分だけ。
お迎えがすぐに飛んで来ないように、リンは抱き込んだ愛しい人をそっと、月の光から隠した。




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