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【ボクノ ナマエハ あるふぉんす デス】1


エドワードはそれ程機械に詳しくはない。ゲームやネットサーフィンの面白さや所有するPCのスペックを自慢を語る友人達を尻目に、エドワードは自分のPCを持っていなかったし、大学に入学するまでパソコンの授業でしかPCに触れた事がなかった。要は興味がなかったのだ。

しかし大学生となり、レポートや課題に必要な資料のためにどうしてもPCが必要になった。PCを所有していなかったエドワードは最初、大学が貸し出しているPCをレンタルするつもりだったのだが、旧型で動作に問題があるとか、紛失したり破損すると色々面倒だと耳に挟んだので、バイトで貯めた給料をはたいて自分でPCを購入する事にした。
まず向かった大学近くの家電店では店員に、大容量、高性能高機能の最新型ノートPCを勧められたが予算オーバーで断念。PCに詳しい友人に、レポート作成とデータ管理と、ちょっとネット検索ができればそれで良いのだけれどと相談すると、リユースを扱っている家電店を教えられ、そこで程度の良い国内メーカーの中古PCを見つけたのでエドワードはそれを購入する事にした。







大学内の学生図書館の隅の席でエドワードは硬直し、持ち込んだPCのモニターを睨みつけていた。

硬直しながらも指先をどうにか動かし、PCのキーを叩く。しかしPC画面上に反応はない。図書館の重厚な机がガタガタと音を立てるほどの力で再びキーを叩いたが、PCは全く反応しない。エンターキーを連打しても駄目だった。カーソルだけは動くが、動くだけで右も左もクリックは反応しない。

フリーズ。

ついでにエドワードもフリーズ。


「…またかよ…」

エドワードは溜め息を吐きながら、がっくりと肩を落とした。

最後に保存したのはどの辺りだっただろう。調子が出てかなりハイペースで書き進めていたから、もしかしたら中盤あたりだったかもしれない。
それでも一縷の望みをかけ、強制終了、再起動させた後すぐにデータを探した。が、出てきたのは前日保存したレポートのデータだけ。思わず奥歯を噛み締めた。

ワードとエクセルくらいしか使わない、と油断して、スペックより価格重視で購入したPCは最近ずっとこんな調子だ。作業が進んだ頃を狙ったようにフリーズを起こす。そう頻繁ではないからとマメにデータの保存を心掛けているけれど、筆がのってくると止まらなくなり、それを見計らったようにPCがフリーズするものだから、なんだか嫌がらせを受けているような気にさえなってしまう。

PCに嫌われている――そう友人に愚痴ったら、2000なんて古いOSを使っているからだとか、せめてメモリを増設しろとか、何かの魔法の呪文のような事を言われた。
最初にフリーズを目にした時、「パソコン壊れた」と本気で慌てたエドワードだ。高校時代にPCの授業があった事にはあったのだが、エドワードは起動とアプリケーションの立ち上げと保存とコピーとペーストと印刷と終了、そして電源の切り方しか覚えなかった。フリーズが多発するようになって、最近ようやく再起動のコマンドを覚えた。要は素人なのだ。

「ぁぁあああぅ……」

切なく鳴いてみても、消えてしまったレポートは還ってこない。なんで保存しとかなかったんだろう、とフリーズを起こす度に胸を絞め上げる後悔の思いで、今日もまた心が絞め上げられた。自分には学習能力がないのかもしれないと毎回がっかりするのだから、学習能力はやはり皆無なんだろう。

フリーズのショックで、殆ど完成状態だったレポートの文面も頭から飛んでしまった。エドワードは項垂れながらも、再起動させたPCのキーを再び叩き出した。指が不自然に重く感じるのは気のせいではないだろう。吐息ではなく、魂が抜け出しているような重い溜め息が知らず漏れていた。

最初に購入費をケチった自分が悪いのだが、毎度こうだと流石に疲れるし効率も悪い。バイト代が入ったら新しいPCに買い換えるべきなのか――そう悩んでいたエドワードのところに「貰い物の2GBのメモリがあんだけど、いる?」と友人からメールが届いたのは、戦々恐々しながらどうにかレポートを仕上げた、その日の夜だった。


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