※会話文

「だめだ。許可できない」

『何も二度と帰って来ないわけじゃないんですよ。いいじゃないですか』

「だ、め、だ。それに、例え話でも“二度と帰らない”なんて口にしないでくれ」

『……』

「名前」

『はぁ…すみません。もう言いません』

「そうしてくれ、ペロリン♪」

『でも、出かけることは諦められませんよ。大事な友人の、一生に一度の結婚式なんです。参列したいじゃないですか』

「そのあいだどれだけ会えないと思っているんだ」

『どれだけって、たった一週間ほどのことですよ。あっと言う間です』

「たった?! そんなに長いことおまえに会えないなんて、おれには考えられない!」

『そこまで長くないでしょう? 毎日合わせている顔が、少しいなくなるだけですよ』

「無理だ。里帰りは許可できない」

『…もう! いい加減にしてくださいまし! あなたに嫁いでから、ただの一度も帰ってないんですよ! 一週間くらいいいじゃないですか!』

「親もないから帰れなくても問題ないと言ったのは名前じゃないか」

『そりゃあ、まさか数年単位で帰省を阻まれるとは思っておりませんでしたからね!』

「何をそんなに帰りたがる? ここにはおれがいて、ママがいて、弟妹たちがいて。それで十分だろう?」

『だから、友人の、結婚式に、参列したいんですよ』

「祝いなら手紙でいいじゃないか。手隙の者に届けさせよう。おまえが出向くことはない」

『それじゃあ晴れ姿が見られないでしょう』

「写真を撮って来させる」

『はぁ…』

「もういいだろう? 諦めろ、ペロリン♪」

『…一緒に行くと言うのはダメですか?』

「…一緒に?」

『そうです。一緒なら離れずに済みます。それに友人にもペロスペローさまを紹介できます。私の自慢の旦那さまだって』

「! …じ、自慢の…」

『夫婦で参列しましょうよ。ね?』

「……出発はいつの予定だ? 一週間も空けるとなるとスケジュールの調整が…」

『! まだずいぶん余裕があります。私もお手伝いしますから、必ず一緒に参列しましょうね!』

「ああ、そうだな。いっそそのまましばらく旅行と洒落込むのも悪くない、ペロリン♪」

惚れたモン負け


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