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これの対
※現パロ
愛しいあいつとの週末を過ごすため、早め早めで仕事をこなしてきた。上司の子息にはにやけ顔でお熱いねえとからかわれたが、あいつに会いたくて仕事を早く片付けたことは事実なので曖昧に笑い返しておいた。
彼女の家に着いて、ドア横の呼び鈴を鳴らすと、一分もせぬ間にドアが開いた。
そこにいるのは言うまでもなく愛しい恋人の名前。
薄化粧の彼女がまとうのは、淡い色のカーディガンと、褪せた赤色のスカート。
「おはようさん。…そのスカートは…」
『この前買ったの。可愛いでしょう?』
正直に言えば、文句なしに可愛い。
ただ引っかかるのはその色。どうしても好きになれない赤。
名前は勝負服とやらに赤を選ぶことが多いが、どう言うわけでそうしているのだろうか。まさか前世に背負った祖国の色を、未だに背負うつもりでいるのだろうか。
「…今日は寒い。その薄着じゃ、風邪引いちまうかもな」
『え? ああ、そうだね、寒いね』
「これ、着てろ。少しはマシだろ」
俺にはどうにも、名前に似合う赤が疎ましく思えて仕方なかった。
今はもう俺だけの名前であるのに、あの色がまた、ふたりのあいだを邪魔するようで気に食わない。
手渡すコートは深い青色。彼女の赤いスカートを覆い隠し、彼女を紺青に、そう、俺の色に染める優越と安心感。
そんな独り善がりが、名前を傷付けているとも知らないで。
「ほら、どうした。置いてっちまうぞ」
『あ、待って、片倉さん』
今も前世に囚われる、ちっぽけで情けないままの俺。
臆病者が牙を向くtitle by
愛執
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