7 恋しちゃった?
「は?」
『ずっと、柳くんの"裏"として生きてて、辛くない?』
そう聞くと、彼は難しそうな顔をした。
「別に……一生蓮二の"影"として、自分を殺しながら生きていく。それが俺の天命なんだよ」
『そんなの、生きてるなんて言わないよ』
「もともと俺は"生"を受けてないんだから、生きるも死ぬもねぇしな」
『そんなこと、』
ない、なんて言えなかった。
話も何となくにしか理解できていない私には、軽々しく彼を慰めることもできなかった。
「それに、あいつは俺を知らない」
『え?』
「自分の中にもう一人の魂が入っていることを知らないんだよ」
つまり、柳くんは自分の身体を使われていることに気付いていないってこと?
たった一人の双子を知らないってこと?
「俺は蓮二の身体に居候する"邪魔物"だからな。蓮二が俺を認識したら、俺は追い出されるに違いないさ」
だから俺はひっそり存在するだけでいい、と 彼は、地平線に沈んでいく夕日を眺めながら言った。
「……そろそろか」
『え?』
突然彼は立ち上がった。
「そろそろ蓮二が起きる。……お前、名前は?」
『神崎……陽毬』
「陽毬か。久しぶりにこんなに人と喋った。……じゃあな」
彼は昨日と同じように片手をひらひらとさせて歩き出した。
……明日もここにいるかな?
明日またここに来れば会えるかな?
『……あれ?』
何でだろう……
"もっと彼の事知りたい"って思った。
胸に手をあてると、ドキドキと動悸が激しくなった。
もしかして……
私……恋しちゃった?
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