「隊長、今日こそはお食事…「断る」
毎日のようにアタックを続けているアリスに皆も見慣れて驚く事も、気にかける事もなくなった。
「撃沈……」
誘うタイミングをウェスカーの機嫌が良い時を狙ってみたり、昼前に軽く言ってみたり、退勤前に懇願するように言ってみたり、と、彼女なりに工夫はしているようだったが、効果は見られない。
しょんぼりとしているアリスにジルは苦笑した。
「よく続くわね…。なんだっけ?お詫びだっけ?」
「認めて貰いたいのが一番だけど……、まずはお詫びだ、ってリチャードが…」
「ふーん……お詫び、ね。なんだ、本気でウェスカーと食事に行きたいのかと思ったわ」
ジルがほっとしたように言うのでアリスは目を丸くした。
「もちろん行きたいよ、ご飯」
「嘘でしょ!?」
アリスに負けず劣らずジルも驚き思わず声が大きくなってしまった。ジルは慌てて周りを見渡してから声を潜めるともう一度、本気で言ってる?と繰り返した。
「行きたくないのに誘わないよ」
「物好きね……」
「そうかな?ジルも隊長と食事行ってみたいって思うでしょ?」
「私が!?嫌よ、そんな!」
ジルはもう可笑しくて笑いを堪えている。アリスは不思議そうに口を尖らせながら、ジルに批判の目を向けた。
「きっと面白い話沢山聞けるよ、ためになる話とか」
「私は遠慮しておくわ」
説教されるに違いないとジルは思ったが、アリスはそんな事微塵も考えていないようだ。
「他の部署じゃ結構人気らしいよ?隊長」
「そうなの!?」
「パパはそうに違いないって言ってたけど」
アリスの父親は隣の市警の人間で署長とも繋がりがある。彼の推薦でアリスはS.T.A.R.S.に入った訳だが、コネだと言われるのを避ける為か彼女が父親を話題に出すのは珍しいことだった。
「ウェスカーと関わりないから憧れられるんでしょ?仕事が出来るのは確かだけど」
「しかもね、この前見ちゃった!隊長……交通課の子から告白されてたの。でも隊長は今は仕事に専念したいから、って…」
小声で楽しそうに言うアリスにジルはフフッ笑うと書類で口元を隠した。
「……アリス気になってるのね、ウェスカーのこと」
「へ?」
「なんだか情報いっぱい持ってるし」
「……!……まさか、これって…!!」
はっとしたアリスは瞬きもしないでジルを見つめた。
そんな彼女をニヤニヤして答えを待つ。
「これって……ストーカーじゃない!!!!」
「そうねー、まあ、ウェスカーの事はオススメしないけど…………って、ストーカー!?」
ジルは自分の思っていた答えでは無いものが返ってきて、本日二度目の叫び声を出してしまいわざとらしく咳払いをした。
アリスはそんなジルに構わずオロオロしながら彼女の腕をの掴んできた。
「隊長に訴えられる!?クビにされる!?消される!?」
「いや、あの……もっと気持ちの変化とか、気付く事……」
「いくら尊敬してても纏わりつき過ぎちゃダメよね…気を付けないと!」
「まあ、そう…ね」
「うん!ありがと!ジル」
アリスは納得したのか、デスクの書類を一纏め掴むとジルに敬礼して見せるとパタパタと出て行った。
「尊敬……ね」
ジルは肩をすくめて呟くとフフッと笑った。
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