nearly equal

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newmain1/2memo


【OSAL】3


――僕は確かに自作OSを作ったりしてたけど、それはあくまでも自分が使うのに都合のいいシステムを組んでた、っていうだけで…インターフェースを管理できるような本格的なOSのプログラミングはやってない。

アルフォンスなりに、専門知識のないエドワードの為に噛み砕いて説明してくれたんだと思う。でもやっぱり完全に理解はできなかった。

――ましてや、メモリっていうのはCD-ROMやHDみたいな記録装置と違って、データを保存したりできるような部品じゃないんだ。僕が譲ったメモリをエドのPCに増設したからって、僕のPCのデータがメモリを通じてエドのPCに反映されるって事は、ない。

こういう時は、人並み外れた記憶力を持ち合わせた自分の優秀な頭脳が憎らしい。解らないならすっぱり記憶から飛んでしまえばいいのに、いつまでも頭に残ってエンドレスリピートで反芻しやがるのだ。やめろやめろ、何度繰り返されても理解できないし理解したくない。

――それは、"バグ"だと思う…。

…トドメだ。機械に詳しくないといっても、それくらいはエドワードにだってわかる。

友人から譲ってもらったメモリをPCに増設してから現れた疑似OSの事を――OSの容貌、名前までがアルフォンスと同じ事までは口にしなかったが――アルフォンスに訊ねてみたエドワードは、思いもよらない返答に呆然となった。
なんだかドッと疲れてしまって、エドワードはそれ以上話を続ける事も、肉に手を付ける事もできなくなってしまった。疲労で倒れた時も、インフルで高熱を出した時も「肉食って寝てりゃ治る」が合言葉だったエドワードには有り得ない事態だ。
アルフォンスは食事が済んだ後も何か言いたげだったが、口数も減ったエドワードを心配して送ってくれて、自宅近くで別れた。



家に帰っても直ぐにはPCを開く気分にはなれず、エドワードはPCの置いてある卓袱台の前に座り込んで頭を抱えていた。しかし、小一時間ほど悩んで――エドワードはPCの電源を入れた。結局、本人に聞くのが一番早いと思ったのだ。

あの日、突然エドワードのPCに現れたアル。彼は優秀なお手伝いさんで、いい話し相手で、未知との遭遇で憑物神で、結局何者なのか解らなくて、なのにいつの間にか、一番身近な友達のように、エドワードは勝手に思い込んでいた。
勿論、アルがシステムバグである可能性はエドワードだって考えていた。しかしエドワードが素人考えで口にする「バグ」と、機械工学科で学んでいるアルフォンスが口にした「バグ」では、事の重大さが違う――気がする。

もし、本当にアルがバグだったら――エドワード自身のPCはウイルスやバグと類で被害を被った事は無いが、友人達や校内の共有PCがウイルスに感染して大事故になった事などは耳にした事があった。バグがなんたるかは明確に理解出来ていないエドワードでも、PCやシステムにとって、バグの存在が良いものではない事は、なんとなく解る。
アルがバグだったら。今までが安全だったからといって、今後もエドワードのPCのデータやシステムが安全だとは必ずしも言い切れない。実際アルフォンスも「メーカーへ修理に出してデバッグした方がいい」と言っていた。でも、修理に出してデバッグしたら――


アルは、どうなる?


何故か泣きたい気分になって、そんな気分を誤魔化そうと、普段は飲まないのにたまたま冷蔵庫に入っていたビールを持ち出して、それとなく本人に尋ねるつもりでPCの前に座ったエドワードだったのだが――



「お前、いったい、何なの……?」


自分でも嫌になるほどしゃがれた声が出て、エドワードは情けなくて泣きたくなった。


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