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学校という性質上仕方の無いことなのかもしれないが、最近少しリオルが疲れている、というよりぴりぴりしているように感じる。

人の思いや気持ちを波動として受け取ってしまうリオルは、訓練を積んだゲンさんやシロナさんのルカリオとは違い全てをダイレクトに受け止めてしまう。
本来であればこんな人のあふれる閉鎖空間ではなく、それこそゲンさんのように静かな洞窟や自然の中で訓練をすることが望ましい。
もともとガーディやラッキーのように人の中で力を生かして働けるようなポケモンではない。

部屋にいるときも、料理を作る私の足にまとわりついたり、膝に乗ったまま離れなかったりと、少し不安定になってきている気がする。
禁じられた森での訓練の時は元気そうなのに、寮に帰ってからはどこか不安そうに、私か、それが無理なときは大きな強いポケモンの傍にいる。
今のところリザ―ドンとレントラーがうまいことあやしてはいるが、それもそろそろ限界だろう。二匹の目からも戸惑ったような、困惑したようなSOSを感じていた。

リオルのレベルが上がるにつれて、キャッチできる波動の範囲も広くなっているにもかかわらずうまくその力をコントロールできていない。ゲンさんやルカリオが近くにいれば対処法もまだ考えられただろうが、この世界にいる今は私がどうにかするしかない。
私の手持ち達もすでに強く、そういった事には無頓着だった分余計どうしたらいいのかわからないのだろう。


「そろそろ森にでも引きこもるべきか」

「何か言ったか?」

「何も言ってないよ授業に集中しなよドラコ」

「………。」


授業ノートにこれから育てる木の実の事をメモしながら言えばドラコが不満そうな顔をしたが放っておいた。
日本語で書いているメモがドラコには読めない。ちなみに私の成績は絶好調なので先生にも特に何も言われない。というか大人だからね中身!11歳の授業について行けなかったらそれはそれでやばい。気がする。

ちなみに何故か喋る言葉は通じたのに読み書きは英語とかハードモードすぎたのでダンブルドアになんかほんやくこんにゃく的ものをもらいました。


「次の授業は飛行訓練だぞ!」

「へーよかったね−」


今週に入ってからドラコは飛行訓練が楽しみで仕方ないらしく、なにかと自慢してくる。非常にどうでもいい。どうせ私飛べないし。でもちょっとジムに初挑戦する新米トレーナーみたいで微笑ましかったので話はきいてあげている。
そして授業中に喋ったドラコは先生に減点されていた。ざまぁ。私もスリザリンだけど。

正直、午後の飛行訓練の授業を受けるより今はリオルのそばにいてやりたい。リオルの入ったモンスターボールを手のひらで包み、不安そうなリオルと目線だけでもあわせていれば、うつむいていたのが寝ていたととられたのか私まで減点された。解せぬ。







飛行訓練のために外に出て、さらにそこでも自慢してくるドラコの話を右から左に聞き流していれば、グリフィンドールの面々が校庭に出てきた。さっそく嫌みを言いにそれぞれのお気に入りに向かって楽しそうに走っていったスリザリンの面々に、ほんと生き生きしてるなぁとなんとも言えない気持ちになる。

やってきたマダム・フーチが早くもがみがみとお説教をしているのを片目に、ぼっけりと並ぶ箒を見る。魔力ゼロの私から見ればなんの変哲もないただの箒である。正直リザがいれば空飛べるのでそんなに必要性も感じない。


「いいですか、右手を箒の前につきだして」


上がれ!と所々で声が上がり、成功を喜ぶ声と失敗に戸惑う声が聞こえる。しかし上がれといったところで当たり前だが私の箒はぴくりとも動かない。
どうしたものかと思っているとグリフィンドール側からこちらを見ていたロンと目が合い、何故か鼻で笑われた。彼はスリザリンを毛嫌いしている面がある。
適当に授業をやりすごす予定だったが、微妙に腹が立ったのでメタグロスのボールを軽く撫でて合図をすれば、彼はわかったばかりに頷いた。どうも彼も腹が立ったようである。


「サイコキネシス」


ざっとこんなもんよ。





***
せこい…。
飛行訓練の話はもうちょっと続きます

131128



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