好きと言って | ナノ

期待の新人現る!

「ジル……、期待に応えるってどうすれば良いかな」

アリスは自分のデスクで頬杖をつきながら、ため息混じりにジルに尋ねた。

「まあ、頑張って成果を残す、とかかしら?」
「成果って?」
「何かしらの良い結果…じゃない?」
「良い結果ってどうや…「そんなの自分で考えなさい!」

あまりの質問攻めにサジを投げたジルにアリスは頬を膨らませて少し唸っていたかと思えば、慌ててパソコンに向かって何やらキーボードを叩き始めた。


* * * *


ビシッッっと音が鳴るのではないかと思うぐらい、堂々と自分の方へ突き出された書類に、ウェスカーは少し目を丸くした。

「始末書ですっ!!!」
「あ、ああ……」

張り切って渡してくるアリスに押され気味になりながらも、受け取ると他の書類の上に置いた。

「ちゃんと読んでください!」
「後で目を通す」
「不備があるかもしれないじゃないですか」

始末書だ。不備も何もある訳無い、と思いながらも渋々目をやりチェックする。チラリとアリスに視線を送るとそわそわしている。

「………」
「…ど、どうですか?」
「ああ、受け取っておく」
「やったーーっ!!!」

アリスは一回飛び跳ねてガッツポーズした。

「始末書を出して喜ぶな、反省しろ」
「反省してます、勿論」

言葉はそう言いながらも、スキップをしそうな勢いで自分のデスクへ帰るアリスをウェスカーは怪訝な面持ちで見つめた。

「ジル!一発で通ったよ!」
「え…?」
「始末書!今まで書類を一回で受け取ってもらったことなんてなかったのに」

これって良い結果だよね?と、それはもう嬉しそうにアリスが尋ねるのでジルは肩をすくめて微笑んだ。

「ええ、あー……まあ、進歩じゃないかしら」
「やっぱり?よーし、頑張るぞー」

そう意気込んでパソコンへ向かうアリスにジルはもう一度微笑みかける。ウェスカーを盗み見ると一層眉間の皺を濃くしてアリスを見ているようで、サングラスの下は恐らく困惑した表情なのだろう。
どうやら彼もアリスには敵わないんじゃないか、ジルはそう思うと可笑しくなってニヤニヤしてしまうと、ウェスカーと目が合った気がして、慌てて自分の仕事に手が離せないフリをしたのだった。

141119

prev | next

top