6 難しい
「俺と蓮二はこの世に"双子"として生を受けた。でも俺の"体"は作られなかった。だから俺は、無理矢理蓮二の体の中に入った」
『……よくわかんないんだけど』
「わからなくていい」
男は淋しそうに笑った。
その顔があまりにも切なくて、辛くて……気が付いたら、奪っていたニット帽を乱暴に男に被せていた。
「何すんだよ」
『つまり、"柳蓮二"は二重人格で、アンタは柳の双子として生まれるはずだった兄弟ってことなのね?』
「……まぁ簡単に言うとそうなるな」
『じゃあアンタは柳蓮二じゃないじゃん』
「……だから俺は"柳"だって言ったんだよ」
……あ、そっか。
兄弟だから苗字は同じか。
私はなぜだか彼の事をもっと知りたくなって、彼の隣に座った。
『アンタは自由に出入りできるの?』
「自由ってわけじゃないが……俺が出てくる時はだいたいは 蓮二が"沈む"時だな」
『沈む?』
「何もかも嫌になって、現実逃避したくなる時があるだろ? そんな時にあいつの魂が身体の奥に沈むんだ。そして、沈んだあいつの代わりに、"裏"の俺が"表"に出る」
……何か難しいや。
『アンタは辛くないの?』
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