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私が箒でふよふよと飛んでいれば(※メタグロスとの共同作業)横をものすごい勢いで上昇していった箒がいた。おいあれ人乗ってるぞ大丈夫か。
ざわざわし出したのでひとまず地面におりてメタグロスにお礼を言えば何でも無いというような顔をされた。やだ何この子イケメン…

私がメタグロスにキュン死にしそうになっている横では先生が必死でなにやら空に向かって呼びかけていた。さっき上昇した生徒が降りてこられないらしい。
自分の魔法なのにコントロール出来ないこともあるんだなぁとのんびり眺めていれば腰につけていたモンスターボールが少し騒がしい事に気づいた。

しまった、と思ってももう遅い。リオルがぽろぽろ泣いていた。まずい。非常に。
周りのポケモン達もどうしたらいいのかと視線を向けてくる。多分リオルは多くの情報と感情にためていたものが爆発してしまったらしい。
この場の空気は確かに、戸惑いによるざわめきや恐怖という負の感情が多い。オーバーヒートを起こす可能性は十分にあった。

とりあえずリオルをボールから出してやろうとこの場を離れるために箒を置けば、周りから悲鳴が上がる。みれば先ほどの生徒か空からまっさかさま。比例してぼろぼろ泣くリオル。


「阿鼻叫喚…」


ここで死人が出たらリオルの情操教育に非常によろしくない。確実にスプラッタ一直線。思ったことは皆同じだったようで、男子生徒が地面すれすれで微妙に落下速度を緩めた。
多分メタグロスの自主判断だろう。無駄にPPを減らしているようで非常に申し訳ない。
あとでポロックと木の実を上げようと考えながら校庭の隅に走る。幸いみな今の騒ぎでこちらに注意は払われていない。


「リオル」


森の入り口付近まできて、やっとリオルをボールから出してやれた。
あたまがいたいです、と泣くリオルにごめんね、としか言えず歯がゆさに唇をかんだ。
トレーナーとして失格だった。判断を間違えていた。私が何より優先すべきは使えもしない魔法の授業なんかじゃなくて、この子と一緒にいてあげる時間だった。

少し離れたことでまだ痛みがましになったのか、リオルが馬鹿みたいにつったっていることしか出来なかった私の足にしがみついた。
しゃがんでその頭をなでれば、ふにゃりと笑う。きっとこの子はずっと黙っていた。痛いともいわず、こうなるまで耐えていた。この人の多いところにいて、何もないはずがなかったのに。


「ごめんねリオル」


そう言ってリオルをなでる私の頭をぐしゃりと誰かが撫でた。
顔を上げれば勝手にボールから出てきたらしいリザ―ドンが、厳つい手で私を撫でていた。爪があたって少しだけ痛い。照れ隠しなのか、乱暴に撫でるリザにリオルを渡せば、慌てたようにあやし始める。厳つい顔して情けない表情をするリザ―ドンに少し笑った。

リオルが少しだけ落ち着いたと思ったところでまた校庭が騒がしくなった。そちらに目を向ければ、ハリーとドラコがなにやら言い争っていた。なんか悪口とか罵りあいとか聞こえるんですけど。また雰囲気がざわついてるんですけど悲鳴とか聞こえるんですけどおいふざけんなよ。八つ当たり?ええそうでしょうとも。
ゆらりと立ち上がった私に、ダークライが静かに私の影から姿を現した。


「レントラー、リオルのことよろしく」


ボールから出たレントラーは情けない顔をしたままのリザからリオルを預かり、その大きな体で包みこむ様に座って小さく頷いた。どうやらこういった非常時の時の子供への対応はレントラーの方がうまいらしい。


「リオル」

「はい、ますたー」


リオルの顔を包み込むようになでれば、素直に顔をあげるリオルに胸が痛んだ。私はこの子のSOSの深刻さに気づいてあげられなかった。大丈夫だろうとたかをくくっていた。


「目を閉じて、耳を塞いでなさい。楽しいことを考えていたらいい。」

「はい」

「これが終わったら美味しいものたべようね。ピクニックにもいこう。リオルはおにぎりとサンドイッチどちらが好き?」

「ますたー、」

「すこーしだけまっててね、そしたらリオルの好きなものつくってあげる」


リオルの返事は待たずに、森に背を向ける。


「ダークライ、ダークホールで永眠させる勢いで眠らせろ」


容赦?いらんわそんなもん。可愛い我が子が泣いとんじゃい。最近自分がモンスターペアレント化してる気がしなくもない。今私は酷い表情をしているのだろう。教育によろしくなさすぎてリオルにはみせられない。ダークライがおかしそうに目を細めた。

ダークライが影を使って地面を異動していくのを確認し(一応姿を隠したまま攻撃してくれるらしい)、自主的にモンスターボールから出てきていたラグラージに指示を出す。


「ラグラージ、あの空飛んでる阿呆共にふぶき」


きっとあいつら飛行タイプだろ。なにやら言い争う様子のハリーとドラコを指さして言えば、リザが適当そうに頷いた。多分同意だ(注:決めつけ)

そしてうわえげつなーみたいな表情しながらものりのりで指示に従ってくれるラグラージが大好きです。





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▼こうか は ばつぐん だ !

良い感じに親ばかになってきた夢主と小さな弟がなんだかんだ言いながら可愛くて仕方ない手持ち達でした

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