好きと言って | ナノ

飴と鞭

「はあ…、怪我しちゃうなんて………ドジだ」
「気を付けてくださいね」

項垂れるアリスに、医務員は苦笑したが、彼女の背後が視界に入るとすぐに表情が張りつめたものになる。
アリスはそんな医務員の視線に気づかず、包帯の巻かれた腕を擦ってため息をついた。

「犯人の持ってるのがモデルガンだって気付いたら油断しちゃって…」
「命があっただけ有り難く思うんだな」
「ぎゃっ!隊長…!」

不意を点かれたウェスカーの急な登場に幽霊でも見たような声をあげたアリス。
ウェスカーの静かな怒りのオーラに、医務員は用事を思い出した、と独り言を言いながらそそくさと出ていってしまった。

「何故、指示を無視した?命令だと言っただろう?」
「あの、男の子の身の安全が最優先かな、と……」
「何のためにバリー達を待機させたと思ってるんだ、それに、無線で一言も知らせない…」
「犯人ともみ合ってる時にに壊れちゃって……」
「修理代は給料から引いておく」
「そ、そんなー!」
「勝手な行動をした報いだ。始末書、覚悟しておけ」
「ひっ………」

一頻り言い合い、というより言い訳をするアリスに、ウェスカーは叱り終えると大きく溜め息をついた。

「一人が隊を乱す行動を取れば、任務に支障が出る。他の者に危害が及ぶ恐れもあるだろう」
「……はい、すみませんでした」
「今回は怪我だけで済んだからまだ良かったが…」
「……はい…」
「そんな行動をしていては命を落としかねないぞ」
「…………!」
「お前は一つのことを集中するがあまり、他が注意散漫になる。悪いとこ…「隊長ーーーっ」

急にタックルをするがごとく抱き付いてきたアリスにウェスカーは一歩後退りをしながらも受け止めた。顔は相変わらずというか、尚更眉間の皺を深くしている。

「何をふざけてるんだ」
「隊長がいっつも私に厳しいのは私を思ってのことなんですね!」
「…?何の話だ?」
「頑張ります、私!隊長の期待を裏切りません!」

厳しいウェスカーが、自分の命を大切にしろ、という風に言った事にとてつもなく嬉しくなったアリスは輝かせた目をしてそう言い切ると、敬礼をしてからオフィスの方へと走っていった。

「なんなんだ?いったい……」

取り残されたウェスカーは、アリスの読めない行動と考えに苛立つしかなかった。



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こういうヒロインも気が重くならなくて好きです。
でもちゃんと恋愛に発展するのか、不安ですw
141118

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