【はっぴーえんど】 「ねえエド」 「んー?」 「好きだよ」 「…ぅ…ん」 「好き。大好き、好きなんだ…ねぇ、ちゃんと聞いてる?」 「…ぁあ、まあ、……うん…」 少し前から始まったアルの"好き"攻撃はいつも唐突で、そして口調こそ穏やかなもののまるで弾幕のような激しさで、言われる側のエドワードにとっては恥ずかしい事この上ない。しかしこうも毎日だと、流石に免疫が付いたような気が――と言っても、目は不自然に泳いでしまうし顔は焦げてしまうんじゃないかと思うほど火照るし、アルの顔をチラリとも見られないくらい挙動不審になってしまうのだから、実際の所はどれだけ「好きだ」と言われても言われ慣れる事はないのだろう、とエドワードは思う。 「ねぇ、ちゃんとわかってる?」 曖昧な返答ばかりのエドワードにアルは拗ねたような声を出して尋ねてくるが、目を細めた顔は甘くとろけたようにだらしない。しかし無駄に整っている容貌は、多少鼻の下が伸びているくらいでは損なわれる事はなかった。 返事はせず、苦笑するだけのエドワードにアルが唇を尖らせる。そんな素振りに頬を緩ませたエドワードは、モニター内でなにやら不服そうにしているアルに気付かれないよう、こっそり溜め息を吐いた。 テレビか何かで聴いた事がある。人間は実現不可能な事は想像できない生き物なのだと――飛行機やテレビ、自動車だって、百年前までは夢の産物だった人類は、今では宇宙飛行にまで手が届くくらいの科学的進歩を遂げてきた。つまり、想像した事は時間がかかっても実現してきたのだ、人間は。 これから先、何年何十年も後になったら、もしかしたら――人型ロボットが開発されて実用されるかもしれない。そうしたら、今はPCの中から言ってくるだけのアルだけれど――もしそうなったら――……… 考えただけで恥ずかしさに耐えられなくなって、エドワードは熱っぽくなった頬を掌でパタパタと仰いだ。 end ←text top |