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痛みの波を乗り超えたせいか膝ががくがくと笑っている。
ああ、なんだかとても。

(ものすごく眠い…)

戦の後でもこんな疲れきる事は少ないというのに、やはりあの痛みはすさまじかったらしい。話すことすら億劫になる。


「とりあえず着替えたいから出ていけって言いたいんだけど…ヨザックは無理そうね」

「…そうですね。そういって頂けると仕事の能率的にも非常に助かるんですが。うら若き乙女がいいんですか?」

「…言っても無駄だろうしね」


かよわい女子供の振りはどうやら無理っぽい気がしてきた。ヨザックは賢い。そして私はこの男がしなければならない事を理解している。ヨザックの目的は私の監視だ。
最初のころはまだ彼にとって私は無害だった。
だが今は、先ほどの一連で警戒する対象に入ってしまっている。そしてもし私がヨザックの立場であれば、着替えだろうが何だろうが目を放す事はしない。

まだ彼が私の事を戦力外として考えてくれているならいいのだけれども。私は自分の民以外の為に戦う気などないのだ。
性格はまぁ目をつぶってもらうしかない。若干最初の警戒の仕方でばれている気がするし、今更の様な。

何が言いたいのかといえば、今ここでだだをこねても結果は変わらないのだから、とっとと諦めて着替えてしまった方が早いという事だ。
いくつもの戦を経験してきた身としては、今更着替えを見られて位でどうこういう様な神経は持ち合わせていない。

好き好んで見せようとは思わないが、不可抗力という時もあるのだ。

とりあえずこの湿った服を脱ごうと(未だ私の服は濡れたままである)着物の端に手を掛ければ、そばにいたグウェンダルが慌てたようにその手をつかんだ。


「何か」

「……せめて、後ろを向いておく」

「…お気づかいありがとうございます」


苦虫を噛み潰した様な表情をしているグウェンダルに、笑みが漏れる。まぁ私だって見られたいわけではないのだ。





「…なかなか様になってるじゃないですか」

「そりゃどうも」


あんまり嬉しくない、というかこれ女物ですよね。いや私は女だが。
でもここで男物の服を欲求するのも変な気がするのでだまっておく事にする。
まぁ女物でも男に近い格好の服位ある、と、思う。

しかしこのふりふりひらひらが自分に似合うとは到底思えなかった。しかも漆黒。ないわー


「…動きにくい」

「そりゃ今まで姫さんがきていたものに比べればねぇ」


笑ってそういうヨザックにこれはもしやわざとか、と思わなくもない


「…で、色々聞きたい事が山のようにあるんだけれど」


それを聞くまではおちおち寝てもいられない。疲れ切った身体を叱咤し、無理矢理奮い立たせる。
にっこりと口を開けば、以外にも先に口を開いたのはグウェンダルの方だった。





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話がなかなか進まない


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