※会話文
「ああ、目を覚ましたか」
『! ひ、え……』
「そう怯えるな、と言っても無理な話なのだろうな」
『……あ、あなた、は、一体…ここは……なぜ、私は……?』
「おれはシャーロット・カタクリ。ここは万国と言って、ビッグ・マムの治める国だ。聞いたことくらいはあるだろう?」
『ビ、ビッグ・マムの……?』
「! 泣かないでくれ。危害を加えるつもりはない」
『ひっく…そんなこと、言われても…』
「…甘い菓子は好きか?」
『え…?』
「ちょうどドーナツが揚がったところなんだ」
『どー、なつ…?』
「?! まさかドーナツを知らないのか…?! 丸くて、真ん中に穴の開いた、甘い菓子だ」
『ど、ドーナツは知ってますよ…!』
「そうか。それは失礼した」
『…ドーナツ、お好きなんですか…?』
「あァ、好きだ。おまえはどうだ? ドーナツは好きか?」
『え…まあ…嫌いではないです…』
「なら一緒に食べよう。すぐ用意する」
『は、はぁ…』
◆
「うまいか?」
『は、はい…。…あの。あなたは食べないんですか…?』
「おれはあとで食べる」
『…さっき一緒にって…』
「あァ、そうだったな。少し事情があるんだ。気にせず食べてくれ」
『…キバ、ですか?』
「! 覚えていたのか」
『いえ、あんまり…その…怖くて…。私、それで気絶したんですね…?』
「悪かった。本当に、怯えさせる気はなかったんだ。怖がらせないようにするつもりが、余計怖い思いをさせてしまった」
『わ、私のほうこそごめんなさい…何が何だかわからなくて、ただただ怖くて…パニックだったんです…でも、とても失礼なことでした。ごめんなさい』
「…やはりおまえは…」
『?』
「いや。それより、おかわりはどうだ? まだまだたくさんあるぞ」
『こ、これ以上は結構です…。…あの、私、その…』
「ん? …! いいのか?」
『もう怖くないので、目の前で食べてもらっても、って、え?』
「悪い。混乱させたな。それで、いいのか? おれが一緒に食事しても?」
『はい、大丈夫です。もう、落ち着きました。それに、おやつはひとりよりふたりで食べたほうが美味しいです』
「…そうだな。ではお言葉に甘えよう」
◆
『ところで、なぜカタクリさんは私を連れて来たんですか?』
「ああ、欲しかったんだ」
『えっ?』
「奪って来て正解だった。おまえはおれの見ていたままの、想像通りの娘だったよ」
『?』
噛み合った歯車
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