20 遺言
雪先輩が、亡くなる直前に打ったメール……
俺たちは1字1字、じっくり読んだ。
家族へ……
友達へ……
仁王先輩へ……
そして、俺たち立海テニス部へ……
"ありがとう"
短いし、誤字脱字がたくさんあって読みにくかったけど、それだけ必死になって、亡くなる直前まで打っていたんだ。
その時の雪先輩のことを想うと、涙が止まらなかった。
メールの文の最後に、仁王先輩以外の立海テニス部レギュラーへのメッセージがあった。
"雅治がどうしようもなくなってしまったら、私の別荘の私の部屋の机の隣の棚の、一番上の引き出しの中にあるものを雅治に渡して"
"それで多分雅治はもう大丈夫だから"
*
「……仁王先輩だって、ここに居ちゃおかしい存在だった……」
だって、仁王先輩は今も、病院で死んだように眠っているんだから……。
「みんな、」
幸村部長が真っ赤な目で……それでいて、優しい表情で、俺たちを見た。
「雪が仁王に遺したモノを、早く仁王に届けよう?」
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