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【マイルーム計画】5


最近、エドの様子がおかしい。


僕に隠れて何かしら企んでいるようだった。確証はないけど、僕に使った事のない見慣れないディスクを何枚か持っているし、大学だと校内の共用PCを使っているようで、僕を使う頻度が格段に落ちている。

まさか、他のPCと浮気しているんじゃないだろうか。

僕が知る限り、エドは最新機種のスペックより使い勝手重視だから、僕が入っているこのPCが壊れない限り、新しいPCを探したりはしないだろう。僕がいうのもなんだけど、僕というOSが搭載されてからのエドのPCの稼働状況は良好で、エドの満足度は100%に近い筈だ。

何をこそこそやっているのか、僕は敢えて尋ねなかった。エドは僕が何も気付いていない(振りをしている)事にそわそわとおかしな感じで接し、そんな日が一週間ほど立つと、エドはニコニコしながら僕に件のディスクを見せてきた。

「これ、お前に」

入れられたディスクをインストール前にざっと読むと、どうやらポスペの部屋データを改造した物だった。

「これ、エドが作ったの?」
「うん。知り合いが作ったデータ弄ってつくったんだけど、お前、着の身着のままだし部屋もねーじゃん?プライバシーってのも変だけど、部屋とかベッドとかあったらいいかなと思って…気に入ってくれるといいんだけど」

ニコニコ満面の笑みのエドに促されて、僅かな不安はあるもののインストールを開始する。展開されていくデータを見ていくと、ポスペハウスのような1Rの一戸建てが一軒建った。

「おお、なかなかいいじゃん。入ってみろよ、アル」
「う、うん」


黒い重厚な扉は良く言えばゴシック。お化け屋敷かドラキュラ城かといったおどろおどろしい雰囲気が流れている。
モニターの向こうで満面の笑みを浮かべるエドに促され、僕のスケールを部屋のデータサイズと同じにして恐る恐るドアを開いた。

眩しい。黒と赤の市松模様の壁紙が目にチカチカするよ、エド。

「どうだ?パンクっぽくって良くねえ?」
「う、うん。パンクと言われればパンクだね。」

1Rの部屋にところ狭しと置かれた置物はもしかしてオーパーツだろうか。僕が絶句していると、エドはすっかりアンテナを萎えさせて落ち込んでいた。

「気に入らない?気に入らなかったら直していいぜ」
「いや…いやいやいや…でも取りあえず壁紙だけ、もうちょっと落ち着く色に替えさせてもらおうかな…」

いけない、せっかくエドが僕の為にこうして部屋をこさえてくれたのに、お礼もまだだった。

「ありがとう、エド」
「いや、いいんだ。たいしたもんじゃねえし」
「でも、僕の為に作ってくれたんでしょ?」

このデータを作る為に、一週間の時間を費やした事を知っている。
その一週間、エドが僕の事を考えて、僕の為にその破壊的なセンスの頭を悩ませてこの部屋を作り上げた事を知っている。

「嬉しい、ありがとうエド」
「…おう」

照れ臭そうに顔を背けるエドが愛おしい。
部屋はエドに気付かれないように少しずつ少しずつ模様替えすればいい。僕がありったけの愛情を込めた笑顔を向けると、エドは頬を赤らめて呟いた。

「クローゼットに着替えもあるから…」
「うっ、うわあ、みてもいい?」

着替え、と聞いて思わずどもってしまった。どんな黒ミサ仕様の服が用意された事だろう。震える指でそこを開けると、クローゼットの中には意外にも普通のシャツが並んでいた。色は若干普通ではなかったけれど。

そして、そこにはシャツ以外にも小物がいくつか用意されていて、その中にあったのは、シルバーフレームの…

「…眼鏡?」
「おう、似合うと思って」

嫌な予感がして、ウィンドウの裏でインストールしたデータを頭からさらう。

たいして時間もかからずに、奴の痕跡を見つけた。
何故すぐに気付かなかったのか。プログラムを書く時の細かな癖も同じ。
エドからのサプライズに、僕らしくもなく舞い上がってしまったようだ。

アルファベットの羅列の中に、それはあった。いつものように、データの真ん中あたりに隠すようにぽつりと署名されている、プログラムライターの名前。


――アルフォンス・エルリック。


それは僕の最初の持ち主で、ついでに僕を作り出した創造主の名前だった。


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