サイゴの夢 | ナノ


  22 約束


「仁王っ!!」
「仁王先輩っ!!!!」


ゆっくりと、目を開ける仁王先輩。


「仁王先輩……っ!!」


ノロノロと俺たちを見る仁王先輩。

酸素マスクが シュー、と音を鳴らす。


「あ……か、や……」
「っ!! 仁王先輩……」


思わず仁王先輩に抱き着いて涙を流す。


「おかえり、仁王」
「ゆき、む……ら……。みん、な……」


仁王先輩は涙を零す。


「俺……雪に、会った」
「……うん」
「雪は……ずっと、傍にいるって……」
「うん……」
「俺……」


ヒュッと仁王先輩の息が音を鳴らす。

仁王先輩の目からも、みんなの目からも、絶えることなく涙が溢れ出していた。


「ごめん……な、みんな」
「……っ、まったく、だよ……っこんな、馬鹿な真似……、」


悪い、と仁王先輩が謝る。

ふと、仁王先輩が枕元のオルゴールに気がついた。


「これ、は……?」
「雪先輩から、仁王先輩へ……雪先輩が、遺したモノっス」
「この……曲、は……」


"? 雅治、どうしたの?"

"いや、あの街路でギター弾いてるやつ、雪っぽいなって思っただけじゃ"

"私っぽい? どういうこと?"

"あの曲聞くと雪が傍にいるみたいじゃってことじゃ"

"あはは、何それ。じゃあ私がいない時は私の代わりにあの曲聞けばいいんだ?"

"ははは、さすがに 本人がいるのに曲聞いて満足はできんよ、雪"





「……はは、覚えとったんか……雪……」


仁王先輩は目を閉じた。


「仁王先輩?」
「……雪と、約束したんじゃ……"もう少しだけ、生きてみる"って……」
「仁王……」
「だから……もう少しだけ、頑張って、生きることにしたんじゃ……」


雪先輩……



































「雪……ありがとな」

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