03.波乱の予感(やはり彼らは、)





 




 ……この世界の二つの存在。

 ―――それが、今、崩れようとしているなど……






 誰が、思う?







***



『おい……そっちの守備は大丈夫か?』
『もちろんですわ。当たり前のことを聞かないでくださる?』
『じゃあ……夜、7時に決行だ。分かっているな?』

『目的は―――』




 黒いローブを翻し、黒髪の男はピッと一枚の紙を取り出した。




『有力パートナー……Rose=Blue』





 バサ、とローブが翻る音がやけに響く。
 満月の夜、それは始まる。

 それはそれは長い夜が―――始まろうとしていた。
 目的は『Rose=Blue』。そう、あの優秀な主と従者の最強チームと名高い……依頼は確実にこなすことで有名な、あの。


 ふいに、階下が騒がしくなる。男は屋根の上で気配を殺し、下を見下ろす。女子の悲鳴のような黄色い叫び、そして男共のうっとりとした目線の先には―――。


「はじめまして、貴女が今井家ご令嬢の――」
「今井蛍よ。今日はよろしく。……案内するわ、ついてきてくれる?」
「はい。……私は……佐倉蜜柑と申します。そしてこちらは、」
「日向棗だ」

 軽く礼を交わし、3人は会場の中に消えていく。その姿を確認し、男はニヤリと笑った。
 標的はいとも簡単に目の前に現れた。目の前の格好の餌を逃す野獣は……この世には存在しない。そして、その野獣というのは――

『俺たち、「従者」が集う――「Treason01 Team=Amber」だ』

 す、と立ち上がる。

『少しは楽しませてくれるんだろうな?』

 とん、と地面に着地すれば、周りの人間から目線が向けられた。それを一瞥し、指を一度鳴らす。そして、男は一瞬光を放ち……消える。
 消える直前、目線は入口へ向かっていった3人組――今井蛍、佐倉蜜柑、日向棗のうちの、

『―――佐倉、蜜柑サン?』

 くつくつと笑い、男は消える。




『"日向棗"、"佐倉蜜柑"――通称"Rose=Blue"を捕えろ』




 それが、今日の目的。




『だが……一筋縄じゃ行かないみてーだな』


 主の優秀さが従者の力に比例する。自分たちとはきっと比べ物にならない力をこの二人は有している。
 だからこそ……だろう。


『絶対、手に入れてやる』


 特に、あの佐倉蜜柑。
 主の優秀さが比例しているとはいえ、潜在能力は――半端ではない。





 波乱のパーティの幕開けだった。






*









波乱のパーティ。でも、これは依頼だから――放り出すことなんて、できない。


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