5 うま過ぎて、
『あ、雅治。ごめん。ハイ』
走り終えた雅治にタオルとドリンクを渡す。
雅治はおいしそうにドリンクをごくごくと飲んだ。
「やっぱ雪のドリンクは美味いのう」
『えへ、ありがとう』
雅治に頭を撫でられる。
雅治の次に桑原、柳生、丸井とランニングを終えていく。
いつも通り、最後尾にいるのはヒーヒー言っている赤也。
『はい赤也、お疲れ様』
「っ、雪……先輩、」
赤也は私のドリンクを引ったくるように取り、上を向いてごくごくと一気に飲む。
ふぅ、と顔を元に戻す赤也。
ボロ……
『……え、』
「あれ……」
突然 涙をボロボロと零し始めた赤也。
『ちょ、どうしたの赤也? 何か辛いことでもあった?』
ぽんぽんと背中を叩いてあげるが、赤也は涙を拭うこともせず、ただ涙を零していた。
「あは、何でしょー……何か出てきたっスね、ははは。先輩のドリンクうま過ぎて」
『ぷ、何だそれ』
変な赤也、と笑いかけるが、涙はいっこうに止まらない。
だいたい、ドリンクなら毎日作ってあげてるじゃん?
「っ顔、洗ってくるっス」
『いってらっしゃい』
そういえば幸村まだ帰ってきてないな……
途中で倒れてなければいいけど……。
ふと周りを見ると、みんなはドリンクの容器を変な顔で見ていた。
『ちょっとみんな、ドリンクまずいんなら正直に言ってよ』
「いや、」
「めちゃくちゃ美味いぜぃ……」
タオルを頭にかけ、顔を隠す丸井。
だったらみんなどうしたのよ。
今日、何か変だよ、みんな……。
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