5 「ひぃっ!」 「…兄さん、丸二日デスクワークだったんだってね」 もみもみもみもみ。男は妙に熱い息を吐き出しながら、エドワードの尻を熱心に揉みほぐした。 確かにエドワードは丸二日デスクにかじり付いていた。おかげで座りっぱなしだった尻が痛い。 「お尻、痛くなっちゃったでしょ…?可哀想に…」 もみもみもみもみ…。 「………」 尻を揉みほぐす男の息遣いは、益々熱く、荒くなっていく。 中間管理職であるエドワードのデスクの椅子は、お世辞にも良いと言える仕様ではない。硬い椅子の上からトイレ以外には微塵も動かず、ただひたすら書類と睨めっこしていたエドワードの臀部は確かに痛かった。だが、可哀想にとマッサージされる程の痛みではないし、椅子から解放された今では殆ど気にならない程度の痛さだ。 アルフォンスだってデスクワークをするのだからそれぐらい分かっているだろうに、何故、なんでオレは尻を揉みほぐされている? 「兄さんのお尻、真っ赤になってたよ?可哀想に…まだ痛い?大丈夫?」 もみもみ、はあはあ、もみもみ。 「……………」 エドワードは首を傾げた。 意識を無くす前、エドワードは食堂にいた筈だった。ぶっ倒れていたエドワードに、何処からかアルフォンスが寄ってきた事は覚えている。でもそこからの記憶はない。自分で仮眠室に来た覚えはないから、眠ってしまったエドワードをアルフォンスがここまで運んでくれたのだろうか。アルフォンスは勤務中だった筈だが、どうして同じベッドで、エドワードの隣で寝そべっているのか。もう勤務は終わったのか。今、何時なんだ。 なあ、アルフォンス。 なんでオレ、下、何にも履いてないんだ? 様々な疑問が浮かび上がり、エドワードがすっかり固まってしまっていると、アルフォンスは獣のような荒々しい息を吐き出す唇をエドワードの耳に寄せて、これまた荒々しい息遣いで熱く囁いた。 「お尻が痛かったのは可哀想だと思うけど、アレは駄目だよ、兄さん」 「あ、あ、アレ…?」 もみもみもみもみ。いまだエドワードの尻を揉みほぐしながら、アルフォンスは口元に笑みを浮かべていた。しかし目は全く笑っていなかった。仮眠室の室内が灯りを落として薄暗いとはいえ、目も慣れて間近で顔を合わせているエドワードは、仄暗い色を含んだ眼孔に真っ正面から見据えられ、憐れな程に震え上がった。 ←text top |