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【ボクノ ナマエハ あるふぉんす デス】5


自宅に帰り着いたからと言ってなんら事情が変わる訳でもなく、エドワードは再び開いたPCのモニターを睨み付けていた。

『うわぁ…すごい眼光だね』

エドワードの目付きは、はっきり言って悪い。
元々吊り目だし視力もそれほど良くないから、何かを見るとどうしても睨み付けるような雰囲気が出てしまうらしい。そうしてところ構わずガン飛ばしをしていたら、眉間には深い深い縦皺が刻まれて取れなくなった。別に気にはしていないが。

相変わらずモニターでニコニコと微笑んでいる男は、いつの間にかオプションを増やして自身の周りに小花を飛ばしていた。少女趣味なのか。そう思ったけれど口には出さず、男の背後にあるテキストデータへのショートカットにカーソルを合わせた。

クリックすると普通にウィンドウが開き、男はウィンドウの背後に隠れる形になる。
抜群にスタイルの良い黒いシャツの半身がウィンドウの端から見切れてはいるが。

アルフォンスという余計な画像があるけれど、PCはいつもと変わらず普通に稼動している事はわかった。エドワードはそのまま課題に取り掛かる事にした。
課題の提出は明後日までだ。本当は昨日の晩もこれに掛かるつもりだったのに、この男のせいで手に付かなかった。

『エド』

アルフォンスがウィンドウの横から物言いたげに顔を出す。それを無視してキーを打ち続ける。

『エド』

アルフォンスの正体も何も全く分からないが、課題は待ってくれない。グラフも作成しなくちゃならないしスペクトルデータもまとめなくちゃいけないし、構造式も落としてこなくては。やることがありすぎて時間が足りないので、とりあえず未知は課題が終わるまで無視を決め込もう。そう考えていたエドワードだったのだが。

『構造式のデータ、まとめておこうか?』
「……は?」
『構造式のデータ、ファイルに突っ込んであるだろ?整理した方が使い易いかな、って思って。もちろん迷惑ならしないけど…演算と処理は、言ってくれれば僕が手伝えるよ』
 
こちらの様子を伺うように顔を半分だけ覗かせたアルフォンスが、オドオドと申し出てきた。

「そんな事、できんの?」
『できるよ。オペレーティングシステムに近い、って言ったろ。このPCに入ってるデータをカテゴリ別にまとめる位なら一分もかからないし』

未知は、優秀なお手伝いさんだった。

エドワードは即座に無視を止めてお手伝いさんに仕事を回し、お手伝いさんは驚くべきスピードでそれを片付けていく。しかもスペクトルデータや構造式をカテゴリ別、五十音別と、エドワードが面倒でほったらかしにしていた分類別データベースまで作ってくれた。
実験過程を文字で打ち込み、お手伝いさんがまとめてくれたデータから必要な物を引っ張り出した物を合わせてプリントし、課題は一時間ほどで終わった。エドワードは頬が熱くなるのを止められない。感激で泣きそうですらある。

『言ったろ?僕は役に立つよ、って』

はっきりそう言い切ったアルフォンスの表情が少しばかり生意気に思えたが、その高速処理を見せ付けられたエドワードは思わず「これからもよろしく」とモニターに向かって頭を下げてしまった。

モニターの中ではアルフォンスはまるで恋する相手を見るような甘やかな表情を浮かべていた。

熱い視線で見詰められていたエドワードの方は、多少の混乱は残しながらも課題の完成で緊張感がスポッと抜け落ち、アルフォンスのそんな眼差しにも全く気付かなかった。


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