「ブラッド、お帰り」
「どうだった?可愛いナースは捕まえられたか?」
今日は、アルファの隊員であるブラッドが3ヶ月にも及ぶ怪我の治療、リハビリから無事に退院してきた。
久しぶりである彼に皆口々に声を掛けると、ブラッドは少し照れながらも英雄気取りに戯けてみせた。
「ナースなんて軽い軽い、皆俺に夢中だったぜ」
「くだらん見栄を張るな」
冷静なウェスカーの発言により空気が一変したが、構う事なくアリスがブラッドに駆け寄った。彼女はブラッドが入院してからの来たため初対面だ。
「私、アリスです!よろしく」
「ああ、噂には聞いてるよ。よろしく、ブラッドだ」
「早速で悪いが、アルファ出動だ。準備に取り掛かれ。ブラッド……もう任務に出ても問題ないんだな?」
アリスは一体どういう噂だろうかと気になったが、その疑問をぶつける間もなくウェスカーに遮られた。
「ああ、バッチリさ、隊長」
ブラッドは自分の肩に手を置いたウェスカーに自信満々に言うと、皆にも笑みを向けた。それが合図かのようにアルファのメンバーが動き始める。
来た!出動だ……!
アリスも気合を入れて腕まくりをしてジルについていこうとしたが、腕を引かれ進めない。
「どこへ行く?」
腕を引いたのはウェスカーで、問う声は異様に低い。
「準備に……」
「アルファに向けて言ったつもりだったが?」
「だから準備に………」
「噂通りだな」
悪気なく言うアリスにブラッドは笑ってオフィスを後にした。ウェスカーは溜息しか出ないようで、知らぬ間に近づいてきていたリチャードが彼女の頭をぽんと撫でる。
「おいおい、アリスはブラボーチームだろ?」
「でもこの前私隊長達と………」
「あれはブラッドの代わりにブラボーから経験を積ませる為にお前を入れただけだ。ウェスカーすまない、こっちは任せておいてくれ」
エンリコが少し遠くから声を上げると、ウェスカーはアリスを開放した。
「つ、連れて行ってください!隊長!」
「………お前のリーダーはエンリコだ。今日はその溜まった書類をどうにかしておくんだな」
アリスはウェスカーにすがる様な目を向けたが、彼は冷たく言い放つとオフィスを出ていってしまった。
「あんまりウェスカーに食ってかかんなよ、機嫌悪くなったら面倒だ」
リチャードはアリスに耳打ちすると、いつも不機嫌か、と付け加えて笑った。
しかしアリスは彼の冗談に笑うことなく、半べそかいたような顔を向ける。
「だって、隊長にいいところ見せられないじゃない」
「いいところって……この前怒られたばっかりだろ」
「そう!だからよ!」
悪い冗談でも聞いているようにリチャードは真剣に取り合ってくれていないとアリスは感じたようで、ムキになって訴えた。
「悪いと思うなら詫び入れれば良いんじゃないか?」
「詫び……?」
「そ、まあ、無駄だろうけどな………って、おい、冗談だぞ」
「お詫びか……」
ブツブツと考え込んでしまったアリスにリチャードは肩をすくめた。エンリコと目が合うと、彼も同じようにし苦笑している。
「さあ、留守の間にさっさと終わらせるぞ」
エンリコの掛け声に、イエス、サーと皆返事し、それぞれ仕事に取り掛かった。
* * * *
「お帰り!ジル」
「ただいま。今回はなんてことなかったわ、待機ばかりで変に疲れちゃった……」
清々しいジルの様子にアリスは羨ましく思いながらも苦笑してみせた。
「お疲れ様だね。……ねえ、ウェスカー隊長は?」
「ここだが、何だ?」
アルファ全員の後に続いて入って来たウェスカーにアリスは駆け寄り敬礼した。
全員がこの行動に注目しているのは言うまでもない。機嫌を損ねないかヒヤヒヤしているのだ。
「お疲れ様です!隊長!この前の任務ではご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした!その、今度お食事でもいかがでしょうか!?」
元気良く言い切り満足そうなアリス。
彼女以外は全員呆気に取られていた。クリスに至っては口が半開きだ。よくわからない流れで急に公衆の面前での食事のお誘いだ、それもよりによってあのウェスカーに。
「理解不能だ、人の言葉を話してもらえるか?」
頭痛でもするのかウェスカーは眉間を摘んだ。もちろん任務終わりで疲れが目にきた訳ではない。
「お詫びです!お食事で…「断る」
ウェスカーは短く答えると、ブラボーのメンバーを睨んだ。誰が要らないことを吹き込んだのかと言わんばかりで、皆視線を逸らした。
敬礼したまま固まったアリスは、涙目になって首だけ回してリチャードを見る。いかにも恨めしそうな表情だ。その視線の行方をウェスカーも逃さなかった。
「リチャード、貴様か」
リチャードの弁解も虚しく、彼には書類の山が追加されたのだった。
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S.T.A.R.S.メンバー性格等捏造。
150223