12 嘘だ……
仁王の後方から、音がした。
振り向くと、案の定雪が壁に手をつきながら立っていた。
「雪、まだ起き上がっちゃ」
『私……、死んでるの……?』
「んな訳なか!!」
仁王が怒りを込めた目で幸村と赤也を睨む。
「その証拠に、雪はここにいるじゃろ!! ちゃんと触れ……」
仁王が雪を抱きしめようと手を伸ばす。
『ぁ……』
「……雪……?」
しかし、その手は雪の体を通り抜けてしまった。
何回も手を伸ばすが、結果は同じ。
……もう、触れることができない。
「嘘じゃ……嘘じゃ嘘じゃ嘘じゃっっ!!!!!」
「仁王っ」
『雅治……』
涙を流しながら仁王は何回も雪に手を伸ばした。
雪の目からも、みんなの目からも、涙が溢れていた。
「嘘じゃろ……? 雪……」
『雅治……』
「嘘だって言ってくれ……雪……」
『雅治、』
雪は触れることのできない仁王を優しく包み込むように抱き着いた。
『思い出したの……。私、1ヶ月前に……火事で、死んだの』
「っ、」
ヒュッと仁王が息をつまらせる。
『でも私……いつまでも貴方たちを見守っているから……。……泣かないで、雅治』
「ぁ……っ、」
『ずっと、傍にいるよ……』
「雪……っ!!」
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