6 「…オレ、なにした……?」 震え上がりながら、エドワードは縋るような思いでアルフォンスを見上げた。 その時初めて気付いたのだが、エドワードの素足に触れるアルフォンスもまた、素足だった。 気付いたエドワードが驚いて腰を引くより早く、尻を揉んでいたアルフォンスの手がエドワードの腰を近くに引き寄せ、長い脚を絡めてきた。上半身を抑え込まれ、脚を封じられたエドワードは全く身動きが出来なくなる。 「…アレはイケナイよ、兄さん…」 アレ、と言われてもエドワードには何の事やらさっぱりわからない。寝呆けたエドワードの無意識の行動なのだから、エドワードに非がない事はアルフォンスにも分かっている。分かっているけれど、アレを見たのがもし自分以外の誰かだったら―― 「…兄さん、寝呆けて椅子の上でお尻フリフリして――可愛かったけど、駄目だよ。僕以外の前でそんな、いやらしい事をしちゃ」 涙目になるエドワードの白い額に唇を落とし、アルフォンスは優しげに微笑んで見せる。しかし、やはり目だけは全く笑っていなかったので、エドワードは益々涙目になった。 「あんな事、二度とないように――ちゃんとマッサージしてあげるから、ね?」 それからというもの、エドワードはデスクワークが続くと定期的に何処かに姿を眩ますようになった。 そして同時に、エドワードの姿が消えると、穏やかな笑みを浮かべながらも何やら不穏な雰囲気を纏ったアルフォンスが何処からともなく現れるようになって、その光景はいつしか「中央司令部七不思議のひとつ」として密かに語られるようになったのだった。 end. ←text top |