▼優しい人。 ※生理ネタ注意 「・・・おなかいたい」 こちらでは初めての、それでも慣れ親しんだ違和感に眉をひそめた。この傷みは知っている。むしろ今まで来なかった方が不思議だったのだ。お手洗いに駆け込んでみてみれば、やはり予想通り。女に生まれたからには避けて通れないことだけど、それでも。 (だって、私はこっちでどうしたらいいのか分かんない) アーダルベルトさんと二人暮らし(といって良いのかはわからないけど)の今、必然的に頼るのは彼しかいないわけで。そして私は彼に飼われてから(こっちの言いかたの方がしっくりくる気がする)この家から一歩も出ていない。 この世界は怖い。その刷り込みは未だ私の中で健在で、彼以外の世界を拒絶する。アーダルベルトさんも何も言わないから、飼われている身としてはそれが正しいのかもしれない。捨てられたら、そのときはたぶん、死んだ方がマシなんだと思う。いや、それ以前に私はこの世界で生きて行く術がない。悪ければこちらに来た時のような目にあって衰弱死、良くて飢え死に決定だ。四面楚歌。 「・・・どうしよう」 でも、生活の全てを彼にまかなってもらっているのだ。それに誤魔化してもたぶん、ばれる。彼はそういった人の心の動きに敏感だ。それ以前にお腹痛くて動けないからその時点でばればれだ。 嫌だけど、ものすごく嫌だけど、ちゃんと報告するしかないと決意してお手洗いから出ればタイミングが良いのか悪いのか、彼と鉢合わせた。目が合って、なんとなく恥ずかしくなってうつむく。決意したはいいけどどう伝えたらいいのか考えていなかった。心の準備をする時間くらいください神さま。 「・・・・・・」 「どうした?」 顔色わるいぞ、と頭をなでられた。大きな彼からは私なんか子供みたいなものなのかもしれない。日本人は特に童顔だ。それでも黙っていれば、彼はわざわざしゃがんで、心配げな顔をしてうつむいた私に視線を合わせた。 「あの、」 「うん?」 「おなかがいたくて」 「大丈夫なのか!?」 「いや、あの、でもちゃんと理由は分かってて」 驚いて私の肩を掴んだ彼に、気恥ずかしさも加わって泣きたくなった。やっぱり私は人より劣っている。自分の考えもろくにいえないなんて、 「、悪い。ほら、ちゃんと聞いてやる。ゆっくりでいい。な、話してみろ」 唇をかんだ私に気づいたのか、アーダルベルトさんが言う。ほら、彼にも気を遣わせてしまった。あきれられたかもしれない。でも、私の頭をなでる彼の手はどこまでも優しい。 「あの、ね、つ、月のも、のが・・・きて・・・」 「・・・それで腹が痛かったのか?」 「はい・・・」 「そうか。病気じゃなくてよかった」 「え、」 彼の言葉に顔をあげれば、ふにゃりとした笑顔と目が合った。私の頭をなでていたアーダルベルトさんの手が降りてきて、頬をなでる。大きな、傷だらけの手だ。 「月のもんなんて女なら誰でも来る。恥ずかしいことじゃない。な?」 「うん、」 「ちょっと町でいるもん買ってきてやるから待ってろ。今日は家事もしなくていい。」 「え、でも」 「今日は一日いいこに寝てること。いいな?」 「・・・はい。」 そのままたちあがり、玄関に向かった彼を慌てて追いかける。お腹は痛いけど、私のためにわざわざ出てくれるのだからちゃんと見送らなきゃいけないとか。お礼をまだちゃんと言ってないとか、思考はぐるぐるするけど。 「ありがとう、ございます」 「おぉ、どういたしまして」 やっぱりこの人にはかなわない、と、思った。 *** 130217 このサイト内で唯一の女の子女の子した夢主(他はみんな思考が下衆い・・・)この世界に来た時のなんやかんやと一気にきた安心で、若干幼児返りしています。 アーダルベルトの方は捨てる気なんてさらさらないけどいつか捨てられるんだろうなーと考えてる夢主ちゃんでした。すれ違いおいしいです index ×
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