※現パロ
大好きな片倉さんとのデートのために奮発して新しいスカートを買った。
少し褪せた色合いの赤のスカート。大人っぽいカラーだけれど裾のレースがとっても可愛くて一目惚れ。
片倉さん、似合ってるって褒めてくれるかしら。
お化粧もヘアメイクもばっちりで、呼び鈴が鳴って待ってましたと開けたドアの前には今日も渋くてかっこいい片倉さんの姿。
「おはようさん。…そのスカートは…」
『この前買ったの。可愛いでしょう?』
褒めて、褒めてと、まるで犬にでもなった気分だ。ご主人様に褒めて欲しくてたまらないの。あなたのために着飾っているのに、片倉さん、一度だって私の服を似合っているねと褒めてくれたことがないんだもの。デートのたび、今日こそは、って意気込んでいるのに。
「…今日は寒い。その薄着じゃ、風邪引いちまうかもな」
『え? ああ、そうだね、寒いね』
「これ、着てろ。少しはマシだろ」
渡されたのは片倉さんがよく着ている深い青のコート。シックなカラーは片倉さんによく似合う。
風邪の心配までしてくれて、片倉さんは本当に優しいね、嬉しいよ。
だけどこのコートを羽織ったら、せっかく買った私の赤いスカートは見えなくなってしまうんだ。ねえ、もしかして似合っていなかったから、隠そうとするの、ねえ、片倉さん、ねえ。
「ほら、どうした。置いてっちまうぞ」
『あ、待って、片倉さん』
本当はもう、ずっと昔に置いて行かれたままの私。
崩れたなにかtitle by
愛執
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