nearly equal

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揚羽蝶は華に縛られ3


顎を伝わり鏡張りの床に垂れる唾液にエドワードは酷く狼狽えた。

「あぁ、気にしないでいいよ。後で掃除するから」

腕を引かれて鏡張りのフロアに置かれたマットレスの上に座ったエドワードは、「外してくれ」とアルフォンスに伝えようとしたが、口からは呻き声に似た音と唾液が漏れるだけだった。

鏡に映る自分と暫く見詰め合い、羞恥心と変な高揚感に酔っていると、エドワードを強烈な睡魔が襲った。

この状況で…と思ったが、背中で腕を縛られているせいか、座り込むとどうしても前かがみの姿勢になってしまうせいで瞼が重いのだろう、とエドワードが上半身を起こすと、アルフォンスとばっちり目が合う。

「目がトロンとしてる。縄酔いしたかな?」

縄酔いとは、緊縛を受けた側が最中に眠くなる事を言う。
緊縛師に全てを支配されている、と云う安心感から、縄を受けた側が感じる状態だが、そんな事をエドワードが知る筈も無い。

「服の上からで感じるなんて……凄い素質だ」

アルフォンスの双眸に怪しい光が差したが、エドワードはぼんやりとアルフォンスの瞳を見上げる。

「もっと気持ちイイのをあげる。欲しいでしょう?」
「ん…」

アルフォンスの言葉に、エドワードは頬を染めて小さく頷いた。
本当はもう眠くて眠くて、快楽なんて別に欲しくはないのだが、アルフォンスの言葉に従う事は、何故か気持ち良い。

「服、脱いで」

ラバーテープを外され、エドワードは力の入らない身体をどうにか動かしてパーカーを脱ぐ。
上半身が裸になると、アルフォンスがまたエドワードの腕を背中で縛りあげるが、先程とは違って腕だけを縛られる。

「あぁ…やっぱり綺麗だ」

アルフォンスは目を細めて、エドワードの全身を舐めるように見詰めている。
エドワードは鏡に映る自分の姿に、身体を震わせて見入った。

黒い麻縄で縛られた身体。
口枷のせいで溢れて止まらない唾液が胸を汚して、酷く卑猥に映る。

「これは外そうか。下、脱がしていいよね?」

口枷が外され、エドワードは呼吸が楽になる。はっはっと肩で息をしていると、下着ごとジーンズを引き下ろされて、エドワードは丸裸になった。

「ぁ…?」
「凄く綺麗だね…エド…」

アルフォンスに肌を見られているのに、恥ずかしさも恐れも無い。「綺麗」と褒められて、嬉しさに身体が震える。

エドワードの下半身はしっかりと勃ちあがり、先端からは先走りの蜜がぷっくりと溢れて止まらない。

アルフォンスの視線がそこに注がれているのに気付いて、羞恥を感じながらもエドワードの身体は更更に興奮しているのか、胸の突起まで赤く色付き硬く尖りだした。

勝手に高まっていく身体を制御出来ず、恐怖さえ感じるエドワードの背中を、アルフォンスの大きなてのひらが撫でていく。

「縛る場所もね、適当じゃないんだ…性感帯の上を縄が這う様に通して、ポイントには結び目を付けるんだ。だからエドの身体が反応するのは変な事じゃないんだよ」

耳元で優しく囁かれて、エドワードの体が跳ね上がる。

「解放されるのと、このまま縛り続けるの。どっちがいい?」

アルフォンスを仰ぎ見ると、相変わらずの穏やかな笑顔。

しかし瞳だけは最初に見た穏やかな朝焼けのような光は消え失せ、真冬の満月のように冴え冴えとした光を宿していた。

「………、て」
「うん?」
「このまま、縛って……」

エドワードの言葉に、アルフォンスの笑みが深くなる。

完全に、堕ちた。

性癖は至ってノーマルだと思っていたのに、今はもうアルフォンスに与えられる刺激に完全に捕らわれてしまっている。

大脳皮質の深遠に眠っていた本性を引きずり出されたのか、それとも緊縛師の手にかかれば誰でもこうなってしまうのか……エドワードにはわからないが、そんな事も今はどうでも良かった。

もっと強い刺激が欲しい。
じれったくて身体を捻ると、エドワードの腕を縛る縄が背中に擦れて、それにまた感じてしまう。

「んぅ……」
「エド、こっち見て」

アルフォンスに顎を掬われ、重たい瞼を開くと驚く程近くにアルフォンスの顔が合った。
ゆっくりと近付いてくる顔。それ以上近付いたらぶつかる…と思っていると案の定、唇がぶつかった。

されるままに大人しくしていると、合わせられたアルフォンスの唇が軽く開き、エドワードの唇を啄んでくる。
くすぐったいようなもどかしいような感覚に耐えられなくて、エドワードは顔を突き出してアルフォンスに深く口付けた。

舌を差し込むと、アルフォンスの舌がエドワードのそれと戯れるように動き、舌裏や唇を舐めてくる。
背筋が痺れて、エドワードは堪らずアルフォンスに胸を擦り付けた。

アルフォンスのシャツに乳首が擦れて、気持ちイイ。
口内を舌で擽られ、エドワードの身体は快楽に小刻みに震える。

「もう…たまんないなぁ…っ」

唇を離して、アルフォンスが困ったような顔をした。
何を言っているのか分からずぼんやりしていると、アルフォンスはエドワードから身体を離し、黒い麻紐をもう一組手にして戻ってくる。

「今迄はこんな事なかったのに…」

アルフォンスはふてくされた顔で言いながら、それでも優しい手つきでエドワードの身体に紐を絡めていく。


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