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ヨザックをひきつれて甲板にでれば、上官であるグウェンダルがなにやら船長と話しているのが目に入る。それを横目に見つつ、久しぶりの船の上をのんびりと歩きまわった。

最近は治水だの中国の毛利の事だのの書類に追われ、あまり海に出れていなかった。元親は城下の景気づけも含めて出ていたようだが、私はそれをする必要がない分逆に忙しかった。ついでに元親の尻拭いも急がしかった。そう考えると一瞬殺意は沸いたが(今考えれば半分くらいは元親の仕事だった気がする)今海にいれる私勝ち組。今頃四国は大騒ぎだろうが、仕事が全部元親に回ると思えば若干すっきりした。

まあ戦が始まる前には何とかして帰らなけらばならないが、次の戦は中国とではない分、元親の策でもまあ…不安ではあるが持ちこたえれるはずだ。そう急ぐこともない。
いつ帰れるかはさっぱり分からないが、私がいなくとも行政はどうにかなるようにはしてあるし、信頼できる臣下もいる。元親もいる。その分まだ心配は少なかった。むしろ今心配すべきは自分の行く末の様な気がする。何時毒盛られるかもわからん。

とりあえず今は久しぶりの海を存分に楽しむことにした。責任者が私でないというのも気楽だ。


「楽しそうですね、姫さん」

「そりゃ楽しいわよー最近海に出れていなかったし」

「そうですか」


甲板をうろうろすればヨザックも後ろについてくる。はたから見たら面白いのだろう、船員たちの視線もそれに合わせて動いているのが見える。
しかしよく分からない動物が多い。カモメかと思えば奇妙な声をあげる鳥、異様なサイズの魚…鮫?えらく人懐こかった。


「……船酔いは大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ、波も穏やかですし。」

「…そうか」


ぼんやりと水面をみていれば酔ったのかと心配したのかグウェンダルに話しかけられた。この人はみかけによらず中身は穏やかな人である。もちろんそれだけではないだろうが、後ろで疑う気満々でこちらを見ているヨザックよりかは話やすい。

彼の話によると明日には眞魔国とやらの領土に入るらしいが、それまでは人間の領土内である分危険が多いという。しかしそんなのんびりとした雰囲気のまま、食事を済まし風呂をすまし、夜を迎えた。



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