▼天が試練を課すのは乗り越えられる男だけ



一人の海兵にとっては救いであった。一人の海兵にとっては憧れであった。一人の海兵にとっては目指すべき高見であった。名前という男は、そういった存在だった。

「ガープ、ちょっと俺の部下が忠誠誓いすぎてて怖いんだけど」
「お前さんの責任じゃそれは」
「なにそれ酷い」

目の前でパフェをむさぼる男は本当にかの中将かとガープは頭を抱えた。気を許した相手にのみにみせる態度であろうことは分かってはいるが、こんな姿、名前に憧れる海兵には見せられた物ではない。ガープがこの男のこういった面を知ったのはもうずいぶんと前になるが、あのときの衝撃といったら忘れられるものではない。そんなガープの心を知ってか知らずか、名前は今日も今日とて綺麗な笑顔でさらりと爆弾をはく。

「まぁ?天が試練を課すのは乗り越えられる男だけ、ってな」
「そういうとこが自業自得なんじゃバカもん」

無意識に言っているのであれば末恐ろしい才能である。名前を呼びに来たであろ海兵が、運が良いのか悪いのか最後の言葉だけ丁度聞こえたらしくきらきらした目で名前を見ていた。名前はそれにも気にした風もなく立ち上がると、ガープに一言礼を言って立ち去った。

「あそこで部下がくるとはのお」

このタイミングの良さも、きっと彼の実力のうちなのである。


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