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【マイルーム計画】2


機械科実習室は大学の本館となり、別館二号棟の一階端にある。

薬学部のエドワードは本来立ち入る用のない場所だが、実習室の場所を正確に記憶していたのは一昨年、エドワード愛用の旧型滴定器が壊れた時に修理で何日かご厄介になったからだった。

高校の体育以来のダッシュは300mが限界だったが、エドワードは息を切らして体力の続く限り走った。もしかしたらNASAの工作員が勘づいて逃亡を図るかもしれない。エドワードは機械科実習室へと駆け込んだ。


「っは、あっ、アル、フォ、ンス、はっ、居るかっ…!」

ぜひぜひと喉を鳴らしながらドアを開け放つと、実習室に居た学生が何事かと顔を上げた。肩で息をしながら見回せば見知った顔もいくつかある。取り敢えず名前を知っている学生の元によろけながら行き、水分を求めた。

「アルフォンス?アルフォンスなら今、買い出しに出てるけど…」

頂いた缶コーヒーを飲んで喉を潤すと、漸くまともに声を出せるようになる。

「すぐ戻ってくる?」
「購買までだからすぐ来ると思うけど…なに、また滴定器?」

滴定器の修理を手伝ってくれた同級生に言われ、違う違うと首を振った。

「アルフォンスっつう奴に用があんだよ」
「ふーん、知り合いだったんだ?お前ら」
「いや会ったことないけど」
「はぁ?なにそれ」

同級生と他愛ない会話をしながらも、エドワードは注意深く実習室のドアを見つめてアルフォンスが戻ってくるのを待ち構えた。
相手はNASAの工作員だ。正確にはNASAの工作員ではないけれど、それくらい計り知れない相手だ。何しろアルフォンスみたいなOSを造り出した張本人であるのだから――たぶん。

手ぶらで来てしまったので当のアルフォンスOSはここにはないが、OSと言えば伝わるだろう。何のためにあんなOSを設計したのか、何故それがエドワードの手元に紛れ込んだのか。もしかしたらそれこそ巨大な陰謀に現在進行形で巻き込まれているのかもしれない。まあそれは無いだろうけど。

そんな事を考えているうち、実習室のドアが静かに開けられた。エドワードの心臓がどくりと音をたてる。

「お、アルフォンスー。お前にお客さんだぞー」

同級生が隣で呑気に声を上げるのを意識の外でぼんやり聴きながら、エドワードは目を見開いた。

「――お客?」

なんという事か、音声までエドワードのPCに住み着いた妖精と同じではないか。

唯一妖精とは違う装備品であるシルバーフレームの眼鏡を上に押し上げながら、アルフォンスOSの生みの親と思われるアルフォンス・エルリックは、口元に笑みを浮かべて、エドワードを見た。

「僕に、何かご用でしょうか?」

アルフォンスOS同様、やはり、無駄に男前の整った顔で。


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