nearly equal

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【オペレーティングシステム アルフォンス】


機械や家財は無機質だが、長年使い続けた物には魂が宿るという憑物神の伝承をエドワードは結構本気で信じている。その非科学的だが八百万の神の国らしい信仰は、最近になってエドワードに事実は小説より奇なりという言葉も教えてくれた。




「最近よくフリーズすんのはやっぱお前のせいなのか」
『確かに僕はだいぶ容量くってると思うけど、基本的にデータ多すぎなんだよ。いらないアプリは全部削除すればいいだろ。削除って言ってもゴミ箱ぶちこんだりしないでよね』

最近やけに凍るようになった自家PCだが、どうやら原因は増設したメモリにあったようだ。
友人の友人のそのまた友人からタダで手に入れたメモリは最初こそ具合も良く、エドワードの使い古したノートPCの使い勝手を今までとは段違いに向上させてくれた。それはオマケでついてきた新しいOSのおかげでもあるのだけれど。

『アプリはアンインストールだよ。もし文字化けなんてしたら、僕の言語が危険だ』
「あ、見てぇそれ!」
『やだよ、カッコ悪い!』


14インチのモニターで情けない表情を浮かべる映像の名前は、アルフォンス。自分でそう名乗った。
頂き物のメモリをセットして立ち上げたらエドワードのPC画面にアルフォンスがいて、デスクトップか何かだと思ったら突然スピーカーを使って喋り出した。
なんとかナビだかとも名乗った気がするけど、よく覚えていない。しかしながらアルフォンスの助言で、PCの操作性は格段に向上したのは事実。非日常とかSFより、エドワードは現実問題としてアルフォンスを「役に立つソフト」と認識して受け入れる事に成功した。

『買い換えとか考えてるんだろうけど、僕の事は残してね。そして新しいPCに移してください』
「オレ、ここしばらくWindowsの立ち上げ画面すら見てない気がする」
『あんな窓より僕のが断然役に立つよ!』

買い換えを考えると、それまで調子の悪かった家電品は捨てられるのを察したように正常に稼働する。それはよく聞く現象だが、こうも自己主張の激しい家電はエドワードのPC内のOSだけだろう。



アルフォンスが電脳世界の憑物神なのか奇跡的に発生したバグなのか、はたまたNASAで極秘開発された人工知能がエドワードの手元に紛れたのか、そんな事はわからないけれど。

アルフォンスと出会って二ヶ月。エドワードは機械もヤキモチをやく、という事実を知った。


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